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開眼

「誰です!! 私達にそのような言葉をする魚人はいませんよ」


 イカンは周囲を見回してる。思わず声が出てしまったけど、その場所までは分かってないみたい。けど、この場に留まるの危険過ぎる。最初の一歩で音でもすれば、タコナス達が気付く可能性もある。


 タコナスの触手、タコ足を考えるとそこまで早く動いてないだろうし、ヒトデナシやイカンもシャーマンで、長いローブ姿をしてるから動きづらいはずだろうけど、こっちも海がそこまで速く移動出来ないから。


「我の歌声に惹きつけられたか。冒険者の仲間か、封印の守り手かどうかは知りたいぞ……ヒトデナシ」


「分かっています。少し待ってください」


 ヒトデのシャーマンが何かしようとしてる? 勿論、私達を捕まえるためでしょ。その前に動くしかない。


「海は嫌がるかもだけど、抱えて走るよ。二人で逃げるためには、そっちの方が速いから」


「文句は言わないわよ。けど、少しだけ待って。歌で幻覚を見せれるかやってみる。違う場所へ逃げる姿を何人も出せば」


 海は幻覚になる物をイメージして、歌い始めた。私はそれと同時に動くと、同じ姿の魚人達が周囲に幾重にも見え始める。


「歌? 無数に魚人達の姿が……幻覚ですね。何処からも歌が聴こえるのも幻聴? 本物を分からなくするためですね。タコナスの歌でかき消す事は?」


「悪くない歌だ。我の歌と混ざれば、壊れてしまう。美しい我はそんな事をしたくないぞ。ただ言える事は、この歌を知ってるのは人魚だけだ」


 タコナスやイカン達に海の歌は効果あり。タコナスも歌で相殺しない。けど、この島に人魚がいる事は知られてしまった。


「人魚ですか。逃げる魚人の姿を見ると、変装してるのは明白になりましたね。封印のためにも捕まえるのが妥当でしょう」


「我の血を捧げるのも問題ないのだがな。我も人魚に該当しない場合もある。その意見は賛成だ。ヒトデナシ」


「大丈夫です。幻覚がいようと、私の目からは逃れられません。全員を殺せばいいのですから」


 その声に私は走るスピードを少し遅くして、後ろを見る。


 星型のヒトデの五つの尖った部分に目が見開いた。それと真ん中にも大きな目。後ろ側に大きな口が。尖った目の部分がうねうねと動き出し、幻覚の私達が走ってる方へ。


「……目からビーム!? いや、毒液なの」


 ヒトデ男の目から紫色のビーム? が幻覚達を襲う。そのビームに当たり、幻覚を消えてしまう。それだけじゃなく、遮る木々がそのビームに当たると腐ったような感じになってた。あれを受けた傷を【アンチドーク】で治せるかも分からない。


「ヒトデナシ。殺さぬように毒の量を少し減らしましょう。捧げる血が毒まみれでは封印が解除出来ないかもしれません」


「仕方ありませんね。棘の量を減らしましょう。その方が射程も伸びますから。後、幻覚は五つ。どれが本物なのか楽しみです」

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