心配損ですよ
「心配して戻ってきてくれたのは俺も嬉しいんだが、やらしい事はしてないぞ。こんな場所で、服も一枚しかないから」
カイは私達に必死に弁明してくる。パンツ一丁姿に文句はないんだけど、問題があるとすれば、一緒にいる女性。
島に流れ着いたのは紅、四壱、カイの三人。三太はパーブルーダに連れ去られた形。マグロ達もいたけど……その女性は魚人?
「マンはカイが女性と一緒にいると言ってたんだけど、まさか……魚人だったりする? 騙されてない? 私達の姿は無視してよね」
「それは……おい!! 今出てきたら」
「マン様とカズハ様ですよね? はじめまして、私はミナミと言います」
カイを追って、女性が私達のところまでやってきた。美人だし、魚人ではない事は確か。しかも、カイが着ていた服を身に着けてる。それと私とマンの事を知ってるらしい。
「えっ? 私とマンに会った事があるの? 全然覚えてないんだけど……というか、今の私は【魚人スーツ】を着てるのに」
こんなに美人だったら、覚えていそうなものなんだけど……全然記憶にない。【魚人スーツ】を着てるのに私の事が分かるのは……
「いえ……私はカズハ様達に一度もお会いした事がありません。海やお姉様達からお話を聞いただけです。ピンク色の魚人の変装も聞いてます。セイレーン様は……いないようですね」
「海の事を知ってるという事は……ミナミさんは人魚?」
「はい!! カズハ様達のお陰で人魚の国は門戸を開く準備をしてます。私達も他の国へ行く事が出来るようになり、カイの元へ」
「そうなのか!! 君と再会出来たのも、君達のお陰だったのか。ミナミが人魚とバレたら……」
カイの船を壊され、島々に流されたのは人魚のせいだから、私達が恨んでもおかしくなかったから。
「カイも良かったじゃない。というか、この姿はやっぱり止めとかない? 彼女みたいに他の人魚が外に出てたら警戒されるだろうし」
「そうしようかな。この【魚人スーツ】が有名になってるのも嫌だし」
紅が【魚人スーツ】を脱ぐのを提案してきた。ピンクマンボウの【魚人スーツ】が有名になると、余計に着るのが恥ずかしくなってくるし。
「だけど、何でこの場所に残ってるの? 【シーシー】にいた方が安全じゃないの?」
私は【魚人スーツ】を脱ぎながら、カイとミナミに聞いてみた。ついでにパーブルーダの事も聞けたら良いんだけど……
「私が居ても立っても居られず、先に出てしまっただけで、まだ足を踏み入れたら駄目なんです。問題がなくなったら、カイが住む場所に行くつもりで」
「ミナミだけをこの場に置いていくわけにもいかないからな。食事はミナミが魚を採ってくるし、木の実や果物は俺が取ってこれるし」
「魚!! 木の実や果物!! 珍しい食べ物とかあるのか!?」
「ストップストップ」
マンは食べ物に喰いい気味になってるけど、そこは一旦置いといて……
水着イベントが終わったら、人魚の国も開放されると思う。それまで、二人はここにいる事になるのかも。
「と言うわけなんで、心配して来て貰ったのに申し訳ないけど、俺達は大丈夫なんで」
カイはミナミの手を握って、幸せそうな顔をしてる。
「何ですかね? 心配して損した気分ですよ」
「それ思っても口にしたら駄目でしょ」
三太はポロッと口にしたのを、紅は軽く頭を叩き、ツッコミを入れてる。カイの事を忘れてたけど、三太の気持ちも分からなくはないかな。
「カイの事もあるんだけど、本命は違うから。僕達の用事は巨大鳥パーブルーダ。この島にいた事で、パーブルーダで何か分かった事はないかな?」
四壱は冷静にカイとミナミにパーブルーダについて尋ねた。
それと同じくらいにウサ男からメールの返信が。勿論、内容は魔物を仲魔にするための方法だから。




