紅はチョロ助なり
「うわ……カズハが誰かといると筋肉が言ってたけど、四壱と一緒にいるって事は、前哨戦は負けたわけ?」
四壱が【鷹の目】を使ったように、マンもそのスキルで私が四壱といるのを発見みたい。紅はその誰かが気になって、マンと三太を置いて、先に来たようだけど……
「まぁ……そうなるかな。でも、前哨戦だから罰ゲームみたいなのはないから安心しなよ」
今回の前哨戦が無くなった事を紅達には言ってなかったけど、負けていたのは確かだしね。四壱は私の方を見てくるけど、それは察してくれるとありがたいかな。
「貴女がカズハのメールに書いてあった紅さんですよね? はじめまして……じゃないのかな? 間違ってたらごめんなんだけど、一緒の大学の百瀬さん?」
「えっ!? 私の事を知ってる!? 何で?……えっ!? ……そうだけど」
紅はキッ!! と私に視線を送ってきたけど、頭を横に振った。
紅が混乱するのも分かるけど、四壱に紅=百瀬だと話をした事はないからね。もしかしたら、大学の食堂で私と紅が揉めてた事を誰かから聞いたとか?
「何で四壱は百……紅の事を知ってるわけ? 逆なのは分かるけど」
紅が四壱の事を知ってるのは、千城院さんに続き、有名だから。弓道の大会でも常連なのもあるし。けど、百瀬は有名じゃないから。有名だったら、私が紅と会った時に気づいてもおかしくないわけで……
「それは百……ここだと紅の方がいいかな。僕が弓道部の朝練に出てる時、校舎裏で黙々と一人でダンスの練習をしてたでしょ。その姿が格好良くて……僕やカズハと似た感じもしてさ。名前は誰かが呼んだのを、偶然聞いたぐらいなんだけど」
「えっ……あっ……うっ……そんな台詞を言うのは卑怯でしょ」
四壱の言葉に紅の顔は真っ赤になり、それを隠すようにそっぽを向いた。恥ずかしいのもあるけど、褒められたような……その努力を認められた感じがして、嬉しい気持ちになってるでしょ。
「だ、だからって、千様のファンである以上、【ユニユニ】でも地位を脅かす相手と仲良くするつもりは……」
紅は千城院さんのファンとして、四壱の褒め言葉に屈せず、宣戦布告というか……敵であると言うつもりなのかと思ったけど、途中で言葉を詰まらせた。
「もしかしてなんだけど……性別を男にしたわけ?」
「そうだけど……何も問題ないと思うんだけど?」
【ユニユニ】で四壱が男性キャラを選んだ事に、紅も気付いたみたいなんだけど……そこまで驚く? 人の事は言えないけど……
「お、男キャラだと人気も違ってくるし、【ユニユニ】内だったら、仲良くしても問題ないかも」
「えっ!? そういうものなの」
男キャラは簡単な理由になるだけで、紅は四壱から褒められた事が嬉しくて、心を開いたでしょ。私や三太にもそんな感じはするし、キツめ性格みたいで、案外チョロいんだから。
「おっ? 私が到着するまでの間に、紅は毛嫌いしていた相手と仲良くなったのか?」
「ちょっと!!」
マンは遅れて到着すると、紅にとっての爆弾をいきなり放り投げた。