四壱の実力
「これより【戦闘演習】を開始する。先に全員の的を当てた方が勝ちじゃ。的を当てさえすれば、どんな攻撃でも構わん」
四壱と紅がマンの的に笑い崩れてる間に、亀王は開始の合図を送る場所まで移動して、すぐにでも始まりそうな雰囲気になってる。
「ちょっと!! そろそろ始まるから、笑うのはそこまでにしておかないと」
「ふぅ……大丈夫。七兄の前で不甲斐ないところは見せないようにしてるから」
四壱はすぐに気持ちを切り替える事が出来たのも、弓道の集中力のお陰なのかも。
「……私もちゃんとしないと……ぶっ!! 筋肉も笑わせないでよ」
紅も戦闘に集中しようとしたけど、マンはすぐにでも突撃するつもりなのか、クラウチングスタートの構えが紅の笑いを誘ったみたい。股間部分だけじゃなく、お尻にも的があったのが余計にね。
「それでは……戦闘開始じゃ!!」
亀王の戦闘開始の合図と共に、マンは『それでは』の声でお尻を突き出し、『戦闘開始じゃ!!』でスタート。獣人側の方もマン同様に一体が突出していく。数秒後にぶつかり合うのか……といっても、ダメージは入らないわけなんだけど。
「ちょっと……マジ!? こんなにすぐなんて……【アーツ】を使えるわけないし……」
紅は衝撃的な出来事に笑いが止まり、呆然とその光景を見てしまってる。
「三体同時にいけたと思ったけど、あの鳥人がもう一人のB級かな」
四壱は鳥族の獣人達が飛び立つのを狙って、二体同時に撃墜した。それは的四つをこの距離で的中させた事になる。それも【アーツ】を使用するための発動時間もなし。四壱の能力だけで的確な四連射を成功させたわけ。それに加えて、もう一体も撃墜しようとしてたんだから、紅が驚くのも無理はないかも。
「……凄いのは聞いてたわよ。けど、どうやって……」
「どうやって? ……スキル【鷹の目】があったのもあるし、鳥は飛ぶものだよね? 歩いてくるわけじゃないから。飛んだ鳥を堕とすだけ。当てるだけなら、これぐらいの連射は出来るから」
私も【鷹の目】はなくても目が良い方で、二体の鳥人は四壱の矢に為す術もなく撃墜したけど、最後に飛んだ鳥人は反応して、足で矢を蹴り落としたのが見えた。四壱の言う通り、あの鳥人がB級の実力者なのかもしれない。
しかも、四壱が狙ってくると分かれば、鳥一人は的の防御を強化する。そこさえ当たらなければ、距離を詰める事は簡単になってしまう。
鳥人はマンが四壱達から離れた事によって、空中からの突撃を敢行しようとした。マンさえいなかったら、接近すれば勝てると思ったんだろうね。
「それに……相手も考えが甘いかな。他を警戒しなさずきでしょ」
四壱は再度弓を構える。その直後、突風が連続で鳥人に襲い掛かる。ダメージはなくても、徐々に態勢を崩していく。それによって、的の位置が露呈して……四壱はそこに矢を撃ち込む。