難易度C対難易度S
「ないない。それはないわ〜。難易度Sとかで目立てるのは千やブラックみたいな腕に自信のある冒険者だ。支援や生産は裏方や。激しいバトルは華があるやろ?」
確かに……補助魔法や回復魔法は縁の下の力持ちみたいで、目は戦闘の方に行ってしまうと思う。それが激しい戦闘であれば尚更。
「アキンドーは【魚人軍襲来】の開幕、難易度Cの場所を選んだんだよ。しかも、そこの参加者はD級の冒険者が大多数だ」
「はっ!? ランキング四位と八位が難易度Cのところに行くわけ。開幕が目立つのは分かるけどさ」
紅が文句を言いたいのは分かる。【MAP】で防衛場所を確認すると、D四、C三、B二、A一の十箇所。Sは一つもない。この中だとAかBかを選ぶべきでしょ。Cは普通だと思うし、ランキング上位がそんな場所にいたら悪目立ちするだけじゃないの?
「カナリアはんの歌姫は支援職や。仲間を勝たせてなんぼ。カナリアはんの歌で新人冒険者を強うして、圧倒するんや。新人達も喜んで、カナリアはんのファンになるし、一石二鳥やわ」
「難易度Dだと簡単過ぎるかもしれない。BやAだと強い冒険者がいるだろうし、バフをかけても圧倒的まではいかない可能性もある。Cが丁度良い。しかも、D級ばかりで、カナリアの歌で戦況が一気に引っくり返す状況を作り出せば……って、ところだろ?」
「流石やわ。全くもって、その通り。わてや商店メンバーの四人程がフォローにも回るで。皆はんには気持ちよく、勝ち続けて貰うつもりや」
兄さんはアキンドーの考えを読んだみたいだけど、あったはちゃんとした作戦になってるから。
「そんなところに俺達が入れば、他の冒険者達みたいにモブ扱いだ。カナリアの歌声で強化されたと勘違いされるだろうな」
「だよね。歌姫だからこそ出来る事でしょ。ランキング八位まで行くんだから、歌が下手なんて事はないだろうから……」
歌姫による戦況反転以上に目立つ事なんてある? 大人数の防衛場所だったら、見つけてもらうのも難しいでしょ。
「であるなら、こちらは正攻法だな。最終日、難易度Sに挑戦するべきだと思うぞ」
マンが手を挙げ、防衛日と難易度の提案をした。初日を取られた以上、最終日を選ぶのは間違ってないと思う。それに難易度AとSの違いは定員数の差だったり?
難易度DからAは定員数五十から百人ぐらいなんだけど、Sになると一桁、定員が十人にも達する事がないから。それはそれで燃えるところではあるけどさ……
「難易度S!! 人数が少ない分、注目はされるかもしれないけど……マンがいたとしても全滅は免れないんじゃないの? 四壱の事もあるんだから」
紅は難易度Sには反対みたい。アキンドー達が圧倒的勝利を目指すのに、こっちは全滅する可能性がある場所を選ぼうとしてるから。
「癪ではあるけど、俺も彼の意見に同じだ。クリアはしたいが、それが目的じゃないからな。全滅覚悟なのも悪くないんだよ」
アキンドーとの勝負内容はポイント数じゃなく、どちらが目立つか。水着モデルに選ばれるかの話で、クリア達成が条件に入ってないから。逆に目立つのに全滅を利用するなんて事は……
「僕は七兄がそれで行くなら文句はないから」
「はぁ……兄さん……7がそういうんだったら、四壱もOKするよね」
アキンドーと会う前から、兄さんは時間と場所を決めたいと言ってたわけだし、それがマンと同じ意見だっただけだから。
「ああっ!! もう!! 難易度Sに挑戦するんだったら、蘇生手段は必要だからね。私やカズハ達はそれがないわけ。7は調合士なんだから、作れたりしないわけ?」
四壱と兄さんが決めたのなら、私と紅は従うしかないからね。少しでも生存するために、蘇生方法があるのかを聞くのは間違ってはいないから。