パンツを履いてるので大丈夫らしい
「……アンタが筋肉……じゃなくて、マン? 聞いてたより、全然普通に見えるんだけど」
紅は私が思ってたリアクションと違って、至って普通。逃げる様子は微塵もないんだけど……マンが息を切らせただけじゃなく、汗も大量にかいていた方が良かったんじゃ……そっちの方が余計に怪しくなったはず……って、そう思われたら、マンが可哀想かな。
「私の姿を見ても全然驚かないなんて……」
マンは紅を敵視するのを止めて、自分の姿に驚かなかった事に感心してるみたい。
「だって……パンツを履いてるじゃない。真っ裸の野生児、筋肉ダルマ、ゴリラ、触れるな危険とか色々聞いてたからさ」
そういえば、ブラックからマンの事を聞いていてもおかしくないのか。パンツを履いてるのと、全裸では印象が全く違うからね。モザイクがあったとしても衝撃ものよ。けど、ブラックもマンの事をどんな風に言ってるんだか……
「彼女は敵とかじゃなくて……ブラックの知り合い。マンもブラックの事は知ってるんでしょ?」
紅の事をライバルとは言いたくないし、紅もブラックが父親だとは知られたくないかもだしね。
「そこは私のライバルだと言って欲しいんだけど!! 私の名前は紅。昨日からカズハのライバルになった者よ。勿論、私の方が冒険者としては上なんだけどね」
「おおっ!! ライバルが出来るなんて、羨ましいぞ。強敵と書いて、友と呼ぶみたいなやつだろ?」
「友達!? そ、そういうのじゃないんだけど……」
マンは目をキラキラした感じで私を見てくるし、紅は少し照れたような仕草をするわで、どんな状況なのよ。
「そういうのじゃないんだけど……マンにとって、ブラックがライバル的存在になるんじゃないわけ? 」
ブラックの方はマンの事を意識してたわけだし、何度も挑んだと本人が言ってたんだけど……
「ブラック……誰だ? 私に挑んできた相手だとしても、名を名乗った者は誰もいなかったぞ」
マンが嘘を吐く意味がないし、本当の事なのかも。ブラック自身、マンの名前は受付嬢から聞いた感じたった気がする。ブラックが名乗ったなら、マンも言うでしょ。
「私のパパ……じゃなくて、ブラックは冒険者ランキング二位と有名なんだけど……そこはブラックに注意しておくわ」
ブラックがランキング二位だとしても、マンがそれを知る由もないんだよね。【アイン】の街に入れたのも三日前の事だから。紅はマンの反応の悪さに、ブラックが悪い事が分かったみたいだけど……
「そのブラックは一緒じゃないの? 顔を見たら、マンも思い出すかもしれないよね?」
出来れば、昨日みたいに紅を連れ帰って欲しいんだけど……
「パ……ブラックはちゃんとしたパーティーメンバーがいるからね。昨日が特別なだけであって、今は獣人の国ね。七つの獣の一匹を探すらしいけど」
それもそうよね。冒険者のソロだけでじゃなく、パーティーでもランキング二位なんだし、紅だけにかまってられないのかも。
「ブラックの事は置いといて、マンからも言ってやってよ。カズハは私からの勝負を避けるんだから。それが終わってから、D級になればいいだけなのに」
「それは私の台詞だから。こっちはD級に早くなりたいわけで、そこはマンも同じ気持ちのはずだよね? 言っておくけど、昨日の【模擬戦】で一度は決着はついてるんだから」
マンも一緒のパーティーなんだから、私の気持ちが分かるはず……
「ライバルは何度も勝負するものだと思うんだが? とはいえ、一度は勝負はしてるのか……面白そうだし、今回は私も一緒に参加させてくれないか?」
「「何でだよ!!」」
そこは私と紅が同時にマンへツッコミを入れてしまった。