意外な再会
☆
「昨日の時間は勿体なかったな。もう一度【ログイン】すれば良かったんだけど……」
陽キャみたいなプレイヤー達に声を掛けられて、面倒だからと【ユニユニ】から【ログアウト】して、再度【ログイン】しなかったんだよね。
「厄介な奴に絡まれる日なのかもと思ったのが悪かったか」
ブラック、紅、陽キャ達と声を掛けてくる奴等が多かったから(紅に関しては私が声を掛ける形だったけど)。しかも、【模擬戦】の観戦者が五人もいたわけだから、これ以上増えても……
今日は今日とて、大学の昼休み前に食堂で一人御飯。勿論、千城院さんを一目見る事は欠かさない。四壱は弓道部の合同練習とかで、別の大学へ行ってるから、本当に一人だ。
「でも、昨日の【模擬戦】は楽しかったんだよな〜」
【ログアウト】した後、紅との【模擬戦】を思い出しながら、足に負担をかけないように回避の練習。キャラメイクが終わったから関係ないかもしらないけど、筋トレするのも復活する事にしたから。
「あんな戦闘が続くのも悪くないかも。魔物にそんな事を思えたら良いけど」
スライム、イモチュウは気持ち悪かったし、ゴブリンと野盗は全然弱かった。ホブゴブリンは……護衛中だったし、色々あって、楽しむ場面でもなかったからね。
「ん……そろそろ、人も増えてきたから、独り言を言うのも止めないと」
独り言を言ってる自覚はあるから。人が増えてきた時には止めておかないと。
昼休みのチャイムが鳴って、続々と学生達が食堂に入ってくる。その中には千城院さんがいるわけで……
「う〜ん……やっぱり、映画館で見たのは千城院さんな気がするんだけど」
彼氏の噂がないのは別として、映画館にいたのは千城院さんだったのでは? あの雰囲気は別人とは思えないんだけど……千城院さんと同じ講義を取ってた人に聞いてみるのはハードルが高いからなぁ……
「あれ? ……流石に気のせいだよね」
銀髪の彼氏が登場……じゃなくて、紅に似た女性が千城院さん声を掛けようとして、取り巻き達に追い掛けされてる姿が見えるんだけど……流石に別人でしょ?
「ふんだ!! 奴等の方が千様の邪魔になってるのが分かってないんだから」
彼女は振り返って、聞こえるような声で文句を言いながら、こっちに歩いてくる。
「「あっ……」」
そんな彼女と目が合って、『あっ……』と声が重なった。【ユニユニ】の紅の姿に瓜二つ……じゃなくて、本人でしょ!! 短めの紅髪に褐色……というより、日に焼けた小麦肌。強気の発言だけじゃなくて、声も同じだから。
私も【ユニユニ】の姿と全く同じだから、私が紅に気付いたように、紅も私に気付いてもおかしくないんだよね。
「お前は……カズハだろ!!」
だからって、大声で名前を呼ばなくてもいいんじゃないの? 名前も同じにしてるけど、ブラックみたいな名前だったら、周囲に聞かれたら即死ものだからね!! こっちはアンタの名前を叫ぶような事はしないから。
というか、食堂にいる連中の視線が私の方に……千城院さんもこっちに顔を向けてるし!!
「ちょっと!! 一緒に来なさい」
周囲に注目される以上に、千城院さんに変な目で見られるわけにはいかない。ここは即座に食堂から離脱しないと。勿論、紅も一緒に来てもらうから!!
「お、おい……離せ!! ちゃんとついて行くから、離してくれ。シャツが伸びる……というか、脱げるから!! こんな力……ゴリラ、ぐふっ!!」
紅が着てるシャツの襟を掴み、強引に連れていく。引き摺る形になってるけど、そこは仕方がない。ゴリラ扱いもされたなら、首元を締めても問題ないよね?




