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銀髪カップル?


「はぁ……四壱がどんな映画を見るとか思ったら……やっぱり、これ関連だよね。千城院さん程じゃないけど、イメージに合わないからなぁ……」


 四壱と鑑賞する映画のポスターを見ながら、呟いてしまった。【ヤンボー3】というB級映画。コメディ&バトル作品みたいなんだけど、メイン武器が弓なんだよね。弓関連のアニメ、漫画、映画、ドキュメンタリーも見る程の弓馬鹿だから。


「別にいいでしょ。誰かと一緒に映画の感想とか言い合いたいし、熱く語るかもしれないから、一葉が適任なんだよ」


「はいはい……これをやってる映画館をよく見つけたもんよ」


 大学の最寄り駅の近くにも映画館はあるんだけど、電車で二十分は掛かる場所に来てる。人目を避けるというより、この映画館が有名作品よりもB級作品を数広く揃えてるみたいで、映画好きの穴場みたいなところなのかも。


 サメ映画の題名が【JOKE】だったり、ヤクザ映画も任侠じゃなく【人情】だったり、【ゴブリンの日常】とか怪しげな作品があったり。本日から公開の【明日のショー】というプロレス映画とか色々あるから。


「勿論、調べたに決まってるでしょ。色んな物を矢の代わりにするみたいだから楽しみなんだけど……映画グッズは流石に売ってないか」


 売店には映画のパンフレットとか置いてあるけど、B級映画というのもあって、【ヤンボー3】に登場するグッズはないみたい。


「弓矢のグッズがあったら、買うつもりだったの? ジュースとポップコーンも買ったし、そろそろ中に入っても……えっ!?」


 目の錯覚なのか、映画の半券を切った先の通路に深々と帽子を被ったカップルがいたんだけど、男女共に銀髪なのが見えて、女性の方は腰にまで届く程の長さがあるんだけど!! 


「もしかして、千城院さんなんじゃ!!」


 銀髪の人なんて珍しいし、雰囲気も似てるような……しかも、男性と一緒という事はデート中!? そんな時に声を掛けるわけにもいかないし……


「違うでしょ。銀髪だからって、千城院さんと決めるのはどうなの? 今日は一度も見てないから、幻でも見てるとかさ。彼女は今も講義中なのよね?」


 今日は千城院さんを一度も見てないから可能性が……あれ? 言われてみれば、千城院さんは午後の講義があったはず。共通だったから、同じ講義を選べたのにと思ったぐらいだから。


「それにデートでここを選ぶ? 映画館も大学の近くにあるんだよ。そもそも、彼氏がいたら噂ぐらいにはなってるでしょ」


 それはそう!! 千城院さんに彼氏がいたら大騒ぎになってるし、取り巻きに囲まれた状態だと無理な気がする。この映画館を選ぶ程の映画好きとも聞いた事もないかな。


「そうなんだけど……やっぱり、見間違いなのかな?」


「でしょ。男の方も銀髪だったし、流石に目立つはずだから」


「銀髪の男で目立つ……」


 その言葉で頭に浮かんだのはマンなんだけど……丁度、プロレスのB級映画もやってるじゃない!? ……けど、それはないか。銀髪だけで判断するもんじゃないし、他の映画を選んでる可能性だってあるんだから。


「はいはい!! 千城院さんの事は忘れて、映画の方に集中しないと」


 四壱は私の目の前で猫騙しをして、気持ちを切り替えさせた。まぁ……私はそこまで楽しみにしてたわけじゃないんだけどさ。

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