合わせ技一本
カナリアの二曲目。私がロブに負けてる状況でも躊躇わず、私が選んだ強化の歌を歌い始めた。下手に考えたりするのは時間のロス。【余韻】の効果は減らす事になるから。それに勝手な判断は致命的なミスになりかねない。
「その判断……助かる」
私もすぐに立ち上がり、ロブと対峙。こっちは動かずにいると、ロブが仕掛けてきた。
ジャブ、ジャブ、ジャブと打ち続けながら、ロブは距離を詰める。そして、少し離れての右ストレート。前転時の反撃を狙うためにそうしたのかもしれない。
私も右ストレート時に屈むような姿勢を取ったから。
けど、さっきの前転は相手を欺くための釣り。視線を下に向けさせるだけでなく、次の攻撃のために体が少し曲げさせるため。
私は少し屈むと同時に反転。ロブに背中を向けた。しかも、その動きは【スピーダー】使用時よりも更に速い。
カナリアの二曲目で強化したのは速さ。【スピーダー】はロブにこれが最高速だと思わせるため。勿論、それは回転、攻撃にも反映される。
選んだのは正拳突きや蹴り等の空手技じゃない。中学や高校の授業で習った事がある程度だけど……
一曲目のスキル強化。【回避++】と右ストレートを避けると同時に私の両腕で絡み取り、強化した【受け流し++】の応用で勢いをプラスしての、二曲目の速度アップで反転。更に最後のスキル強化【カウンター+】で威力を上げる。
全ての強化を使っての【一本背負い】。
空手の技じゃなく、柔道の技。最初からそのつもりで歌を決めたわけじゃない。回避重視、カウンターの空手の技が決めるつもりでいた。
けど、空手だけに拘っていたら、阿修羅や【災厄の獣】に追いつけない。重視するのは空手だけど、搦め手等があって、空手が活かされる時もあるはず。ロブとの戦闘中だけど、背中を狙うなら……投げと思い浮かんでしまったから。
ロブもその速さに反応出来ず、地面に背中を叩き付ける。それによって背中殻が割れ、横腹のザニガニの足も剥がれていく。それは腹の防御も弱まった事を意味している。そして、一本背負いの勢いはロブの右手も折る程に。
このチャンスを逃すべく、ロブの腹に正拳突きを放つ。腹の殻も割れ、中の肉も突き破る。それが極まると、ロブは消滅していく。
「……はあ〜……何とかなったけど」
ロブの消滅を確認した後、地面に座り込んだ。残ったのはロブの素材であるボーリング型のハサミが一つ。中は空洞で、拳に嵌め込む事は出来そう……
「じゃなくて!!」
「やったじゃないの!! 一時はどうなるかと思ったけど、アキンドーが見込んだ事はあるわね。って、何で浮かない顔してるのよ」
カナリアもロブを倒した事で歌を止め、私の方に歩いてくる。
「倒せたのは嬉しいんだけど、呆気ないというか……」
スキル強化を三つ駆使して、速さも上げた一本背負いは確かに強力だったと思うし、相手の弱点もつけた事で殻を破壊出来た。その後、正拳突きの直撃でロブは倒せたわけなんだけど、二回の攻撃で倒せるものなの?
攻撃や速さもあって、ハサミや殻による防御も凄かった。魚人も倒した相手で、BOSS的存在だと思ったから余計にかもしれないけど……




