トラウマ
「……くそっ!! 獰猛さは獣人以上じゃねえかよ」
ウルフルは地面に叩きつけられるも、すぐに立ち上がった。私に反撃するよりも、距離を取る方を選ぶ。
「まだ倒れないんだ? さっさと死んでおきなさいよ」
的に攻撃されなければダメージを受けないんだから、地面に叩きつけられても意味はないみたい。それに何度も攻撃を与えてるのに、そこまでダメージを受けてる様子がないのは、ウルフルがタフなのか、私の攻撃が弱いのか。周辺の魔物なら、一撃で倒す事も可能なんだけど。
「はぁ……止めだ止め!! 俺様の負けでいい。これ以上に続けるのあれだ……認めてやるから、さっさと回復しろ」
「はっ!? アンタはまだ全然動けそうじゃない!! 私にちゃんと負けなさいよ」
ウルフルは両手を挙げて、降参の言葉を口にした。しかも、私に向けて激怒した顔じゃなく、呆れた顔を向けてる。
「……うむ。勝者はカズハにしておこうか。戦闘も終えたぞ。正気に戻るがよい」
私が勝ちを認めなかったけど、代わりに亀王が戦闘終了させてしまった。
「……正気? 私は至って普通に……あれ!! 全然動かないんだけど」
左足と右肩は痛みを通り越して、全く動かなくなってる。そこまで無茶をしたつもりは……感情的になって、痛みを無視してた?
「戦闘を続けておれば、自爆するのが目に見えておったからな。ウルフルもお主の強さを認めたから、それを止めたのだろうよ。恐らく、何らかのスキルが発動したのではないか?」
「スキル? そんな感じは……もしかして、あの時? 気が遠くなる感じはしたけど」
亀王の問いを考えると、スキルが発動したのは、ウルフルが私の左足に攻撃した時だ。あの痛みが事故を……動かなくなった時の事を思い出して……
「大丈夫か? あっちとは違って、【ユニユニ】では回復可能だが、足はもっと大事にしろ。無茶はするな」
マンはいち早く駆けつけ、ゆっくりと私を横に寝かしてつける。足に大怪我はしてるのは確かなんだけど、現実の方も知ってる言い方のような……口にした事はないと思うんだけど?
「ビックリしたよ。戦意喪失するかと思ったけど、暴走したみたいになるんだから。流石にあんな風になるまではないでしょ?」
四壱もビックリするんだから、余程の事をしたのかも。確かに無性に怒りが込み上げてきたのは確かで……
「そこまで言うんだったら、スキルを確認してみるけど……って、本当に増えてる!?」
「何? さっきのアレはスキルが関係してたわけ?」
「か、回復は僕がするので。あ、暴れないでくださいね」
紅と三太も私を心配したようで、側までやってきた。三太に至っては、すぐに私の左足と右肩の治療を始めてくれた。マンや紅に憧れているけど、三太の根っこは回復系、僧侶で間違いないのかも。
「助かる。私の【ヒール】よりも回復量は多いから。このスキルも回復で消して欲しいぐらいなんだけど……」
とはいえ、三太は【フレンド】になってないから、私の新しい【スキル】は見れないわけなんだけど……
私がウルフルに攻撃された事で覚えたスキルは【トラウマ】だったから。