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巨大な山

「紅!! 奴を倒すのが目的じゃないからね。攻撃よりも」


「分かってるわよ!!」


 私達の目的はヒューイとモモが逃げるための時間稼ぎ。【クイーン】を倒せるとは思ってない。牽制の攻撃だけで、回避重視で行く。紅との連携もなし。


【クイーン】は私と紅がこっちに仕掛けてくる事に対して、変わらず歩みを進めていく。私達の事は眼中にないみたいね。


「まずは私の方を見てもらうわ……よっと!!」


 紅が【クイーン】に投げたのは魔物避けになる【臭草】。勿論、これで奴が逃げ出すはずもないけど、私達に目を向け……ない!? 全く動じない。 ちょっとでも目を閉じたり、鼻を摘む行動でもしてくれたら良かったのに。


「そこまで私達に興味がもてないなら!!」


 走る勢いを止めず、【クイーン】の無防備な腹に正拳突き。回避重視にしても、彼女の動きを止めないと意味がない。


 私の持ちうる限りの力での正拳突き。【ナイトメア】戦の経験で、パラメータも上昇してる。僅かでも【クイーン】の意識を私達の方に向けないと駄目……だと思ったんだけど……


【クイーン】は私の正拳突きを防御もせず、もろに腹に入ったはずなのに、意識を持っていかれたのは私の方だった。


 攻撃を受けたわけじゃなく、【クイーン】に対するイメージによってだ。ホブゴブリンとの戦闘時、相手の体を大木と感じたのに対して、【クイーン】は巨大な山。


 私と同じぐらいの大きさで、圧倒的な力の差のイメージが出来てしまった。鉄の硬さとかじゃなく、あまりの大きさに……これを打ち砕く拳を私は持ち合わせてない。


「カズハ!!」


 マンの声に意識を取り戻したのも束の間、【クイーン】の拳が私の眼の前に……【受け流し】が間に合うわけがないのに、逆にその拳が当たるまでがスローモーションに見えた。


「……っ!!」


 頭と体が分断されてもおかしくない程の衝撃が駆け巡り、窪みの端まで飛ばされる。


 頭と体が繋がった状態でいられるのも、【ド根性】のスキルが発動して、辛うじて死ぬのを免れただけ。


 鼻から大量の血が出ていて、意識は失わずに済んだ流したで、その目で見たのは、私が攻撃を受けた際に出来た【クイーン】の隙を突き、紅は背後から双剣で奴の首を刈ろうとした姿。


【クイーン】は紅の攻撃に何の反応もしないと思った時には、私とは別方向に弾き飛ばされ、一瞬で消滅してしまった。


 紅を倒したのは彼女の尻尾。飾りなんかじゃなく、視覚外から、鞭のようにしなり、紅をいなしただけ。それだけで必殺となってしまってる。


「私と紅の実力だと手も足も出ない……わけか」


【クイーン】の凄さは災厄の獣の時点で分かってる。


「けど……簡単に諦めるようなら、千城院さんのパーティーに入る資格はないから!!」


 簡単に諦める程、私は器用じゃない。千城院さんのパーティーを目指すなら、災厄の獣の戦闘を何度も経験するかもしれない。今がそれを糧にするチャンスでもあるから。


 瀕死の状態から私自身に【ヒールLV2】を使う。全回復しなくても、マンを支援するぐらいになればいいから。


「……止まった? でも、何で……」


 止まったのは【クイーン】の足取り。私と紅の攻撃は見事に失敗したはずなのに……

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