別人ですか!?
「そろそろ昼休みになるし、流石にその前に変装を解くんじゃないの?」
昼休みになると、昼食もあるから人が多くなるはず。大勢いると、変装しても正体に気付く人が出てくるかもしれない。
「流石にもう一周回るとか、次はスポーツ系の部活を見に行く事はないと思いたいけど……」
私達が彼女を追跡してるのが何時バレてもおかしくないし、警備員を呼ばれるレベルになってる気もする。千城院さんの変装もそうだけど、私達も人が多くなるにつれて、怪しさが増していくから。
「おっ!! トイレに入った。もしかして、変装を解くつもりなのかも」
近くにトイレはあったのに、人気がなさそうな場所まで移動してからトイレの中へ。という事は、利用理由が違うって事でしょ。
「……突入してみる? 千城院さんがいたら、話し掛けるチャンス……駄目かな。脅すみたいなのは嫌だし」
百瀬は自身で問答してる。確かに弱味を握って、仲良くするのはなし……というか、それをしたら嫌われるまである……嫌悪されるでしょ。
「それはなし。本人だと確認出来たら、心の中で留めとかないと。仲良くなれた時の話題ぐらいで十分」
トイレに入らなくても、千城院さん本来の姿で出てきてくれたら、それが証拠になるからね。わざわざ嫌われに行く必要はないよね。
「っ!! 誰!? って……四壱? 何でここにいるの?」
いきなり背後から肩を叩かれたから、警備員!? と思ったら、四壱だった。昼休みにもなったし、弓道の練習が終わったのかもしれないけど……
「はぁ……食堂にいないと思ったら、まだ続けてたの? 探偵ゴッコみたいなのは止めときなよ。相手は迷惑してるかもしれないからね」
四壱は練習中も私達がしてる事に溜息を吐いてたから、千城院さんを追跡する事を注意しにきたのもある気がする。
「こっちは早く七兄と【ユニユニ】で合流したいんだから、食堂で話を進めないと」
「そっち!? ……こっちは千城院さんが変装してたから、それが気になって……四壱も気付いてたわけでしょ」
他の人に聞こえないよう、小さな声で四壱に呟く。兄さんと【ユニユニ】で早く合流したいのは四壱らしいけど、私達も千城院さんの事が気になるから。
私達が誰かを追い掛けてるのに気付いてるみたいだったから、その相手が誰なのか四壱の観察眼なら分かりそうなんだけど……
「千城院さん? ……似てるかもしれないけど、彼女は千城院さんとは違うかな。毎月一度は武道系の部活を見学してるみたいだね」
「……えっ!? 千様の姿に似てるし……それだったら、変装する必要ないでしょ。今更間違いだなんて」
私もそうだけど、百瀬も彼女が千城院さんと認識してしまってるから、今更違うとは思いたくないし、私達の方が千城院さんをよく見ていたはず。
「四壱は彼女が誰なのか知ってるの?」
「そこまでは知らないけど、彼女が見学している時、遠くで銀髪の人が歩いてるのが見えた事があるし。銀髪といったら、彼女だよね?」




