星に願いを
川原の堤防を娘とふたり、夕日に向かって歩く。
僕の右手をしっかり握る、娘の左手。
夕日を左に見る。
橋を渡って、自動販売機でジュースを買って、公園のベンチに腰掛ける。
「温かいね」と、小さなペットボトルを握りしめ、
「冬来たりなば春遠からじ」と娘が言うから、
「難しいこと知ってるね」と褒めると、てへへっ、と笑う。
そこで僕が、
「寒い日は、うどん来たりなばまず唐辛子」と言うと、 聞こえなかったのか、ただジュースを飲む娘。
夜のとばりが、降りてきた。
夕日の紅はわずかに山の稜線に残り、紫と濃紺のコントラストを見せている。
帰り道、星を数える娘に、
「香津奈は、どんな大人になるかな?」と訊くと、
「星屑たちが凍りつくような、いい女になるよ」と言う。
どこで覚えたのか、コジャレたことを言うなと笑う。
でもまてよ。
星も凍るような女って、どんなだ?