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隣の千城院さん

「落ち込んでる姿も絵になるんだけど……って、ちょっと!! こっちに歩いていきてるんじゃないの?」


 百瀬の私に耳打ちしてきた通り、千城院さんはお盆を持って、私達がいるテーブルの方に足を向けてる。しかも、お盆に乗ってる食器からして、丼物? いつもはサラダやパンで、そっち系を選ぶところは初めて見たかもしれない。


 もしかしたら、それに気付かない程に落ち込んでるのかも。もしくはヤケ食い……誰しもそんな時があっても仕方ないんだけど……千城院さんだと滅茶苦茶心配になるから。


「横のテーブル!? こんなに近くで千様を……話し掛けるのは……無理」


 千城院さんはいつものテーブルじゃなく、私達の左横のテーブルに座り、百瀬は緊張のあまり、若干震えてる。私も驚きを顔に出してないと思う……多分。


 横目でチラッと見ると、千城院さんが選んだのは食事は牛丼。これは自分に元気をつけるため? 牛丼を見るとマンのイメージが浮かんでくるんだけど。


「話の続きに戻るけど、マンがどうしたかだよね?」


「「ちょっ!!」」


 私と百瀬は四壱が【ユニユニ】の話の続きをしようとして、思わずツッコミをいれそうになったじゃないの!! 恥ずかしいわけじゃないけど、女性三人でゲームの話って……千城院さんからどう見えるか怖いんだけど……


「そこまで気にする必要ないでしょ。何の話をしてるか分からないかもしれないんだし。今の一葉や百瀬のキョドりようが、彼女を引かせる気がするけど」


 四壱は私と百瀬の顔に近付き、小さな声で話した。


「「えっ!! そんな事は!!」」


 またしても、百瀬と大きな声が重なってしまった。チラッと千城院さんの方を見ると、私達の方を見ていたのか、すぐに目を反らしたから!!


 うぅ……もしかして、千城院さんに変な奴と思われたかも……こうなったら、【ユニユニ】の話でこの場を濁すしかないでしょ。


「分かった。元の話に戻った方がいいのかも」


「宮森の言う通りね。聞かれて、困る事でもないわけだし」


 私と百瀬は気持ちを切り替えて、【ユニユニ】の話へ戻す事に。この場から逃げ出したら、余計に怪しまれる……百瀬もそう思ってる気がする。


「でしょ。マンの話に戻るけど、彼が【ログイン】した時、僕達は関所前戻ったんだよ。【転移の翼】は関所でも移動可能だったから。勿論、一葉がメールでその場にいるよう、先に伝えたけど」


「本来、イベントが続いてる時間だからね。そう伝えておかないと、関所から獣人の国に行くと思うし、そこで門番達に拒否されるのは可哀想だから」


【魚人軍襲来】のイベントが終了するまでは獣人の国に入る事は禁止されていて、防衛の時だけに許させていたわけだしね。


「それで……合流した後、イベントが繰り上がりで開始された事を七兄が伝えたんだよ。阿修羅との戦闘も一応、伝えたけど、本当の理由は分からないって」


「あの時のマンがショックを受けた顔は、本当に楽しみにしてたんだと思う」


 それは隣にいる千城院さんよりも酷い……と言ってもいいのか、体全身で落ち込んでたのが分かるし、パンツもズリ落ちそうな感じだったから。

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