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アットホームな職場です

読み方

発言者 「」普通の会話

発言者 ()心の声、システムメッセージ

発言者 <>呪文

『』キーワード


 朝になり寮での食事を終えてアランは会社に顔を出した。すると一人の男がアランに声をかけた。その男は額に二本角が生えており、ボロボロの皮鎧とボロボロの金棒を腰に吊り下げていた。


アラン (鬼だ、鬼が居る。しかも、青鬼だ)

アオニ 「ようこそ、魔晶石精製商会へ。私は社長のアオニだ。ジャバ様から話は聞いているよ。魔術が使えるんだって?歓迎するよ」

アラン (鬼が社長かよ。怖え~~~~)

アラン 「はい!よろしくお願いします!」

アラン (挨拶は元気よくしておこう)

アオニ 「まずは、君が所属する部署に案内するよ。ついておいで」

アラン 「はい!」

アラン (社長自ら案内してくれるのか……)


 会社は町中に建てられた平屋の一軒家だった。間取りは3LDKで作業部屋、会議室、社長室があり、リビングは休憩室になっていた。作業部屋には二つのグループがあり、グループごとに机がまとまっていた。二つのグループには天井から吊り下げられた看板が表示されており、一つは『現地調査部門』と書かれており、もう一つは『魔晶石精製部門』と書かれていた。

 机には電話機が置いてあり、電話が鳴ると社員が電話を取り、問い合わせに対応していた。アランは魔晶石精製部門に案内された。

 魔晶石精製部門のメンバーは5人だった。チワワの犬人チワワ、秋田犬の犬人アキタ、ブルドックの犬人ブルド、人間のヒムラ、森人エルフのミドリが所属していた。


アオニ 「ここが、君の配属先だ。おい!みんな、新人が来たぞ、挨拶してくれ」


チワワ 「では、俺から。初めまして魔晶石精製部門Cチームの部長チワワだ。君の指導役を任されている。歓迎するよ。どうぞ、よろしくたのむ」

アキタ 「初めまして、課長のアキタだ。得意な属性は土だ。土属性の魔石を精錬するときは俺に聞いてくれ」

ブルド 「初めまして、ブルドです。得意な属性は火です。どうぞよろしく」

ヒムラ 「初めまして、ヒムラです。得意な属性は水です。どうぞよろしく」

ミドリ 「初めまして、ミドリです。得意な属性は風よ。どうぞよろしく」


アオニ 「この5人が君と一緒に仕事をする。本来は君から自己紹介をお願いしたいところだが、記憶喪失だったね」

アラン 「はい」

アラン (嘘だけど、そうしておいた方が都合が良いからな)

アオニ 「そういう訳だから、彼の過去については何も分からない状態だ。得意な属性も分からないから、色々教えてやってくれ」

チワワ 「分かりました」

アオニ 「これから、雇用条件を彼に伝えるから、それが終わってから、またここに来させる」

チワワ 「はい」

アオニ 「では、アラン君、ついてきたまえ」


 アランは会議室に案内され、机を挟んで椅子に座った。


アオニ 「勤務形態は1日8時間、朝9時から夕方18時まで、昼休憩は1時間だ。土日は休みで給料は基本給が金貨20枚、みなし残業が月20時間分で金貨5枚支払うよ」

アラン 「みなし残業って何ですか?」

アラン (まあ、知ってるけど、元の世界と同じか確認しないとな)

アオニ 「うちの会社はそこそこ忙しくてね。月に20時間程度の残業が発生するんだ。それを毎回細かく計算するのも面倒だし、会社の売り上げ目標を立てるときに人件費が増えたり減ったりすると予定が立てにくいから、月20時間は残業しているってことにして給料を払っている。

 もちろん、20時間を超えた分は別途支払うけど、今のところそういうケースは稀だ。20時間に満たない場合は、みなし残業分、君は得をすることになる。頑張って定時で上がれるように頑張るといい」

 アオニは笑顔でアランに、そう告げた。


アラン 「なるほど、分かりました」

アラン (元の世界と一緒か……)

アオニ 「あと、うちは業務の改善に力を入れていてね。改善提案を行った社員に報奨金を出しているんだ。金額は提案の内容によって変わるが、多い時には金貨10枚支払ったこともある。ぜひ、君も何か思いついたのなら私に提案してくれ」

アラン 「はい」


アオニ 「それで、業務内容だが詳しくはチワワから説明があると思うが、概要を私から説明する」

アラン 「はい」

アオニ 「まず。我が社で作っているのは魔晶石というものだ。魔晶石が何なのか分かるか?」

アラン 「分かりません」

アオニ 「簡単に言うと、魔術を誰でも簡単に使用できる装置だと思ってくれ、この装置を町の自警団や国の騎士団に卸しているんだ。そこで問題になるのが、どの属性のどんな魔術を提供するかという判断が必要になる。

 その判断を行うのは現地調査部門に所属している社員だ。現地調査部門では実際に町や国に赴いて、どんな魔物が居て、どんな弱点を持っているのか調査を行う。これは命がけの仕事だ。私の様な戦闘に向いている鬼人や人間で戦闘訓練をつんだ者が行くことになる。

 そこで、調査結果を町や国に報告し、どんな魔術が良いのか提案する。それが了承されてから魔晶石精製部門で魔晶石を作り、顧客に納品することになる。ここまでは理解できるか?」

アラン 「分かりました」

アオニ 「それでだ、自警団も騎士団も土日に休みなんて事は無い。魔物が現れれば緊急で対応しなければならない。そして、我が社も顧客の要望に応えるために土日に作業を行うこともある。だから、月20時間程度の残業が発生するんだ」

アラン 「大変ですね」

アオニ 「なに、そうでもないさ。土日の作業は、そう滅多にある事じゃない。月に1度あるか無いかの事だ」

アラン 「そうなんですね」

アオニ 「それと、良くあるのが過去に納品した魔晶石に付与されている魔術についての問い合わせだ。これは、基本的に納品した者が答えることになっているんだが、担当の者が忙しい場合は他の者に対応してもらうことになっている。君にも対応してもらう事になると思うから顧客の情報は把握するようにしてくれ」

アラン 「分かりました」

アオニ 「後は、納品した杖のカスタマイズの依頼が来ることもある。理由は色々だが、一番多いのが、現れる魔物が別のものになるパターンが多い。そうなると、一度納品した魔晶石を初期化し、再度魔術を登録しなおす必要が出てくる。この時は、魔晶石精製部門のメンバーに出張してもらう事になる。

 魔術の変更が現地で出来れば一番良いんだが、今はやる方法が無いから申し訳ないけど出張してもらっている」

アラン 「そうなんですね」


アオニ 「私からは以上だが、何か質問は?」

アラン 「特にありません」


アオニ 「私はね。社員を大切にしているんだ。失敗することもあるだろうけど、そういう時はみんなで助け合えばいいと思ってる。だから、何か困ったことがあったら何でも相談してくれ、失敗はリカバリーできる。お客さんに迷惑かけてしまったら相談してくれ、私が頭を下げて済む問題ならいくらでも下げるから、のびのびと仕事してくれれば良い」


 そう言って、アオニはニッコリと笑った。


アラン 「ありがとうございます」

アラン (見た目は怖いけど良い社長だな)


アオニ 「では、チワワの元に戻ってくれ」

アラン 「はい」


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