アットホームな職場です(笑)
読み方
発言者 「」普通の会話
発言者 ()心の声、システムメッセージ
発言者 <>呪文
『』キーワード
アラン 「戻りました」
アランは魔晶石精製部門に戻り、チワワに声をかけた。
チワワ 「お帰り、社長の話は退屈だったろう?」
アラン (なんだ?いきなり社長の悪口?)
アラン 「いえ、色々と教えていただきました」
チワワ 「あ、そう。それじゃあ、君の席はあそこね。今忙しいから、とりあえず座ってて、手が空いたら業務の説明するから」
アラン 「分かりました」
アランは言われた席についた。机の上には透明な魔晶石が3個と電話機が置いてあった。アランはチワワに指示された通り大人しく待っていると電話が鳴りだした。しかし、電話が鳴っているにもかかわらず誰も電話を取ろうとしなかった。電話機には『エルド村自警団』と表示されていた。
チワワ 「おい!ヒムラ!電話取れよ!お前の客だろ!」
アラン (ええ?いきなり怒鳴りだした!しかも、社員をお前呼ばわり?うわ~、これきっとヤバいやつだ)
ヒムラ 「はい、魔晶石精製商会です。はい、先月納品した魔晶石の効果ですね。ウォーターバレットが登録されています。いいえ、お困りの際は電話をいただければ対応いたします。はい、失礼します」
ヒムラはチワワの方を見ることもなく電話を取り、対応した。電話が終わって、暫くたつと、またチワワは怒鳴り散らした。
チワワ 「おい!ヒムラ!なんで相談に来ないんだ!ちょっとこい!」
ヒムラ 「いや、簡単な質問だったんで、普通に答えましたけど」
チワワ 「何が簡単な質問だ!お前はいつも抜けてるから俺が確認してやってんだろうが!良いから来い!」
ヒムラ 「はい」
ヒムラがチワワの席に着くとチワワはまくし立てるように質問を始めた。
チワワ 「で?なんの質問だった?」
ヒムラ 「先月納品した魔晶石についての質問です。どんな魔術が登録されているかと聞かれたので、ウォーターバレットの魔術が付与されていると答えました」
チワワ 「本当にそうなのか?先月から今までカスタマイズは入っていないのか?」
ヒムラ 「入ってないと思います」
チワワ 「思いますだ~。なんで断言できないんだよ!」
ヒムラ 「入っていないです」
チワワ 「調べたのか?」
ヒムラ 「調べてないです」
チワワ 「なんで調べないんだ?」
ヒムラ 「いや、でも私の記憶ではカスタマイズなんて入ってないです」
チワワ 「お前の記憶なんか信じられるか!ちゃんと調べろ!」
ヒムラ 「分かりました」
ヒムラはチワワに言われてエルド村自警団の情報がまとめられているファイルを調べ始めた。そして、やはりカスタマイズは入っていない事を確認した。
ヒムラ 「チワワさん。やっぱりカスタマイズは入っていませんでした」
チワワ 「うるせえ!知りたくもない!俺が言ってんのはちゃんと確認しろって事だ!」
ヒムラ 「はい」
チワワ 「はい、じゃねえよ!ちゃんと仕事しろ!全く!」
ヒムラ (はいはい、またかよ。気分次第でイジメるのやめて欲しいだけど……。まあ、反論するとヒートアップして面倒だし、はいはい言っとくしかないからな……。まったく面倒な上司だ。これで無能なら社長もクビを切りやすいんだろうけど無駄に記憶力だけは良いからな……)
アラン (ミスしたわけじゃないのになんで、あんなに怒ってるんだ?意味が分からない……。それにナチュラルにディスってたな、ゴーレム効果とか知らないのか?
上司が部下を馬鹿にしてるとその期待に応えてしまうというゴーレム効果……。部下が無能なのは上司が褒めないからなんだよな~)
そうして待っている間に、また別の電話が来た。今度は『イレーナ王国騎士団』と表示された。さっきと同じように暫く誰も出なかったがチワワは何も言わなかった。そうして、アキタが電話を取った。
アキタ 「はい、魔晶石精製商会です。どうもどうも~。いつもお世話になっております。はい、はい、先月の魔晶石の魔術ですね。ストーンバレットですよ。いえいえ、とんでもない。はい、失礼します」
アラン (ヒムラさんと同じ対応したのにアキタさんが対応すると怒らないんだな……)
ヒムラ (ホント、タバコ休憩で仲がいいお友達には優しいよな……。あのクズ野郎)
しばらく待っているとチワワがアランの席に近づいてきた。
チワワ 「あ、聞くの忘れてたけど、お前、タバコ吸うのか?」
アラン 「いえ」
アラン (お前呼ばわりかよ。部下とはいえ最低限、敬意は払うべきだろう?)
チワワ 「そっか、吸う時はキッチンに喫煙所があるから、そこで吸え」
アラン 「はい、分かりました」
アラン (タバコなんて非効率的なものを吸うつもりはないけどな……。定期的に吸わないとイライラする薬物なんて百害しかない)
そう言ってチワワは外に出て行った。するとアキタとブルドが示し合わせたように席を立って同じようにキッチンに向かって行った。そして、チワワとアキタとブルドが喫煙所で談笑する声が聞こえてきた。5分ほどして3人は帰ってきた。
タバコ休憩から帰ってきたチワワは、アランに魔晶石に魔術を付与する方法を教えた。その魔術はジャバから教えられたものと一緒だった。
チワワ 「そうそう、とりあえず。100個初期化しといて」
アラン 「分かりました」
アラン (いつまでにとか、指示は無いのか?急ぎの案件じゃなさそうだな、ゆっくりマイペースで進めてよさそうだな)
アランは言われた通りに作業を進めた。
アランが業務を行っていると、また電話が鳴った。今度は『大森林警備隊』と表示されていた。その電話はミドリがすぐに取った。
ミドリ 「はい、魔晶石精製商会です。はい、私です。先週の件ですね。すでに発送済みです。はい、失礼します」
チワワ 「おい!ミドリ、その件、現地調査部門に伝えてあるのかよ?」
ミドリ 「伝えてあります」
チワワ 「ほんとか?言っただけだと伝えたと言わねぇぞ?」
ミドリ 「……」
ミドリ (うぜぇ~。こっちは発注済みなの確認済みなんだよ。後は現地調査部門のダルマの責任だろうが……)
チワワ 「おい!話は終わってねぇぞ!担当のダルマに確認したのか?」
ミドリ 「しました」
チワワ 「もう一度、確認しろ。あいつ馬鹿だから忘れてる可能性があるぞ」
ミドリ 「……」
チワワ 「おい!無視すんなよ!俺の言い方が気に食わねぇのは分かるが、仕事なんだから割り切ってくれよ」
ミドリ (マジでうぜぇ~。ブーメラン投げてんじゃねぇよ。仕事だから言葉遣いに気をつけろよ。なんで無視されるのか察しろよ。てめぇがクソだから口も利きたくねぇんだよ)
ミドリは渋々、現地調査部門のダルマの席に移動した。
ミドリ 「大森林警備隊への納品物の発送終わっていますか?」
ダルマ 「終わってますよ」
ミドリ 「終わってるんですね。先方から問い合わせがあったので、確認に来ました。では、着日の連絡をお願いします」
ダルマ 「了解です」
ミドリが席に戻るとチワワが話しかけた。
チワワ 「今回は良かったかもしれんが、相手は馬鹿なんだ。何度でも確認しとけ」
ミドリ 「……」
ミドリ (うぜ~。人を見下すのもいい加減にしろ。てめえは何回も発注漏れやらかしてるだろが、それを棚にあげて人の批判だけしてんじゃねえよ)
アラン (同じ会社の仲間を馬鹿呼ばわりか……。社長の話とだいぶ違うな……。アットホームな職場(笑)だな)
18時になるとヒムラとミドリは席を立ち帰って行った。
チワワ 「おい、アラン。今日は帰っていいぞ」
アラン 「はい、では、お先に失礼します」
アランが帰ると他の社員も帰って行った。そんな中、チワワとアキタとブルドだけが残業をしていた。
チワワ 「まったく、やる気があるのは俺らだけかよ。みんな定時に帰りやがる」
アキタ 「ほんとみんな仕事しないですよね」
ブルド 「全くです。みんなやる気ないんですかね」
チワワ 「仕事に人生かけてる俺らとは違うな~。俺たちが居なかったらこの会社とっくにつぶれてるぞ」
アキタ 「全くです。現地調査部門はいい加減なバカばっかりだし、社長も脳筋ですからね。チワワさんが居なかったらと思うとゾッとします」
ブルド 「同感です。馬鹿な社長をとめれるのはチワワさんだけです」
チワワ 「ありがとう。お前ら。話は変わるけど、今日来た新人使えると思うか?」
アキタ 「どうでしょう?今日はチワワさんが言ったから帰ったようですけど、俺だったら帰れって言われても仕事を早く覚えたいから残りますって言いますけどね」
ブルド 「やる気ないんじゃないですかね」
チワワ 「歓迎会で釘を刺しておくか」
アキタ 「それ、俺がやっときますよ」
チワワ 「そうか、頼むぞ」