獣人の国は過酷です
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「多分、あれが【サファリ】だ。ゴール目の前だぞ。もう一踏ん張りだ」
獣人の国の関所から【ユニユニ】の時間で三時間程で、宮殿らしき建物がうっすらと見えてきた。多分、そこが獣人の国の中心地である【サファリ】だと思う。【フォース】との距離を考えると半分の時間だから、結構近い場所にあったわけなんだけど……辛さでいえば、こっちの方が圧倒的だから。
「はぁ……はぁ……マンは何でそんなに元気なのよ。パンツしか履いてないからなのは分かるけど、それでもよ」
「本当にそれね。暑さ対策を舐めてたわ。これは装備も変えないと、体力の減りが半端ない。他の冒険者達も薄着になってたのも納得だわ」
「はぁ……はぁ……み、水が欲しいです」
獣人の国の関所から歩く事三十分程ぐらいかな。本格的に獣人の国に入った事を知らせるようなサバンナ地帯に突入。
木々はほんの僅かしかないんだけど、私の腰ぐらいの高さがある稲のような草が並び、風景としては全然悪くなかったんだけど……蒸し暑さが半端ない。真夏以上の暑さ? エアコンとか扇風機に慣れてたら、この暑さは本当にヤバい。ヤバい上に装備による暑さも半端ない。
私と三太が着る赤と青の修道服も生地としては厚く、紅は白のTシャツとデニムパンツだけど、ヘトヘトの状態。
マンに関してはパンツ一丁だから、こんな時は羨ましいとは思う。けど、流石にそんな姿になる勇気はないから。
私達以外にも獣人の国を移動してる冒険者を何人か見かけたけど、全員が薄着になってた。紅も同じはずなんだけど、暑さ対策のアクセサリーが存在する?
『暑いなら、パンツ姿になれば……』とマンはセクハラ発言しそうになったけど、最後までは言わせなかったけど。
「水はないが、【渋々茶】ならあるぞ」
「そ、それはちょっと……師匠から貰えたとしても……」
サバンナ地帯の暑さに飲み物の減りは早く、【ゴーラ】の美味しさは半端なかったんだけど、【渋々茶】は一口飲んだだけで、あまりの渋さに余計水が欲しくなるという……こんな場所で飲む物じゃなかった。
「最悪兄さんや四壱に暑さ対策を聞いておかないと、イベントは全然動けないわ。戦闘もあまり出来なかったし……」
戦闘中も暑さは消えるわけがないし、動く分、余計に暑くなる。暑さ対策の【濡れタオル】は一回の戦闘直後に使ったけど、すぐに【汗まみれタオル】に姿を変えたから。洗って、氷魔法のや水魔法で冷やせば、【濡れタオル】には戻るみたいだけど……そんな【アーツ】は持ち合わせてないから。
「敵である四壱に聞いてどうするのよ。……聞かないとやってられないのは確かだけど……少ない戦闘でも、三太の本来の使い方が分かったから、それだけが収穫だわ」
「師匠や姐さんのお役に立てるのは嬉しいんですけど……僕としては姐さんから貰った【ヘビーメイス】を使いたかったです」
「それは筋肉の言った通り、【パワーリスト】に慣れてからでいいから。それを持ちながら【アーツ】を使えなかったんだから」
【サファリ】に向けて出発する前、臨時ギルドでマンも紅と三太のパーティーに加わると言うから、私も渋々参加。効率を考えるとこっちの方が良いのは確かだったし、そのお陰で【フレンド】になった事で表示される冒険者の情報以外の事も分かったから。