兄は負けず嫌い
「だから、俺は反対したんだ。そういう奴は何をするか分からないからな。こっちが痛い目をみるわけだ」
兄さんは何故かマンを毛嫌いしてるみたい。見た目はアレだけど、マンは真面目な奴……ではないよね? 良い奴ではあるけど、全裸やパンツ一枚の事を考えると、ちょっと……
「というわけでだ。変態と冒険するのは辞めて、俺が千城院さんのパーティーになれるまで冒険しないか?」
「えっ!? 私が兄さんと……」
マンとパーティーを別れさせる気満々過ぎるでしょ。兄さんがゲームが得意なのは知ってるし、数日でC級まで行く実力があるのも分かる。昇級しやすく、千城院さんのパーティーへの近道になる可能性はあるかもしれないけど……
「嫌かな」
「な、何だと!?」
兄さんは断れると思ってなかったみたいで、フリーズしてしまってる。元に戻るまで、お寿司を楽しんでおこうかな。サーモン、サーモン、サーモン……女子はサーモン好き。兄さんの分も食べておこうかな?
「理由!! 理由は何だ!? 兄弟でするのが恥ずかしいなんて事は……」
「ないと言えば、嘘になるんだけど」
私は今年で二十歳だし、兄さんは二十五歳。大人になっても兄妹一緒にゲームするのは少しだけ……絶対嫌ってわけじゃないから。
「私と兄さんの目的は違うし、兄さんは兄さんで楽しんでよ。私も好きにしてるわけだしね」
それに!! 私よりも先に誘う相手がいるでしょ!!一緒にプレイしてた相手がさ。
「兄としては心配なんだが……四壱も一緒にいるぞ。プレイ時間の差を埋めるためには、やり慣れたパートナーがいた方が良かったからな」
「そうなの!? 四壱が大学を休んだ理由も納得だわ。兄さんの頼みを断るわけないし、喜んでたんじゃない?」
「そうだな。カズハに影響を受けて、久し振りにゲームをやりたかったのかもしれないな」
そこで四壱の好意に気付くわけがないんだよね。それも長い付き合いのせいもあるかもしれないけど……
ともあれ、四壱が兄さんのせいで犯罪を冒してなくて良かった。自然豊かな場所というのも【ユニユニ】のエルフの国だったのかも。エルフの国は自然豊かなイメージがあるから。
「でしょ。四壱と【ユニユニ】をやりたくないわけじゃないけど、ゲーム以外で一緒にいる事が結構あるから、たまに程度でいいかな」
四壱は私が一緒にいても文句は言わないかもしれないけど、人の恋路を邪魔したくないでしょ。
それに二人は他のゲームで有名だった事もあって、復活したら注目されそうで嫌なんだよね。好きに行動出来ないような気もするし……マンの場合、マン自身が自由だから、文句は言われた事なんて一度もないかも。
「それに意外と思うけど、マンは結構凄いからね。【ユニユニ】のランカーにライバル視されてるし、兄さんや四壱よりも上手いんじゃないかな? 私にとってはためになる面もあるから」
マンは災厄の獣相手に善戦したのも大きいでしょ。【ユニユニ】だったら、兄さん達に勝ってもおかしくないはず。
「……ちょっと待った。それは聞き捨てならないぞ。プレイ時間の差はあるが、変態よりも下手くそというのは納得出来ないぞ」
忘れてた!! 兄さんはゲームに関しては負けず嫌いだった。マンの方が上手と言ったのが琴線に触れたっぽい。
「それなら、勝負しようじゃないか。俺と四壱VSカズハと変態だ。俺達に勝利にすれば、変態と一緒に旅をする事に文句を言わない。だが、負けた場合は俺と四壱のパーティーに入ってもらうぞ」
「勝負!? しかも、二対二なんて……【闘技場】でもないんだから。【模擬戦】をするつもりもないし」
【模擬戦】は結構なGを取られるからね。勝負の機会なんてなかなか……前みたいに【ゴミ拾い】をするのもちょっと……
「そこは安心していいぞ。近々、大型イベントがあるから、それを利用すればいい」
兄さんが勝手に決めてしまったけど、マンにそれを言っておかないと。ブラック、ヒューイに続いて、兄さんがマンのライバルみたいになるんだけど……じゃなくて!! 大型イベントというネタバレを受けたでしょ!!