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似た者兄妹


「はぁ〜……疲れた。ここまで心配されるとは全然思わなかったよ。顧問は僕が部を辞めるかなんてハラハラしてたみたいだしね」


「それは当然でしょ。弓道部の人達に何の連絡も入れてなかったんだから。私に聞いて来たぐらいだしね。本当の理由を知ったら、あっちもビックリすると思うけど」


 弓道部メンバー以外の四壱ファン達もソワソワしてたと思う。私も千城院さんが大学に全く来なくなったら……なんて思うとね。チラチラとこっちを見てくる女子達がいるのがその証拠だから。


「弓道部メンバーには悪いけど、僕の優先順位は七兄が一番上だからね。勿論、部が嫌なわけじゃないんだけどさ」


 いつもと同じ、大学の昼休み前の食堂。千城院を眺める事が出来る定位置にいたら、四壱が声を掛けてきた。


 四壱は朝にでも家へ突撃訪問してくると思ったけど、弓道部の朝練があったらしくて、兄さんとの話を聞くのはこの時間になったんだよね。


「そこは相変わらずなんだよね。しかも、今回はサプライズだからって、四壱の方が先に色々知ってたのはビックリだよ。【ユニユニ】を始めたよりも、会社を辞めた方がサプライズだったけどさ」


「あんなブラック会社は辞めて正解でしょ。一葉よりも先に教えてもらったのはビックリしたし、嬉しかった反面、ゲーム仲間と思われてる感じが……ね」


「まぁ……兄さんは鈍感なのもあるし、四壱とも長い付き合いだから」


 実際、四壱が兄さんの誘いに乗ったのも、ゲームをやりたいだけと勘違いしてるぐらいだから。


「それも【ユニユニ】で打開出来たら嬉しいんだけど……一葉はどうするの? 七兄が『一葉を変態から切り離す』とか言ってたけど?」


「断った。目標は変わってないけど、今のメンバーでも普通に楽しいから。パートナーがあれだから、何時何が起きるか分からないからね」


 勿論、目標は千城院さんのパーティーに入る事なのは変わらないけど、マンと一緒に行動してる分、何が起きるか分からないから、飽きる事が全然ないかも。


「そんな気はしてた。楽しそうに【ユニユニ】の話をしてたからね。僕として一葉と七兄、それと変態……じゃなくて、マンだったよね? その四人でパーティーを組むのもありだと思ったんだけど」


「マンは反対しないとは思うけど……私が余計な事を言ったせいもあるし、無理かな。そのせいで四壱も巻き込む形になってしまったんだよね」


「……どういう事? 七兄と争うんだったら、僕は協力出来ないからね」


「いや……四壱が敵対するのは兄さんじゃなくて、私の方だから」


 昨日の会話の顛末を斯々然々(かくかくしかじか)と簡単に説明した。


「なるほどね。七兄はゲームに関してだけは負けず嫌いなところがあるから。一葉もそういう所があるでしょ」


「そこは否定しないかな。面倒臭いと思うけど、勝負をしてみたい気持ちがないわけじゃないから。二人の凄さを実際に体験した事がないから」


 すぐにC級に昇級するぐらいだから、兄さんや四壱のゲームの腕は衰えてないはず。更には言うなら、私の空手同様、四壱の弓の腕前も反映されててもおかしくないから、どんな勝負になるかで楽しみな部分がある。


「僕自身も一葉と勝負するのは楽しみかも。言っておくけど、勝負となれば本気で行くから」


「それは当然でしょ。手を抜いた方が怒るから。でも、マンが勝負を受け入れたらの話なんだけど」


 ヒューイの時と似た感じだから、マンも引き受けてくれるはず……だよね?


「おっ……チャイムが鳴ったという事は、一葉の目当ての人がそろそろ来るでしょ」


「そうではあるんだけど……」


 四壱は私に気遣うように、話の腰を折ってくれたみたいなんだけど……今回、千城院さんを見るのは違った意味でドキドキするから。話し掛けて貰えるという期待感がないわけでもないし……


「来た来た……って、こっち側を見てるんじゃないの?」


 千城院さんが食堂に入ってくるなり、私と四壱がいる場所を見ている気がする。一瞬、目が合ったせいで、思わず下を向いてしまったから…… 


「僕達のところに来るつもり……じゃないみたいだよ。二、三歩進んで、振り返ってしまったかな。一体、何だったんだろう? 一葉は何か知ってるわけ?」


「知ってるような、知らないような……後で説明するよ」


 千城院さんの知り合い含め、ファンは大勢いるわけで、お兄様が誰と話したのか判断するのは難しいはず。私や百瀬がそれに含まれてるかも疑問だしね。


 あの時の事は……私の千城院さんに対する印象が強いだけだから……


「淡い期待はせず、自力で仲良くするしかないんだよね」

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