タクシー乗り場
「いらっしゃい!! タクシー乗り場にようこそ。アンタ達の事は伊藤から話は聞いてるよ」
タクシー乗り場の主? 蜥蜴男が私達……というより、マンを見るなり、声を掛けてきた。【シーシー】に行くため、伊藤さんが蜥蜴男にタクシーを予約してくれてあみたい。その目印になるのがマンだったのかも。
「ちょっと……この蜥蜴とタクシーのトカゲの顔が殆ど同じに見えるんだけど、大丈夫なの? 騙されてないわよね?」
紅の言う通り、エリマキがないだけで、主と乗り物のトカゲの顔は同じ……それを本人に聞こえるように言ったら駄目でしょ。
「ハハッ!! よく言われるな。俺にとっては兄弟みたいなものだからな。全く気にしてないよ」
蜥蜴男は笑いながら許してくれた。紅以外にも口を滑らせる冒険者がいるみたい。
「Gは伊藤が受け持つらしいから、払わなくていいよ。【シーシー】までという話だけど、それはアンタ達の器量と運次第だね。ともかく、タクシーの説明からするぞ。それを聞かずに後から文句を言ってくる輩がいるからな」
「という事は……確実に【シーシー】まで行けない事もあるんだ。ウサ男からのアドバイスもちゃんと意味があるのかも。二人乗りのタクシーがお勧めと聞いたんだけど」
ウサ男は私達がタクシーに乗るという話を聞き、それに合ったクエストと、二人乗りのタクシーを選ぶようにアドバイスをくれたわけ。
「二人乗りの事を知ってるとは通な奴がいるんだな。勿論、二人乗りもOKだが、タクシーの値段は変わらないからな」
二人乗りをすれば、タクシーは三体で済むんだけど、そこは人数の値段になるらしい。それも私達が払うわけじゃないから問題ないからね。
「それではタクシーの説明をするぞ。タクシーの移動速度は時速で三十から四十キロ。乗り心地はそこまで良くない。乗り手次第では激しく揺らしてくるから注意だ」
「は、激しくですか……それは吐いてしまう可能性が」
三太は激しい揺れにビクついてる。【ユニユニ】なら嘔吐も出来る気がする。というか、三太の一人乗りは決定でしょ。誰も嘔吐した物をかけられたくないし。
「吐くのもそうだが、振り落とされない事を注意するべきだな。下手したら大怪我だぞ。それだけじゃない。タクシーから落ちたら、アンタ達を放置して、この場所に戻ってくるんだ。所謂、帰省本能だな」
「なるほどね。【シーシー】に辿り着けるかは、私達次第って理由は分かったわ。軽く試乗はさせて貰えるわけ?」
「十分ぐらいなら構わないぞ。二人乗りなら、どの組み合わせにするか重要になるかもしれないからな。そこのエルフは弓士だろ? なら、操縦の方は止めた方がいいぞ。というのも、このタクシーは魔物に狙われやすい面もある。稀に違う場所のエリアボスがタクシーを狙うために乱入してくる事もあるからな」
このエリマキトカゲは移動するのが速いのはいいんだけど、魔物に狙われやすい。魔物にとって、タクシーは美味しい獲物なんだろう。
ウサ男が薦めてきたクエストも討伐系が多くて、その中にエリアボスとされている【ガルーダ討伐】があったのよ。B級になるための条件の一つでもあるから、【ガルーダ討伐】を選んだけど、タクシー好きのエリアボスがガルーダなんだろうね。説明には何処かの山に隠れ棲むぐらいで、タクシー好きとは書いてなかったけど!!
「魔物に狙われやすい……という事は、美味しいのか?」
「それは聞いたら駄目でしょ。兄弟みたいなものと言ってるんだから!!」
「す、すまない!! 思っただけで、食べるつもりはないからな」
魚人肉ソーセージを選んだのもそうだけど、マンは色んな食べ物に興味があり過ぎでしょ。下手したら、乗車拒否されてしまうから。




