パンツを履いてください
☆
「そろそろ、森の出口だな。【アイン】の街が見えてきたぞ」
【嘆きの森】の出口が【アイン】の街と繋がってるらしく、大きな門が見えてきた。プレイヤー達が最初に集まる場所だから、大きい街なんだと思う。
マンと一緒に行動する事になって三十分。三十分といっても現実の時間で、【ユニユニ】の世界では一時間半。時間の速さが三倍みたい。というのも、この世界で朝昼晩と体験させるためなのかも?
「へぇ〜……あれがそうなんだ。なんとか無事に着く事が出来そうだね。【アイン】に着いたら、今日のところは止めとこうかな。マンも色々と教えてくれて、ありがとう」
ここまでの道中で、私はマンと【ユニユニ】の事を話した。例えば、【嘆きの森】で魔物と一度も遭遇する事はなかったんだけど、ここに魔物が存在しないわけじゃないみたい。
PKが許されてる場所でも、時間帯は決まってるらしくて、それ以外だと魔物が発生するらしい。現実と【ユニユニ】の時間が違う事もマンから教えて貰ったのよね。
それと回復。戦闘中以外は少しずつだけど、怪我や痛みは回復していき、今では【ファイアボール】を【受け流し】をした事で、痺れていた手も治ってる。【ヒール】を試す機会だったけど、その事を忘れてたから……
後は【ユニユニ】をはじめるきっかけ? 世間話的なやつをしたかな。流石に本名や年齢を聞く事はしなかったわね。
私は憧れの人が【ユニユニ】をしてるのを知って、仲良くなるためと素直に話した。勿論、ここで千城院さんの名前を出すほど馬鹿じゃないから。
マンの場合はストレス発散。色々とあるみたいで、VRの世界では自由を謳歌したいらしい。その反動が【漢】を選んだ理由なら、よっぽどの事でしょ。【漢】はある意味、開放的だとは思うけど……
「こんな時間だからな。明日に支障をきたすかもしれない。私も【ログアウト】した方がいいか」
【ユニユニ】の世界では昼の十二時だけど、こっちは午前二時。明日は大学があるし、マンの方も仕事があるのかもしれない。
「そうなると、街の中で解散かな。今日は本当に助かったから……って、ちょっと!?」
【アイン】の街に到着して、門を通り抜ける。私の場合は何もなかったのに、マンが通るのを門番が止めてるんだけど!!
「一体どうしたってわけ? 彼が何を」
「こんな怪しい奴を通すわけにはいかない。お帰りください」
私が門番に理由を聞いたところ、最もな台詞が返ってきた。葉っぱでアソコを隠していても、全裸状態にかわりはないから……
「やはり駄目なのか。誰かと一緒なら、街に入る事が出来ると思ったのだが。一体何が原因……」
「履いてないからでしょ!! もしかして、一度も【アイン】に入った事はないわけ?」
「そうだな。この世界に入ったのも【嘆きの森】からだった」
この姿だもんね。案内役の人も【アイン】から始まる選択肢を出さなかったのかも。
「この街のクエストをクリアしないと、先に進めないのに」
【MAP】情報で書かれてあったけど、【アイン】でクエストをクリアしないと、他の国に行く事が出来ない。このままだと、マンは全く先に進めないのよね。
「はぁ……マンは【ログアウト】するのは少し待って。すぐに戻ってくるから」
助けて貰った身として、ここでマンを放置するのは忍びないし、理由があれなら、すぐに解決するはずだから。
数分後……
「買ってきたよ。これしか無理だったけど、十分でしょ」
街にいるNPCやプレイヤーに装備や道具を売ってる場所を聞いて、【木のステッキ】と【青のベール】を売る事で100GをGET。そのお金で唯一買えたのが【気合のブリーフ】。買うのが恥ずかしかったけど、そこは我慢したんだから。
「……あれ? 渡す事が出来ないんだけど」
【気合のブリーフ】を渡そうにも拒否される。といっても、マンが嫌がってるわけじゃない。その時、目の前に文字が表示された。
<道具の受け渡し、交換はフレンドになる必要があります。【MENU】の【フレンド】を選択し、相手の方へ向いてください。互いが了承すれば完了です>
「道具の受け渡しにはフレンドになる必要があるみたいなんだけど、私とフレンドになっても大丈夫?」
「私のためなんだろ? 勿論だ」
マンの了承を得たところで、【フレンド】を選択。そして、マンが私の最初のフレンドになった。フレンドになれば、相手の【職業】【アーツ】【スキル】の情報も分かるみたい。
それを知るよりも先に……
「街の中に入るんでしょ。そのためにもパンツを履かないと駄目だからね」