お面の下
「安心しなさい。自らを差し出せば、苦しまぬように頭と胴体を切り離してやろう」
モモは【ターンアンデッド】が広がっていく間も、足を止める事なく、【クイーン】との距離を縮めていた。今は奴の尻尾が届く範囲。
紅を倒した尻尾がモモの頭に……届かなかった。外れたのはモモが付けていた【魔法少女ピーチ】のお面と
「妾に神聖魔法は意味がないはずなんだが……」
【クイーン】の尻尾の半分が、千切れ飛んでいく。
モモが尻尾を斬ったわけじゃない。【クイーン】は窪みの深淵、自身が登場した穴の方へ顔を向けた。
【ターンアンデッド】は穴の方へ流れていき、ボスゴリラのような死体達を浄化したのか、光の柱みたいに立ち昇っていく。その死体達の力も【クイーン】に影響していて、力を失う形になったのかも……けど、彼女を撤退させるまでには至らなかった。
「これを狙っての神聖魔法とは考えたようね。それも僅かな力に過ぎませんよ。この者を食せば、回復するぐらいに……」
【クイーン】はモモの方へ向き直した。【魔法少女ピーチ】のお面が外れて、彼女だけがモモの素顔を見る形に……そこで【クイーン】は一時的に硬直したように動かなかった。モモも同じ。一矢報いるための攻撃をするわけでもなく、立ち尽くした状態になってる。
「……それがお前の覚悟か」
「モモ!!」
ヒューイが叫ぶ。【クイーン】が先に動き、モモの胸……心臓に手を突き刺した。それによって、大量の血が流れたのは離れた場所でも分かるから。
「毒を自らの体に宿し、妾を毒殺するつもりだったようだが……災厄の獣であり、神である妾がそれだけで死ぬ事はないぞ」
モモは自分の体に毒を入れて、相討ちを狙った!? けど、それはモモの顔色や毒の臭いで【クイーン】にバレてしまった。
そして、【クイーン】はモモを……食べるのではなく、【魔法少女ピーチ】のお面を残った片方の手で付け直した。
「これは呪いだ。このお面は妾が解かぬ限り、一生外せない。その男達と共に妾を探しに来るがよい。今回は血だけで満足しておこう」
【クイーン】はモモを刺した腕を抜き、私の方へ投げつけた。それを私は無理にでもキャッチして……
「息がある……まだ死んでない!!」
私はすぐさま、モモに【ヒールLV2】を使った。回復の兆しがあるから、まだ間に合う!!
「神聖魔法が使えるのであれば、回復魔法も出来るのだろ? 大量の血で毒を吐かせ、弱った心臓も無理矢理動かしておいた。心配なら、解毒の魔法もしておけ」
【クイーン】はモモの血が着いた腕を舐めるだけで、彼女自身が回復してるのが分かる。本当に毒の効果はないみたい。それなら……
「どうしてだ? 何故、私達を見逃す」
マンが疑問に思うのも分かる。モモの血を舐めただけで、【クイーン】の朽ちた状態が回復していくんだから、食べた場合はそれ以上になるのは予想出来る。
それなのに【クイーン】はモモを助けようとしてるんだから。私は【クイーン】の攻撃に耐えて、興味を示したみたいだけど、モモは……