タクシーに乗車出来ません
☆
「はぁ……結局、僕が水着モデルなんて無理だったんですよ。分不相応です」
「あれは……タクシーのキャラが良すぎただけで。他のメンバーと撮る時はちゃんと三太が一緒に映るわけだし」
「まぁ……サブ的扱いにはなると思うけど。アンタがビシッとしないと駄目なんだからな」
「問題ない。今回の戦闘で挽回すればいい」
「その勇姿は僕が撮ってあげるから。七兄も写真も欲しいところだけど」
私達は三太の撮影を終えて、パーブルーダのいる島に移動中。日曜日、もしくは明日までにパーブルーダを従えないと駄目だからね。
千城院さんの場所へ行くのにはカナリア達の許可は必要だけど、パーブルーダの島は紅達が流れ着いた場所だから問題ない……という事で。
「武藤さんも残念というか……危険な目に合わせないで済むから助かるんだけど」
「カナリア達が【ログイン】するまでに戻って来れる保証はないからね」
「それで良いんじゃないの? その分、三太とタクシーの撮影を楽しんでたわけだし」
「クエクエクエー!!」
タクシーも紅の言葉に同意するみたいに、雄叫びを上げた。
三太とタクシーの撮影。本当にタクシーがメインになったと言っても過言じゃなかったから。
最終的に筋肉スーツを付けたのはタクシー。三太がタクシーに乗る姿も撮ったけど、『変身』というコンセプトで、三太がタクシーに変身した感じの写真に。人間の体を持ったタクシーの姿はシュールだったけど、面白い絵になったと思う。
「けど、タクシーは武藤さんに心を許したわけじゃないんだよね。三太みたいに乗せて貰えなかったし」
「師匠と姐さんでギリギリ許して貰えるかと。僕が一緒に乗るのが前提だと思いますが」
今いるメンバーの中に武藤さんはいない。というのも、パーブルーダのいる島に行く手段が武藤さんにだけなかったから。
私と紅、四壱は【魚人スーツ】を着用して、マンは【魚ズボン】を履いてる。
紅も三太の筋肉スーツを見たのもあるし、一度【魚人スーツ】を着たから、そこまで羞恥心は無くなったみたい。
三太に関してタクシーに乗った状態。そこに武藤さんも乗れたら問題なかったんだけど、何度も振り落とされた事で諦めるはめに。
それに加えて、武藤さんは【魚人スーツ】や【魚ズボン】を装備出来なかったのもある。武藤さんは冒険者じゃなく、ゲスト扱いだからなのかも。
ちなみに三太は再度筋肉スーツ……水着を着てるから。タクシーに渡せたのは武藤さんが撮影するためで、一度渡された水着はイベントが終わるまで身に着けないと駄目。例外があるとすれば、【魚人スーツ】や【魚ズボン】だけ。
そういうわけで、四壱が武藤さんの代わりにパーブルーダの写真を撮らないと駄目になった。四壱が選ばれたのは弓士で器用さや目の良さもあるみたい。
「海中には魔物はまだいないようだから、自ら泳ぐのもありだと思うのだが」
「それが出来るのはマンぐらい……って、マンも【魚ズボン】がないと泳げないでしょ」
南の島からパーブルーダがいる島は見えるけど、結構距離はあると思う。海の魔物が実装されるのは水着イベントが終わってからだとしても、【魚人スーツ】とかないと、途中で溺死しそう。
マンも本当はカナヅチで【魚ズボン】があるから、何とか泳げてるだけだから。
「それは今克服中だ。【魚ズボン】のお陰で怖さ、苦手意識もそうだが、泳ぎ方が分かってきたからな」
「流石、師匠!! 現実でも頑張ってるんですね」
「……はいはい。そのやり取りは別にいらないから。そろそろ着くんじゃないの?」
マンと三太のやり取りはお腹一杯とばかりに、紅はツッコミを入れてるし。




