好きな相手がいます
「勿論だ。さっきも言ったが、この姿は気にいってるからね。それで……四壱のパートナーの姿はないようだが? 勝負するとはいえ、挨拶ぐらいはしておきたい」
マンは勝負するはずの四壱を敵視した目で見てないんだよね。その言葉の感じからして、兄さんに対しても一緒だと思う。ヒューイの時も敵視まではいってなかったから。
「七兄……じゃなくて、7は知り合いと話があるみたいで、先に【ログアウト】しましたね。でも、大型イベントの登録は終わってて、後は場所と時間を決めるだけなんですよ。土日だったら、後の事はカズハ達に任せるらしいです。僕も部活を休むから、どの時間でも構わないけど」
「はぁ……兄さんは名前も変えてるわけね。【ユニユニ】の中で会いたくなくなってきたんだけど……四壱に部活を休ませるのも……」
四壱が何度も部活を休んだら、またしても弓道部の子達が私に突撃を仕掛けてきそうだし。
「残念だ。カズハの兄に会うのはイベント時か……勝負とはいえ、それも楽しみの一つだな」
「いやいや……四壱は友好的だから良いけど、兄さんの場合は敵意バリバリだから。けど、勝負が終われば……」
兄さんは私とマンが一緒に冒険するのを嫌がってたから。それを続けるには勝負に勝つしかないんだけど、もれなく兄さんとも仲良くなれるような気が……
「だね。勝負に勝てば認めて貰える……というか、七兄が好きなタイプじゃないかな? 好きと言っても、恋愛は関係ないからね!!」
四壱もマンと兄さんの相性が良いと思ったみたい。兄さんも大概馬鹿げた事が好きなタイプだったから。けど、流石にマンも兄さんが恋愛感情を持つとは思わないでしょ。
「へぇ〜……もしかして、四壱はカズハの兄貴の事が好きだったりするわけ?」
「そうだけど? 別に隠す必要もないからね」
四壱がそんな発言をする以上、紅が察してもおかしくない……というか、普通に答えてるからね。
「そ、そこは聞かなかった事にしてあげる。【ユニユニ】の中では、ふ、【フレンド】だから。ファン達には内緒してあげとくわ」
紅はそう言って、四壱に【フレンド】申請をしたみたい。それで断られたら……
「勿論、OKだから。けど、私に好きな人がいる事は公言してるから。そこは知られても大丈夫なんだけど、七兄……7はそれに気付いてないから、そっちの方を内緒にして欲しいかな」
四壱にファンがいる以上、告白された事は何度もある。その時、四壱は好きな相手がいる事は伝えてるんだよね。勿論、誰なのかは内緒にはしていて、紅が私以外で唯一知ったんじゃないかな?
「四壱に好かれるなんて、ファンからしたら羨ましいでしょうね。というか、好意に気付いてないのは、カズハの兄貴は鈍感なわけ?」
「それは否定出来ないかも……でも、幼馴染だとなかなかね。四壱をパートナーに誘った以上、何かあると思いたいけど」
兄さんが鈍感扱いされるのも仕方ないかな。でも、長い付き合いだと余計に……ここは兄さんを庇っておかないと……
「僕の方は一旦区切ってもらって、カズハ達をギルドに案内するよ。イベントに参加申し込みしないと駄目だから。 カズハ達のメンバーは全員集まったよね?」
全員……誰かを忘れてるような……