私の家に侵入者?
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「ふぁ〜……今日は一限目からだし、さっさと朝御飯の準備をするかな」
昨日の【ユニユニ】は【ハイソン】に到着して、イベント達成したところで【ログアウト】する事になった。今日が朝早いのもあったし、マンも【ログアウト】するみたいだったから丁度良かったんだけど……
「昨日は本当に不甲斐ないところばかりだったな。マンの強さに比べてたら、全然だったし」
ホブゴブリン戦。両腕が動かない状態で、戦闘の続きとなると思いきや、マンが馬車を土台にしての華麗&力強い【ミサイルキック】を放って、一発KO。見事に決まった事から、両手を挙げるパフォーマンスをしながら、満足そうな顔をしてた。勿論、その後は私に手を差し伸べたんだけど。
もしかしたら、マンは現役プロレスラーなのかも……【ジャイアントスイング】【ダブルラリアット】【ミサイルキック】は【アーツ】扱いじゃなくても、普段から使えるのなら納得出来るんだけど……
私の正拳突きも本来は【アーツ】扱いになるかも……なんて自惚れすぎだか。
兎も角、私の正拳三段突きでも倒せなかったのに、マンの【ミサイルキック】一発で倒すもんだから、力の差が歴然と分かるわけで。
「千城院さんとパーティーを組むためにも、もっと強くならないと駄目だな」
「おはよう、一葉。朝御飯は出来てるから」
「ありがとう、四壱。昨日は寝るのが少し遅かったから……って、何でいるの!! 家に鍵は掛かってたはずなんだけど!?」
ダイニングに行くと、四壱が朝御飯の準備を終えて、座っていた。というか、すでに御飯を食べてるし!!
私が鍵を開けてない以上、犯人は一人しかいないわけで……
「昨日の晩御飯を勝手に食べたお詫びらしい。一葉も楽が出来るからいいんじゃないか?」
「……兄さん、仕事は? いつもなら出てる時間だよね?」
「会社PCのメンテナンスがあって、今日はリモート作業なんだ。出勤しなくていいから、朝御飯をゆっくり食べるぐらいの余裕はあるぞ」
やっぱり、四壱を家に招き入れたのは兄さんだった……わけじゃなく、四壱の思惑通りでしょ。
兄さんの今日の仕事がリモートだと、四壱は事前に聞いていて、昨日の私の晩御飯を横取りした。勿論、お詫びという理由で、朝御飯を兄さんと一緒に食べるため。手作り料理を食べて貰うためだよね!!
「私の分もちゃんと用意してくれてるから、別にいいんだけど」
「それは当然じゃないか? 一葉のお詫びのためなんだろ?」
でも、まぁ……兄さんが鈍感という事もあって、四壱の好意は届いてなさそう。幼馴染になると難しいところがあるのかも。
「はぁ……そういえば、【ユニユニ】の方はどうなの? 一葉の運動能力なら活躍する事間違いないと思うんだけど、仲間は……まだでしょ? そういうの苦手な面もあるからね」
四壱の言う通り、仲良くなれば全然問題ないんだけど、人付き合いもそうだけど、話下手なところがあるんだよね。前までは空手ばかりで、流行りの物や服とか興味がなかったし。千城院さんに話し掛けれないのもそれもあるから。
「そうなんだけど……実は【フレンド】も出来て、パーティーもすでに組んでいるんだよね。勿論、パーティーは千城院さんと組むまでの仮パーティーなんだけど」
テーブルの椅子に座り、四壱が作った朝御飯に箸をつける。御飯、味噌汁、焼き鮭、卵焼きと海苔の和食スタイル。朝にパン食ばかりだと、たまに和食を恋しくなるのを分かってるわ。
「へぇ〜一葉がすぐに打ち解けるのは珍しいんじゃない? 相手はどんな奴なの? 男? 女? アバターだと本来の性別は分からないかもしれないけどさ」
「それは俺も気になるぞ。怪しい奴じゃないよな? 【ユニユニ】の話も聞いておきたいし」
怪しい奴……だと思われるだろうね。けど、素直にマンと出会った時の状況とか教えたら、問題ないかな? 良い奴なのは間違いないんだし……パンツを脱ごうとするのが玉に瑕なんだけど。
「分かった分かった。最初から話すわね」
私も案内役の斉藤さんの事とか、話をしたかった部分もあるから丁度いいかな。