クルックーは鳥族の中で最弱
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「新顔の冒険者じゃな。よくぞ来てくれた。かの戦士達も喜んでおるぞ」
宮殿内から裏側に通じる道があり、そこを抜けると巨大な湖が広がっていた。それは宮殿よりも広く、この湖が近くにあるからこそ、【サファリ】が獣人の国の中心地と呼ばれてるのかもしれない。
この暑いサバンナ地帯に巨大な湖があるのは癒し以外の何物でもないでしょ。それは獣人でも同じだと思う。亀であれば余計にね。
亀王も私達が来た事に喜んでいたけど、気絶させた三太の事は覚えてなさそう……というか、あれは寝てたからね。
それに亀王がここまで移動してきたのも、ジェットになったわけじゃなく、ライオンの獣人が普通に運んできたみたい。丁度、亀王を湖に浮かそうとしてる時だったから。ちょっと残念な気持ちはあるけど……紅も亀王を見て、溜め息を吐いてるし、三太に至ってはマンを鉄壁の盾のようにして、顔だけ出してる始末。
「それは良かったです。僕達の力に見合った者達を準備するという話を聞きましたが?」
四壱が亀王に尋ねた。対戦者らしき相手の姿はあるんだけど、明らかにあっちの方が人数が多いような……あの中から亀王が選ぶ形? それとも私達が指名するわけ?
「そうじゃな。お主達は……C級が三人、D級が二人。それと同等にすればと思っていたんじゃが、そこの男にベアードが倒されたと聞いてのぅ」
集まってる獣人の中に熊の獣人ベアードの姿がある。もしかしたら、マンにリベンジするために参戦するつもりなのかも。
「私も鶏の獣人を倒したんだけど!?」
「そなたが倒したのはクルックーと聞いたが、奴は鳥族の中で最弱……とまではいかぬが、冒険者でいうのであればD級レベル。ベアードはB級じゃ」
「鶏がD級……苦戦したんだけど……」
紅はクルックーがD級だと言われて、地味にショックを受けてるみたい。初対決だけじゃなく、空を飛ぶ相手に苦戦はするでしょ。
「ベアードを倒した男をD級ではなく、B級以上の冒険者と判断し、ベアードを含め、B級の実力を持った獣人を五人用意したぞ。他にもC級やD級も五人ずつじゃ」
獣人達は計十五人。マンの力を考慮して、B級の実力を持った獣人を五人用意するなんて、マンの力を考えると当然なのかも。
「その男の力のため、B級全員を仕向ける事も考えたのじゃが……他の者達が支援職と後衛職となれば、その者達を守るため、本来の力は出せんじゃろ? ならば、ベアード以外はC級の実力を持った者達に」
亀王は私、三太、四壱が支援、後衛職というだけで、マンのハンデになると思ったみたい。
「全員で。僕達はそちらのBからD級までの獣人達全員を相手にするから。それでも僕達の方が上だと思うけど?」
四壱は笑顔ながらも、亀王の発言を遮って、集まっている獣人達全員を相手にすると口にした。
「後衛職……弓士の力を馬鹿にした感じが許せないのよね。カズハもそうでしょ? 職業とか、見た目で決められるのは嫌だよね?」
「ぜ、全員ですか!?」
三太は四壱の発言にビックリしているけど
「だね。私も四壱が言った、全員相手にするのに賛成。職業や見た目で実力を判断するんじゃない事を、教えてあげるから」
こうなったら、実力の差を見せつけて、職業関係なしに、獣人達と普通に勝負出来る事を認めさせてあげる。