似たような台詞
「ヒャッハー!! 俺様のスピードについて来れず、この一口で戦意喪失だぜ」
ウルフルは四足をバネのように力を溜めて、真正面から突撃を仕掛けてきた。けど、的に当たる以外の攻撃は無効で、ダメージを受けない。咄嗟に避ける事を踏まえての攻撃の可能性あり。
「怖くて、一歩も動けないか? この大きな口を見ると余計にだろ?」
ウルフルは突撃を急停止して、私の左肩を掴んだ。そして、恐怖を増長するように囁き、的のある右肩に噛みつくつもりだ。的に当たれば、どんな攻撃でも禁止はされてない。
「いや……わざわざ、自分から殴りやすい位置に持ってきてくれた事に驚いただけで」
「はっ……ガフッ!!」
【ナイトメア】を相手にした身としては、ウルフルのスピード、噛みつきに全く恐怖なんて感じないし。むしろ、それだけで怖がると思った事に腹が立つ。
ウルフルの噛みつき攻撃で開いた口を、アッパーをする形で閉じさせる。スキル【カウンター】で威力アップ。的には少しズレたけど、少しでも当たれば問題ないらしい。それに……的に一撃与えても、その的自体は消えてない。
「ブホッ!!」
ウルフルが噛みつこうとした時、腹の部分に的が見えたので、ここは膝蹴りをチョイス。その痛みにウルフルは口を開けるけど、そこにもう一度アッパー。
「ビケッ!!」
的は消えてないんだから、そのダメージはウルフルに通る。怒涛の三連撃に、ウルフルは無意識に二、三歩後退。そこを逃さず、左足の的にローキックを。それも防御が間に合わず、直撃。
「ヒッ!!……見てる方が痛い。よ、容赦が全然ないです」
「当然の結果じゃない? 本当に見た目や職業に騙されたら駄目なのよ。体験者から言わせてもらうと、カズハに関しては、ある意味卑怯でもあるからね」
三太と紅は好き勝手な事を言ってるけど、楽そうに見えて、楽じゃないから。ウルフルに反撃の隙を与えないための連撃で、圧は消失するどころか、むしろ増えてる感じがする。
「ウォーン!!」
ウルフルの【咆哮】。【ナイトメア】がやってきたみたいに獣人にも【アーツ】として所持しているのかも。
【咆哮】は強さによって体を硬直、竦み上がらせる事が可能。私は【ナイトメア】でそれを体験したけど、ウルフルの【咆哮】はほんの僅か時間。次の攻撃を止めるぐらいで終わったけど、ウルフルにとっては十分。
「ちっ!! 何だよ……そんな服装で俺様を騙したのか!! 明らかに僧侶が出来る反応じゃないだろ。ベアードを倒した奴といい、D級で強さを騙すなんてな」
「うわ……私と同じような事を言ってる。自分が聞くと恥ずかしいわ。そうなると似たような展開になるんでしょうね」
「それって……あ、姐さんが負けたって事ですか? ヒッ!!」
三太の質問に紅が睨んだわけじゃなく、ウルフルが二人に睨みを効かせた。
「鶏野郎に苦戦したC級のヤツと一緒にするな!! 本気でやってやる。ギブアップもさせない。死ぬ方が楽だったと思い知らせてやるからな!!」
ウルフルの獣毛が銀色から赤色に。何かのスキルが発動したのかもしれない。
「オラオラオラオラオラオラ!!」
接近からのラッシュ。単に殴ってくるだけなんだけど、手数の速さは紅を上回る。それをひたすらに防御するも、頬や肩、腕の皮膚が僅かながらに切れていくのは威力が高い事が窺える。これにダメージがあったら、ほんの少しの隙が出来て、腹や右肩の的に直撃しててもおかしくない。
その攻撃の波を一旦切るためには【受け流し】で体勢を崩す。攻撃速度があっても、リズムが同じであれば、【受け流し】をする事は出来る。