地下アイドル?
「おおっ!! それは堪忍やで。時間は大事やからな。わてを知っとる形で話したのも悪かったで。わてはこういう者や。7はこれを回したって」
アキンドーはペコペコと頭を下げて、兄さんに紙を数枚渡した。兄さんはそれを四壱に渡して、四壱は私に、私はマンと紅に。紅は三太へ。【フレンド】じゃなかったら、道具を渡す事は出来ないからね。
「わてはアキンドー。商人をしておりますわ。一応、【フレンド】達でアキンドー商店という集まりのリーダーもやらせてもろうてます。その名刺を見せはったら、【フレンド】の店で、安くして貰えますわ」
アキンドーが兄さんに渡してきたのは名刺。これがあればアキンドーの商店の店でアイテムが値引き出来るみたい。これも商売上手というか……
「そちらの紹介は後日で構へんから。わてらに勝った時にでもしてもろて。今は四壱はんの名前だけで十分やさかい」
それはある意味、私達に興味がないとも取れるよね。アキンドーに勝った時に意味が出来るみたいな……
「アキンドーはこういう奴だ。まずは認めさせないと駄目だからな」
私や紅のイラつきを察したように、兄さんが言ってくる。昔からの付き合いだから、アキンドーがどんな人間なのかが分かってるんだろうけど。
「7の仲間やから、期待はしてますわ。野人の彼もおりますから。今度はこっちがわての推しを紹介するで。宮殿に用があるわけやし、わてらがあっちに行きますで」
アキンドーは宮殿前にいる彼女の方へ足を向ける。彼女は【ユニユニ】の中でコスプレ……というのはおかしいのか、ゴスロリ? 軍服? のようなワンピースを着てるんだけど……
「あ、あの人は地下アイドルなんですかね」
三太は小さな声で、紅に尋ねてたのが聞こえてきたけど、確かにそれ!! そんな雰囲気なんだよね。
「紹介するで。彼女はカナリア。職業は歌姫や。ソロランキングもで八位になっとる冒険者でもある。アキンドー商店のメンバーではないんやが、彼女の歌声に惚れてもうてな、協力する事にしたんや」
「カナリアです。冒険者の千みたいに【ユニユニ】から有名になって、現実の方でも歌手を目指してます。どうぞ、よろしくお願いします。一緒にこのイベントを盛り上げていきましょうね」
カナリアは挨拶しながら、全員に握手をするという売り込みが凄い。特にオタクに見えそうな三太には積極的に握手をしてたような気も……じゃなくて!!
「ランキング四位と八位の組み合わせはヤバいでしょ」
アキンドーが新規の冒険者で勝負をするなら分かるけど、ランキング八位は【ユニユニ】での有名人でしょ。しかも、千城院さんや四壱が綺麗系なら、カナリアは可愛い系というか……
「あの……ランキング八位といっても、ファンのみんなの協力があったから。貴方達も今回のイベントで、私のファンになってくれたら嬉しいです。アキンドーさん、私はファン達のところに挨拶に行きますので」
「ありがとな。一応、顔見せはしときたかったんや」
カナリアは私達の挨拶が終わると、すぐに【転移の翼】を使用して、別の場所に。
「ファン達に挨拶? ……【フレンド】とかじゃなくて? 今回のイベントと関係あるわけ?」
ふとした疑問が口から出てた。
「職業【歌姫】はレア職業でな。ファンは結構重要なんやで。本人もそうやけど、ファンにとってもや。能力、効果が全然違うんやから。歩きながらでも、軽く説明したるわ」
アキンドーは勝負の不利になるかもしれないのに、私達に職業【歌姫】の情報を教えてくれた。