事前準備をしよう
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「はぁ……これから頑張らないと駄目なのに、ヤル気が……気力を取り戻して置かないと」
「時間の猶予が少しあるだけマシだわ。けど、情報を教えてくれた本人は来ないみたいだけどね」
「七兄がいないのはカズハのせいというか……僕も一緒に行きたかったんだけど、アイテムを設置するように頼まれたから」
私と紅が千城院さんと会うのを諦めて、音楽イベント=ゲームソングイベントから帰宅しようと思った時、兄さんからライソが届いた。そこには【魚人軍襲来】の防衛時間前から、その場所で色々な準備が出来るらしく、アイテム設置をするような事が書かれていたわけ。
その返事の時、今度こそ屋台の料理を持ち帰ろうと、ゲームソングイベントがある事を兄さんに伝えたら、脇目も振らず、速攻でこっちに向かうという返事が……
午後の部が終わってないはずだから、兄さんは観客としてゲームソングやゲームの料理を楽しんでる最中だと思う。この前までブラック会社に働いてたから、それぐらいの楽しみは満喫してもいいでしょ。私も千城院さんがいたら、あの場所に長居してたはずだしね。
「昔からのゲーム好きなら仕方ないかもしれないか。私も全部の料理を買ってきてとか言われたし。それも途中で諦めたけどさ」
そういえば、紅も誰かにライソしてたけど、相手はブラックだったのかも。あの時、流石に一つは食べようかと紅と一緒に長蛇の列を並んだけど、その後も紅は別の場所に並びに行ってたから。申し訳ないけど、私は兄さんが来る前に帰らせてもらったんだけど……
「あれは諦めて正解だから。ライブが始まってたから大丈夫かもしれないけど、今でも並んでる可能性はあったでしょ」
「だよね。こっちで罠を設置する方がマシ……と言いたいけど、これも大概だから。思った以上に広いわね」
私達が防衛するのは海岸付近。海が見える場所で、そこから魚人軍が登場してくるのが分かる。
とはいえ、私達が海に入る事はなく、砂浜の少し先ぐらいが防衛場所の一番端。広さは直径で三キロぐらい? 私達の場合は人数が少ないから広く感じるけど、百人の冒険者がいた場合、それぐらいの広さの余裕があった方が良かったのかも。それに大型BOSSもいるわけだし。
「罠といっても簡易なモノだからね。僕が矢でそれを撃ち抜かないと駄目だし。『職業【罠師】がいたら楽だったかもしれない』と七兄は言ってたから」
罠は袋の中に眠りや毒、麻痺の粉末を入れて、それを四壱が弓矢で射抜く事で広がっていく感じ。遠くの相手を動きを鈍くさせるためのものみたい。もしくは、魚人が破壊してくれる事を期待するとか。
「こんなに広さがあるとね……三太は現実の方で連絡が出来るわけでもないし」
紅は私と一緒に音楽イベントにいて、兄さんのライソの内容を知ってるわけで、四壱に関しては兄さんと一緒にいたみたいだから。
三太はマンや紅と【ユニユニ】で【フレンド】にはなったものの、現実の方での連絡手段はなし。私とマンでもそうなんだから、そこは仕方はないけど。
「袋を置くだけなんだし、手分けしてやる? 現実の方だとそろそろ十八時になるけど、【ユニユニ】だと開始まで六時間はあるんだから」
罠を多く設置するなら分散した方がいいわけで、私達は【フレンド】同士という事もあって、道具の受け渡しは可能だから。
「そうだね。七兄からも決まった場所に置くように言われてないから、時間が来るまでは別行動でもいいかも」
「分かった。別の場所に行こうにも、ここから移動出来ないわけだし、罠を設置してあげるわよ」
開始時間前に防衛場所に行けるのは確かなんだけど、【ログイン】したのは防衛する場所であって、終わるまでは移動出来なくなってたから。