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大魔術師と奴隷

読み方

発言者 「」普通の会話

発言者 ()心の声、システムメッセージ

発言者 <>呪文

『』キーワード


 奴隷市場でアラン・シェードは鎖に繋がれて檻の中に居た。ボロ切れをまとい、不衛生な檻の中で、彼は虚空を眺めて考え事をしていた。


アラン (あれ?確か、会社で残業してて、それから眠くなって……。なんで、鎖に繋がれてるんだ?それに、この服、ボロ切れみたいだ。僕の名前はアラン・シェード?なんかおかしいな、本当の名前は違うはず。頭がクラクラする)


 アランは記憶が混乱していた。会社で仕事をしていたのに気が付いたら檻の中に居た。アランは周囲を見回した。そこには、同じように枷がつけられた人間と亜人が多数いた。

 人間は若い男と若い女性が多く、亜人は子供が多かった。亜人は森人エルフ鉱人ドワーフ、犬人、猫人、竜人、虎人、鬼人とバリエーションが豊富だった。みな一様に暗い顔をしてうつむいていた。


アラン (ああ、人間じゃないのも居るな。これって異世界転移ってやつか?でも、鎖で繋がれて居るってことは奴隷なんだろうな……。ははっ、笑える。元々奴隷の様な生活だったけど、異世界に来てまで奴隷とは……)


 アランの前に奴隷商人に案内されたジャバ・ランゲージという魔術師が来た。


奴隷商 「どうでしょう?この者は森で倒れていたところを拾いました。酷い外傷があったのですが、今は治っております。年のころは20代と若く、ごらんのとおり肉付も良いので力仕事に向いていると思うのですが?」

アラン (何言ってるんだ?僕は30過ぎのおっさんだぞ?)

ジャバ 「なるほど、確かに良さそうだ。いくらだ?」

奴隷商 「金貨30枚でどうでしょう?」

ジャバ 「ふむ、お前、何か特技はあるか?」

アラン (特技か……。数学は得意だな)

アラン 「ある程度の計算は出来ます」

ジャバ 「ほう。なら、この計算をしてみよ」


 ジャバは持っていたカバンから紙とペンを取り出し、紙に『4890+2134=』と書いてアランに渡した。


アラン (ただの足し算か、簡単だな)


 アランは渡された紙に『4890』と書き、その下に『2134』と書いた。そして、一本の線を引いて、その下に計算結果を書いていった。もちろん繰り上がりの計算も小さく書き添えていた。


ジャバ 「凄いな、算数を理解しているのか、なら金貨30枚で買おう」

奴隷商 「ありがとうございます」

アラン (この程度の計算で良いのか?)


 こうしてアランはジャバに買われた。ジャバはアランを自分の屋敷に連れて帰ると体を洗い新しい服を与えた。そして、ジャバの書斎にアランを連れてきた。

 書斎は本棚に囲まれていた。その真ん中に机が置いてあり、そこにジャバは座っていた。机を挟んでアランは立っていた。鎖は外されていた。


ジャバ 「さて、君の名前は?」

アラン 「アラン・シェードです」

ジャバ 「出身は?」

アラン (異世界から転移してきたと言うと証明がしないといけないよな、面倒だから知らない事にしよう)

アラン 「分かりません」

ジャバ 「分からない?記憶がないのか?」

アラン (記憶喪失が、それ良いな、何も分からないふりして色々聞こう)

アラン 「そうみたいです」

ジャバ 「計算以外に何が出来る?」

アラン 「分かりません」

アラン (実際、この世界で何が出来るかなんて分からないしな……)

ジャバ 「ふむ、では色々と調べる必要があるな、まずは魔術の適性があるか見てみるか、受け取りたまえ」


 ジャバは、机の上に置いてあった水晶玉を右手で取った。


ジャバ <エグゼ、ウインド、ライトハンド、スフィア、フォワード・ワン・メートル、キャリー>


 ジャバの詠唱が終わると、風が吹き、水晶玉をアランのもとに運んだ。アランは両手で水晶玉を受け取った。


アラン (おお、異世界っぽい)

ジャバ 「私に続いて同じ言葉を唱えてくれ」

アラン 「分かりました」

ジャバ <イニシャライゼーション、ニュートラル、ライトハンド、スフィア、タッチオン、エンチャント・ストレージ・ミディアム>

アラン <イニシャライゼーション、ニュートラル、ライトハンド、スフィア、タッチオン、エンチャント・ストレージ・ミディアム>


 アランが詠唱を行うと、水晶玉が輝き出し、水晶玉の中心に光が宿った。


アラン (なんか分からんが、魔法っぽいものを使えた!)

ジャバ 「これは、掘り出し物だ。君は魔術の才能がある。よしよし、では、配属する会社は『魔晶石精製商会』に決まりだ。案内を出すから、明日から出社してくれ」

アラン 「あの、どういう意味ですか?」

ジャバ 「おめでとう。君の就職先が決まったのだよ。魔術師はいつでも人手不足でね。君はついている。うちは奴隷にも給料は出すし部屋も与えている。魔術師は高給取りだ。君が望むのなら自分を買って奴隷から脱却することも出来る。仕事に励みたまえ」

アラン 「仕事って、何をすれば良いんですか?」

ジャバ 「何も心配することは無い。現場に行けば君の先輩が仕事を教えてくれる」

アラン 「あの、先輩の言う事は絶対ですか?」

アラン (奴隷って事は人権は無いよなきっと……。異世界に来て、パワハラとかマジで勘弁してほしい)

ジャバ 「安心したまえ、私が経営する会社では身分役職に関係なく人権を尊重している。先輩だからと言って君に理不尽な要求はさせない。もし、何かあれば私に言ってくれ、君が不利益を被らないように対処しよう」

アラン 「分かりました」

アラン (良かった。ホワイト企業っぽい)


 アランが返事をするとジャバは机の上に置いてある呼び鈴を鳴らした。すると、書斎の扉を開けてメイドが入ってきた。


ジャバ 「君、新入りのアランを部屋に案内してくれ、それと明日に備えて寮の案内と魔晶石精製商会の場所を教えておいてくれ」

メイド 「畏まりました。アラン。ついて来なさい」

アラン (いきなり呼び捨てかよ……。まあ、奴隷だから仕方ないか……)


 メイドに案内されてアランは自分の部屋と、寮の施設と就職先を把握した。


メイド 「食事は1日2回、朝と晩に取れます。昼は食べたければ各自で調達してください。最初はお金が無いと思いますが、必要であれば給料の前借が可能です。前借したい場合は寮長に相談してください。では、案内は以上になります。明日から頑張ってください」


 メイドは終始、無表情のままだった。


アラン (明日から仕事か……。頑張ってみよう。それにしても体がやけに軽いな……)


 アランは何気なく部屋に設置されていた鏡を見た。そこにはアランが知らない青年が映っていた。


アラン (あれ?僕じゃない奴が映ってる。なるほど、異世界転移じゃなくて転生の方だったのか……。なら、なんで転生してからの記憶が無いんだ?言葉にも不自由してないし……。奴隷になった経緯も分からないな、でもまあ仕事も決まったし食うには困らないから良いか)


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