マンはプロレスラーではない?
「おおっ!! 夏に先駆けてのイベントじゃないの!? ランキングじゃなくて、目立った冒険者から水着モデルを選ぶのも【ユニユニ】らしいかも」
ドレス姿に続いて、水着の千城院さんが見れるんじゃないの? それに悪目立ちになるかもしれないけど、マンだって……水着もパンツ一枚も変わらないから!!
「このイベントで勝負って事は、ポイントがどれだけ取れるかだよね。場所や日によって、敵が変化するのも考えないと駄目なところなんだけど……」
ポイント勝負なら、低いポイントを大量に稼ぐか、高いポイントの強い敵を倒すかで戦略が変わってくる。兄さんや四壱だったら、それを選ぶところから勝負だと言ってきそうだからね。
「それよりも獣人の国!? しかも、ギルド本部に行かないと話にならないじゃないの。開催日が二十五日だと……後二日しかないし」
今日からじゃなくて、本当に良かった。とはいえ、今からでも間に合うのかギリギリな気がする。それは許可書を手に入れたばかりの、兄さんと四壱も同じ状態だと思うんだけど。
「今日はC級を目指すよりも、獣人の国に向かった方向が絶対良いでしょ。獣人の国でクエストの一つをクリアしないと駄目なわけだから。次に行くとしたら、獣人の国だったから、丁度良いといえば、丁度良いかもしれないけど……」
【クイーン】戦後、大学で百瀬もとい、紅と話をした時に獣人の国の話が出たんだよね。前衛職、近接系の職業は獣人の国に行った方が良いと、紅の父親であるブラックが言ってたみたい。
もしくは、ドワーフの国。ドワーフの国の魔物は硬く、【アーツ】頼りになる事が多いらしく、それを通常の攻撃で倒せるように挑戦するのもありだって……
紅は私をライバル視してるはずなんだけど、成長するためのアドバイスをしてくれた。とはいえ、私の職業は僧侶なんだけどさ……
「すぐにでも出発したいところだけど、今日は来るのかな?」
マンが【ログイン】してない状態。結局、昨日も来なかったのは【タイガーホール】の興行で忙しかったのかも。今日も用事があってもおかしくないわけで……
「待たせた!! 昨日も来れなかったばかりか、今日も遅れるなんて……本当にすまない」
そんな事を思ってたら、マンが【ログイン】してきた。【サバイバル】の効果で、前回の【ログアウト】の場所から始める事が出来るんだけど、今回は私と同じ【フォース】の入口前を選んだみたい。
「別に怒ってないから。誰にでも用事があってもおかしくないわけだし。プロレスに行ってたとか……」
少しカマをかけてみる。そこで何か反応があれば、【タイガーホール】のプロレスラーの可能性が……
「そうなんだ。熱い試合が目白押し……って!? 何故それを……やっぱり……いや、何でもない」
「マンはプロレス技を使うのが多いから、そう思っただけ。こっちも気にしないでいいからね」
マンの驚き具合から、千城院さんのお兄様の可能性はない? 私と紅にチケットを渡したのはお兄様のわけだからね。
それに……マンはプロレスラーじゃなくて、プロレス好きなだけかもしれない。言葉からして、観客側のような感じなのは気のせい?
マンもそれ以上は詮索されたくないみたいだから、ここで止めておかないと……
「そんな事よりも、まずは【救出作戦】の報酬である許可書を渡しておくから」
ヒューマ王に謁見した時、マンの許可書も一緒に手に入れておいたから。
「ヒューイとモモも無事だったから。けど、【クイーン】討伐のため、旅立つ事になったから。【フォース】の街にはもういないから」
マンには昨日の出来事を簡単に説明した。ヒューイとモモが旅立つ理由や、【闘技場】で【シルバー】級をクリアした事とか色々ね。