アクシデント発生!!
「カズハ!! イベントが開始されてる!! サメが出現してるわ」
四壱が放った矢は阿修羅も通り過ぎ、その先にいるサメ人間を狙っていた。邪魔というのは四壱達じゃなく、サメ人間の登場に気付いたから。
紅達が私を助けたのは、【宣戦布告】を二人にしてる時点で頭の中に入っててもおかしくないはずだし。下手したら、二人が協力するのがハンデだと思ってた可能性も。
「私達の戦闘に感化されたか。タイマーも動き始めてる」
阿修羅曰く、私達が戦闘を行った事で、イベントが開始されたと勘違いしたわけ? そんなの……【ユニユニ】なら考えられるかも。難易度Sでもあるし、参加してる冒険者の半数はいるわけで……
時間は現実と【ユニユニ】の時間以外にイベント終了のタイマーと共に観戦数も【MENU】から把握出来るようになってる。つまり、【魚人軍襲来】が本当に始まってしまったって事。
ただ……阿修羅はサメ人間ではなく、私の方に体を向けた状態。サメよりも、私の戦闘を継続するつもりみたい。
「イベントが始まったって言ってるのに!! カズハも死んだら終わりなのは忘れないでよ」
紅は阿修羅が私に対しての戦闘態勢を解かない事に呆れ、私に注意を促した。
それに返事をしたいところだけど、集中を途切れさせるわけにはいかない。余所見でもしたのなら、阿修羅がその隙を逃すわけがない。
ここは阿修羅の望み通り、今度は私から仕掛ける。出し惜しみなどせず、得意な正拳三段突き。踏み込みは素早く、力強く。【ナイトメア】や【クイーン】戦を経験してから、あの時よりもスピードは増してる。
一撃、二撃を阿修羅は寸でのところ、一歩下がるだけで回避。その回避に三撃目は更に懐に飛び込む。超至近距離からの突き。
当たる!! と服に触れた瞬間、私の体を軸にして、阿修羅の体は回転。【受け流し】を応用したのか、私の背中に移動した。
背中は無防備。阿修羅の攻撃であれば、一撃で仕留められてしまう。同じように体全身で【受け流し】をするのも私には無理なわけで……
しかし、阿修羅からの攻撃が来ない。その代わりに『私に合わせろ』という言葉が。
気付けば、サメ人間は攻撃を仕掛けた四壱を狙わず、私と阿修羅の戦闘に割り込み、噛み千切らんとばかりに飛び込んでこようとしていた。
阿修羅は後ろに目でもあるのか、サメ人間の動きを見切っていたのかもしれない。
私の股下から飛び込んできたサメ人間の懐に滑り込み、両足でサメ人間を蹴り上げる。私の背中で阿修羅の姿が隠れ、奴は全く反応出来なかった。
その衝撃にサメ人間は仰け反る。そのタイミングで私はサメ人間の下顎を狙って、更に上空へ浮かした。
阿修羅はサメ人間を地上じゃなく、空中戦へと持ち込むつもりだと最初の一撃で私は判断。
その判断は正しかったらしく、阿修羅は空中へ飛び、更にサメ人間を蹴り上げる。呼応するように私も続き、空中からサメ人間を落とさないよう、互いに高さを競うように蹴り上げ続ける。
ただ……私と阿修羅の連撃を続ける中で誤差が生じ、空中とはいえ、サメ人間にも反撃出来る時間が……




