丁度良い高さにある
「気絶したにしては、目覚めるのが遅くない? 戦闘じゃないから、すぐに回復すると思ったんだけど……寝落ちした?」
マンもヒューマ城の牢屋に捕まってる際、寝てた事があるからね。あの時もマンは強制ログアウトにはなってなかったと思うんだけど……
「寝落ち!? こんな大事な時に気絶しただけじゃなく、そのまま寝落ちは駄目だから。ここは無理にでも起こしてるんだから」
「ちょっ……双剣を取り出して、どうするわけ?」
紅は双剣の片方を手に取った。目を覚ますために攻撃するにしても、軽く叩くぐらいで十分だと思うんだけど?
「マンにおんぶされて、丁度良い高さに三太の尻があるのよ。そこに突き刺して、穴を開けてみるのもありかな? って」
「いやいや!! お尻には最初から穴が開いてるから。二つに割くのもなし。折角の武器が汚れるだけだからね。それをやるなら、指でカンチョーぐらいにしとかないと、四壱にスパルタとか言われるよ」
確かにマンが三太を背負った状態は、良い高さにお尻がある。けど、そこに双剣を刺すのは……紅相手なら、三太も喜ぶ……事は流石にね。
四壱もこの場から離れて、受付の方に行ってる。時間もそこまでないから、良いクエストを探してくれてるのかも。
「じょ、冗談だから。指で刺すのは私自身嫌だし、それをやるとしたら、男同士でしょ。三太を寝転したら問題ないわけだし」
「カンチョーだと!! 聞いた事はあるが、それもやった事がないぞ。それをやれば目覚めるものなのか?」
カンチョーなんて子供時代にやってそうな感じなのに、そこもマンは未体験みたいで、乗り気になってる。三太もマンに刺されたりしたら、双剣以上のダメージで……カンチョーによる死亡なんて事も……
「私から言っておいてなんだけど、大人になってまではカンチョーするのは……」
「こ、ここは……し、師匠の背中に!! 悪寒を感じた気がして……何で残念そうな顔をしてるんです?」
「そ、そうか? ここは【サファリ】のギルド本部の中だ。空調が効いてるせいか、寒く感じたのかもしれないぞ」
マンはさっきの会話がなかったように振る舞ってるけど、言葉のトーンが少し下がり気味になってる。三太でも分かるぐらいに残念そうな顔もしてるから。
三太は三太で、お尻を守るように手で防いでいたから、実は途中で目を覚ましていたかも。それが何処からなのかは考えないようにしておくかな。
「彼も目覚めた感じかな? 丁度良いクエストがあったから、僕が引き受けてきたよ。人数が多い方が早く終わると思うしね」
四壱が先にクエストを選んだという事は、このクエストだけでも一緒のパーティーになるわけだ。私、マン、紅、三太を加えたら、丁度五人になるわけだし。
「四壱とパーティーを組むわけね。引き受けたクエストは……大丈夫か。これ以上は達成報告もしておかないと駄目だわ」
一人が同時に受ける事が可能なクエストは五つ。それ以上になるとクエストを達成するか、破棄するしかない。今のところはヒューマ国で受けたのと、関所で三太とパーティーを組むためのクエストぐらい?
「獣人の国の臨時ギルドで引き受けたクエストなら、本部であるここでも報告出来るから。ヒューマ国だったら、話は別だけど」
私は関所の臨時ギルドで達成したクエストを報告するのと、四壱のパーティーに入るために受付へ。
「【フレンド】の頼みなら仕方ないわね。今回は四壱のパーティーに入ってあげるわ。三太も入りなさいよ」
「は、はい!!」
「どんなクエストを選んでくれたのか、楽しみだ」
その後に紅、三太、マンが後ろからついて来た。