雨
「……ちょっと待って。そんなのありなの!? 雨と表示されてたけど……観戦するよりも、あっちの方が酷いわけだよね」
「だな。ここは海よりも離れた防衛場所だから、難易度Aだとしても、水から離れた魚人達相手なら……と、思ったんだろうが」
序盤にも関わらず、冒険者側は早くも撃破されていく。魚人軍の数もまだ同等……少ない方かも。それでも冒険者達が倒されていく理由は……
「視界がヤバい!! 雨のせいで視界が狭まるし、水が氾濫してるから移動力も低下してるでしょ」
「そういうわけだ。下手すれば、更に水位が上がってくる。魚人達が侵攻出来る理由もこれがあるからだな。いきなり、この状況だと冒険者達も驚きを隠せないどころか、普段通りの動きが出来ないからな」
「魚人達も弱ってるどころか、冒険者達よりも動きが良くなってるから」
雨による水の氾濫のせいで、魚人達が活性化してる。弱体化してるはずが、逆になってると、雨も相まって対策も追いつかない。
「更に言えば、難易度Dに挑んだ冒険者の失敗は【アーツ】のミスが多発してるからだ。特に魔法だな。水系の魔法は魚人に効かないのは分かるが、問題は炎系だ。雨によって消失する。届いたとしても……至近距離で当てるしかない」
「……本当だ。炎の魔法がドンドンと小さくなってる。魔法自体が難しい?」
炎魔法師が全体魔法を唱えたんだけど、宙で炎が形成されていく間、雨に打たれて完成まで辿り着けてない。
集団戦において、全体魔法は効果的だけど、仲間の冒険者も巻き込む可能性がある。PKが禁止されてる中、冒険者にダメージなしなのかも分からないし。
「冒険者を巻き込む事もあったな。それを躊躇いもなく、する奴がいた場合はPKになってもおかしくないと思うぞ」
ある程度の許容範囲があるかもしれないけど、それは私達自身で判断がつかないわけね。
「うわ〜……魔法師の職業が一番損してるかも」
集団戦なんて、魔法師が一番活躍出来そうなのに、PK禁止が裏目に出てるでしょ。敵に距離があるうちに使わないと無理があるし、それまでに発動時間が足りるかどうかも……
「範囲魔法でPK扱いになるのは確定じゃないからな。誰かが試すしかない。それでも、魔法師に活躍の場がないわけじゃない……っと、何とか第一陣は退けたみたいだな」
「第一陣? 絶え間無く来られたら、たまったもんじゃないか」
魚人を撃破した数なのか、時間の経過なのかは分からない。けど、魚人の出現が一時的に止まってる。回復するなり、【アーツ】の発動時間や硬直時間に費やしたりするインターバル、態勢を整える時間は用意されてるみたい。
「って、そんな事言ってる間に……インターバルが短くない!?」
「難易度D、C、Bとそこまで変わらなかったはずだが、難易度Aともなると時間が短くなってるな。それに……」
「あれは魚人じゃなくて……巨大なタコじゃないの!!」
「BOSSモンスターと呼べばいいのか……Dは二回、Cは三回、Bは四回だったが……ここまで早いとは思わなかったな。BまではBOSSが一体ずつしか登場しなかったが……」
「この先、同時に二、三体出現する可能性があるかもしれないわけ?」
「ないとも言い切れない。大型モンスター一体だけなら、集団で攻めて来られるよりも楽な部分もあるらしい。魔法師も的が大きく、こういう時に範囲魔法が役に立っていたからな」
「確かに……大きな一体の方が全員で戦えるから、気持ちは楽かも。魔法も気にしなくてもいいし」
こういう大型、BOSSモンスターにトドメを刺したのなら、目立ちそうではあるよね。