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VRゲームがやりたいんです!!


「兄さん!! 頼みたい事があるんだけど!!」


「……我が妹よ。兄は徹夜明けで、今帰ってきたばかりなんだ。少し休んだ後に……」


 ゲームや漫画、フィギュアに囲まれていて、それが綺麗に整理整頓されているのが兄さんの部屋だ。そんな中、兄さんは微動だにせず、うつ伏せ状態で、スーツのままベッドに倒れてた。


「すぐに済むから。私にVRのヘッドギアを譲ってくれない? 仕事で全然出来てないんでしょ」


 兄さんがそんな状態なのはいつもの事。申し訳ないけど、少しでも時間を無駄にしたくないんだよね。


「……一葉がゲームだと。どういった風の吹き回しだ? 小学校以来じゃないか?」


 私の名前は宮森みやもり一葉かずは、M大の大学二年生。好きな事は空手……だったんだけど、とある事故で断念。ゲームはからっきしだから、兄さんが驚くのも無理はないかな。


「このゲームをやりたいの。【ユニーク・ユニオン・オンライン】って名前で」


「人気急上昇中の【ユニユニ】だと!! 仕事がなければ、俺もやってみたいと思った作品だぞ。今だと入手困難になっていてもおかしくないんだが、どういった経緯で……」


【ユニーク・ユニオン・オンライン】の名前を言っただけで、兄さんはベッドから飛び起きるなんて、そんなに凄いゲームなんだ?


 兄さんの名前は宮森みやもり七夜しちや)。元ゲーマーで、今はブラック企業の社畜として働いている。休みの日はゲームじゃなく、睡眠を優先していて、ゲームは封印状態。それでも、いつでも復帰出来るようにゲーム情報は調べてるみたい。


「【ユニユニ】? の事は詳しく知らないんだけど、千城院さんがやってるはずだから」


「……ああ。一葉の話で何度も出てくる……高校時代から憧れてる女性だよな? 大学も同じだったのは奇跡だと言ってたか」


「そうそう!! もっと良い大学に行けるはずなのに、あれは運命だと思ったよ」


 千城院せんじょういん千影ちかげ。彼女は千城院グループという大企業のお嬢様。文武両道、才色兼備。高校でファンクラブが出来る程の美人。大学でも、一年ながらもミスM大に選出されたぐらいだから。性格も良く、男女問わず人気があるわけで……


 そんな彼女に一度助けられた事があって、そこからファン……といっても、ファンクラブに入ってたわけじゃないし……


「となれば、俺が知らぬ間に千城院と仲良くなれたんだな。それは喜ばしい限り……何故、顔を背ける? まさか……」


「まだ全然話せてない。これをきっかけにして、ゲームの中からでも」


 千城院さんとはまともに話した事が一度もない。取り巻きみたいに近付く事もやってないから。助けて貰った事があっても、高嶺の花である彼女にとっては私もモブに過ぎないわけ。会話するにしても、千城院さんが好きな話で取っ掛かりが欲しいからね。


「なら、どうやって千城院が【ユニユニ】をやってるのを知ったんだ? 盗み聞きでもしたのか?」


「失礼な。バイトの帰りに、コンビニで千城院さんを見掛けたの。雑誌コーナーでジッとしてたんだけど、何も買わずに出ていったから、何を見てたのか気になったの」


「千城院が一人だったなら、そこで話し掛ければ良かったんじゃないか?」


「話の腰を折らないの!! そこで千城院さんが見てたのが、兄さんが毎月購入してる雑誌で……それ!!」


「【Vラボ】か? 帰りに買ってきて、まだ読めてないんだが……【ユニユニ】の特集をしてるみたいだな」


 兄さんは【Vラボ】をペラペラとめくっていく。


【Vラボ】は月刊誌で、兄さんが毎月購入してるVRゲーム専門雑誌。兄さんが言うように、今月号は【ユニユニ】の特集がメインになってるわけ。


「他にはプロレスとかバイクの雑誌が近くにあって、その中だとコレかなって……VRゲームをするイメージでもなかったんだけど、中身を見てみたのよ。そしたら!!」


「【ユニユニ】の中で、千城院に似てるプレイヤーがインタビューを受けてるな。βテスト版のイベントで一位になったパーティーの報酬か。ん? もしかして……これなのか!?」


「私が言おうと思ったのに!! そうだよ。髪や瞳の色は違うけど、彼女は千城院さんに間違いない。アバター名も【千】らしいし、実体をそこまで弄ってないって、コメントで書いてあるんだから」


 私は千城院ファンクラブから買ったプロマイドを確認する。御守り代わりとして、財布の中に入ってる。兄さんもプロマイドを見た事があるから、千城院さんの顔を知ってるわけ。


「【Vラボ】も雑誌に載った記念に買おうと悩んだのかも」


「【千】というプレイヤーが別人という可能性も……いや、一葉がそれでいいのであれば。まずはVラボの【ユニユニ】特集を詳しく読んでからでも遅くはないと思うんだが」


「それはプレイした後でも読めるでしょ? 大学の講義中でもいいわけだし。VRゲームを体に覚えさせないと」


 私は長い説明書を読むよりも、体で覚える方が得意だから。


「はぁ……分かった。一葉は部屋に戻ってろ。まずはヘッドギアを初期設定にしないと駄目だから。それが終わったら、VRゲームのやり方を教えてやるから」


「分かった。すぐにだよ。途中で寝るのはなしだから!!」


 これでVRヘッドギアをGET。兄さんが準備してる間に、こっちも色々と用意しておかないと!!

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― 新着の感想 ―
[一言] 笑いながら読ませて頂きました! 勢いもあり、楽しく読み進められます。 発想が笑 いろんな意味で勉強になりました笑
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