【ユニユニ】始めました
「少しはゆっくり休んで、ゲームを楽しめば良かったのに。家に帰って来なかったのも、新しい仕事を見つけるためだったんだ?」
新しい仕事を探して、決めるためなら仕方ないかな。結局、兄さんに彼女が出来たわけでもなかったわけだし……四壱が大学に来なかったのも、兄さんは関係なかったのかも。
「違うぞ。新しい仕事は辞める前に決めていたからな。ゲーム雑誌の仕事だ。昔の知り合いに誘われてな。条件として、あるゲームを攻略する事になった。勿論、ちゃんとした仕事もあるぞ」
「ああ……なるほどね。生き生きした顔になってたのは、そのゲームをやってたからでしょ。仕事も兄さんの好きそうな事ではあるし……ちょっと待って!! この時期に攻略するゲームっていったら……」
「ふっふっふっ……その通りだ。俺も【ユニユニ】を始めたぞ!! これが俺なりのサプライズだ」
兄さんが【ユニユニ】をやりたいと言ってたけど、仕事を辞めた事の方が断然サプライズにもなってるんだけど……嬉しいかと言われたら、微妙でもあるし……
「【ユニユニ】の攻略はイベント等の事前情報なしにしてもらった。純粋に楽しみたい面もあるからな。種族はエルフと決められたのと、今回限りの先取り情報は仕方なかったが」
「先取り情報!? そういえば……今日は【ユニユニ】にメンテナンスがあるから【ログイン】するのは無理だったんだよね。それが関係してるんだ」
ヒューイとモモの二人と別れた直後ぐらいに案内人の斉藤さんからメールが届いたんだけど、それがメンテナンスのお知らせだった。
大型アップグレードのために朝の三時から次の日掛かるみたい。期間限定コラボ商品は軽く説明があったけど、他にも何かあるって事? もしかして……斉藤さんの情報の出し忘れとか、嫌がらせじゃないでしょうね。
斉藤さんからメールが届いた時、文句の一つでも返信するか悩んだぐらいだから。
「まぁ……早急に違う国へ行けるまでは進めてくれと言われたからな。許可書を手に入れて、今はC級になったところだ」
「エルフの国も解放されて、【災厄の獣】が二体登場したんだから、新しい国に行く事が出来るようになるのかも。そのためには許可書が必要……って、C級!? 私はまだD級なんだけど!!」
C級になるための条件で残ってるのは【D休憩討伐クエストを五つクリアする】だけ。【闘技場で五勝する】はヒューイの協力で【シルバー】級クリアまで辿り着けたから。新しい【アーツ】として【ターンアンデッド】も覚えたし、【コング神殿】でダンジョンの走破もすでに終わってたのに……
「兄さんがゲームが上手いのは知ってたけど、ほんの数日で先を越されるもんなわけ?」
千城院さんのパーティーになるため、早く昇級するべきとは思うんだけど、色んなゴタゴタに巻き込まれてしまうから。けど、真っ直ぐ進むよりも、そっちの方が楽しい部分があるのも確かなんだよね。
「カズハはD級なのか!? それは……変態と一緒に冒険を続けてるからじゃないのか?」
「変態……そういえば、マンの事を話した事があったんだつた!? 別にマンのせいじゃ……ないとも言い切れない?」
マンだけのせいじゃないのは分かってるんだけど、イベントの発端はマンのような……
ブラックがマンをライバルと思ってたから、紅と出会う事になった気もするし、【闘技場】でマンから【赤レッドマスク】を受け取らなかった、ヒューイやモモと対面する事もなかったわけで……