紅は逆ハンデ扱いである
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「はぁ……少しは予想してたけど、こんなところで時間は潰したくなかったのに」
「これは仕方ないな。大型イベントに参加する冒険者はこぞって獣人の国へ向かうわけだからな。そのお陰……というべきか、関所までの間にオークどころか、魔物と遭遇する事はなかったわけだ」
「この行列で時間をロスしたら一緒なんだけど……あっちはエルフの国からだから、こっちよりは大分マシなんだろうなぁ」
【フォース】の街を出て、ヒューマ国と獣人の国の関所に着くまで、直行で六時間。途中で【ドライ】の街に寄らなかったのは兄さん達との前哨戦もあったけど、冒険者達が獣人の国に向かうのが、目に見えて分かる状態だったからね。関所が行列になってるのが全然予想出来たわけよ。
その通りで、関所には大人数の冒険者達が。数人の役人達が並び、冒険者達の許可書を確認した後、獣人の国の関所に進ませている。国々で関所は別々の形みたい。場所もサバンナ地帯になってないしね。
関所の大きさは【フォース】の入口、城壁と同じぐらい。役人の詰所がある以外は何もなし。けど、ヒューマ国と獣人の国の関所の中間地点に、屋台みたいなのが少しだけど見えてる。
「関所を通らなくても、獣人の国に行く方法はありそうなんだがな」
関所がある国境付近には壁が築きあげられてるけど、全体に広がってるわけじゃない。平地はそうだけど、山々になると無くなってるかも。
「許可書が必要って事は、何かあるんじゃないの? 魔物が強すぎるとか、途中で道が無くなってるとかさ。他の時なら、確認しに行くのもありだけど」
関所に向かわず、別ルートを試す冒険者の姿もいたけど、大型イベントじゃなく、別クエストの可能性だってあるからね。
「はぁ……はぁ……いい加減置いていくのは止めてよね。追いつくのも一苦労なんだから」
紅は息を切らせて、私とマンに追いついてきた。
「関所に並ぶのは待ってたんだから、それで許してよね。戦闘に乱入も出来ないわけなんだし」
結局、紅は獣人の国にある【サファリ】まで一緒について来る事に。この事は四壱にもメールをしたんだけど、すぐにOKの返事が返ってきた。それも紅がハンデ扱いで、私達の方が不利になる心配をしてたぐらいなのは紅には内緒。
本当は【フォース】で紅のペアになってくれる冒険者を探すのもありだったけど、それこそ時間が勿体なかったし、紅とパーティーを組まずに来たから、紅一人で戦闘するはめに。私とマンが戦闘しなかったのも、紅ばかりエンカウント扱いになったからでもあるから……
「何で私ばかり狙ってくるのよ。……手に入った素材はやらないからね」
「流石にそれを欲しいとまでは言わないから。紅もここで少し休めばいいよ。良さそうな冒険者がいるかも、見る事が出来るんじゃないの?」
行列に並んでる間でも他の冒険者を見る事は出来るからね。ソロの冒険者がいたら、声を掛けてみるのもありかも。
「ここで声を掛けるわけ!? 筋肉のせいで注目されてるのが余計に嫌なんだけど」
マンの姿はやっぱり注目されるんだよね。チラチラとこっちを見てくる冒険者がいるから。紅もマンの仲間の内の一人と思われてるだろうね。