漢二人
「余の事を忘れてもらっては困るな。カズハを助けたいと思ったのは、マンだけではない。ここで逃げ出すような奴は漢ではないからな」
ヒューイは私達が時間稼ぎをしている間に逃げ出さず、この場に残っていた。それもモモを守るように前に立ちながら、【クイーン】をジッと見つめている。
「お前は少しでも余に興味を持っていた。ならば、余の【カリスマ】と【マインド】で魅了し、命令する。動きを鈍くするまでが限界とは思わなかったが……」
【クイーン】に僅かながらにも【カリスマ】のスキルとアーツの【マインド】で動きを鈍らす事に成功するなんて。もしかしたら、マンはヒューイの【マインド】の発動時間を稼ぐための手四つだったのもあるかも。
まさか、マンとヒューイが力を合わせるなんて思いもしなかった。この場に残るなんて全然……
「【クイーン】である妾を魅了? 面白い事を考える。力と精神の同時攻撃だな。しかしだ。妾も伊達に【クイーン】等と呼ばれてはおらんぞ」
「主!! 鼻血が……変た」
【クイーン】の言葉の直後、ヒューイから鼻血を飛び出したのをモモが確認した。
「妾が魅了を使えるのでな。こちらも力比べをしようではないか。異性である者達は、妾の魅力に崩れ落ちるがよい」
「……舐めるなよ。好きな相手の前で、余が魅了される等、言語道断だ」
ヒューイは災厄の獣の魅了を耐えた。格好良い台詞を言ってるんだけど、今のヒューイの姿はパンツ一丁……
「良いぞ。意識を刈り取られてないな。だが、お主は良くても、お前は耐性など持ち合わせてはおるまい」
【クイーン】の魅了はヒューイだけでなく、マンにまで影響を与える。マンは【毒耐性○】や【麻痺耐性○】は持ってたけど、【魅了耐性】までは……マンが【クイーン】側についたら、本当に勝ち目がないから。
「うおおおぉぉぉ!!」
「妾の魅了にまるで反応がないだと!! 同じ魅了を使う奴であれば分かるが……」
【クイーン】の魅了にマンは全く反応しなかったのが予想外だったのか、マンの方が押し返していく。マンにとっては花より団子なのかも……それとも【魅了耐性○】が追加されてた?
「それも一興か。お前には力でひれ伏させるのが一番もいう事だな。六割まで引き上げるぞ。二人にして抑えれるものなら」
【クイーン】の肩から両腕の筋肉が膨張していき、マンと同等、それ以上の大きさになるはずだったはずのに……彼女は力比べの手四つを外しただけじゃなく、マンを蹴り飛ばした。
マンも当然の事で防御出来ず、後方に吹き飛んだ。けど、紅みたいに一撃で死ぬ事はなかった。
というのも、【クイーン】の両腕の筋肉が膨れ上がったと共に、すぐにその筋肉が朽ち果て、剥がれ落ちていく。
「不完全な復活の代償か? この姿で半分以上の力は出してはならぬというわけか」
本来、【クイーン】は蘇る事はなかった。咎人の儀式を潰したはずが、ヒューイの思わずの行動に怒り、不完全な体で復活する事を選んだ結果、力の反動で体が保たずに朽ちてく。それはゾンビなんかのアンデッド系みたいで……
「ならば、血肉、精力を補充するしかあるまいが……番候補を食するのは今ではないか。この際、女でも構わぬ。一番いらぬ存在は……お前だな」