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兄、帰宅する


「ふぅ……ついにこの日が来てしまった。今日だけは千城院さんを見るのを止めたぐらいだし」


 水曜日。兄さんが家に戻ってくる日だ。四壱も同じ日のはずだったけど、大学には来てなかったから……色んな意味でドキドキしてる。


 千城院さんに関しては、昨日のお兄様の件があるから。その事で千城院さん本人に声を掛けられたら……なんて考えると、二つのイベントを同時に進行するのは無理だと思ったんだよね。


「……鍵が開いてる」


 手紙の通り、ちゃんと家に戻ってるみたい。ドアを開けてみて、最初に確認しないと駄目なのは靴。


 兄さんの靴だけなら問題なし。四壱の靴があるのも怖いけど、全く知らない女性の靴があった時は、どんな反応をしたらいいのやら……


「ふぅ……良かった。兄さんの靴だけだ」


 それだけで一安心。四壱もいないし、彼女?的存在もいないみたい。


「帰ってきたみたいだな、我が妹よ。留守にして迷惑をかけた。その代わりなんだが、今日は寿司を買ってきたぞ」


 ドアが開く音で、私が帰ってきたのが分かったみたい。


「サプライズがお寿司……なんて事はないよね。今まで一体何を……」


 ダイニングから兄さんの声が聞こえてきたから、まずは文句の一つでも言ってやろうと思ったんだけど……


「ん? どうしたんだ? 変な顔になってるぞ」


「誰? ……じゃなくて!! 別人みたいに元気になってるよね!? 社会人になる前の兄さんに戻ったというか……」


 兄さんが就職してからは、大体がくたびれた姿で、死んだような目をしてて……休みの日はゲームよりも睡眠。元気な姿なんて全く見れてなかったのに……この数日で何が起きたわけ? 兄さんの姿にビックリはしたけど……


「おおっ!! 流石だな。実は先週末に会社を辞めたのだよ」


「……えっ? 会社を辞めたの!? 彼女が出来たとか、そんなサプライズじゃなくて?」


「まてまて!! 何でそうなる!? 俺みたいな奴を好きになる奇特な人なんて、なかなかいないぞ」


 その奇特な人は案外近くにいるんだけど……やっぱり、そこは気付いてないみたい。


「そこは私の勘違いみたいなんだけど……それにしても急過ぎない? 兄さんの体を考えると良かったと思うんだけど、三年は働くつもりだったよね? お父さん達はそれを知ってるの?」


 両親は仕事の関係上、海外で暮らしてるんだけど、そこはちゃんと言っておかないと。兄さんは三年は働くと、お父さん達の前で断言してたんだから。


「勿論だ。上司達に色々と仕事を押し付けられる中、不正を見つけたり、この会社が倒産間近なのが分かったからな。理由が理由なだけに、反対されなかったぞ」


「まぁ……明らかにブラックなのは分かってたからね。兄さんも耐えてた方だと思うよ」


 けど、予想外のサプライズ過ぎるでしょ。兄さんがブラック会社を辞めたのは喜んでいいところだけど……


「そうだろ? 次の仕事もすでに決まってるから、そこも安心して構わないぞ」


 良かった。ブラック会社に働いてた反動で、全然仕事しないのかと思ったから。勿論、少しは休んでもいいと思うけどね。

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