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ベル その1

バンドリのキズナミュージックでちゃんと譜面がジグザグしてるとこ好き。

「宴だあ~!」


「ワー! ワー!」


 食堂では俺たちの祝勝会が始まっていた。

今まで戦ってきたライバルたちが一堂に集い酒盛りが始まった。


「でさ~」


「ハッハッハ!」


 勝利の美酒を味わう俺たち。

激闘だったからな。

感慨も深い。


「ふ、さすがは我がライバルだ」


「ごめん誰?」


 どいつもこいつも強敵だったぜ!!!

俺のメモリーに永遠に刻まれていくことだろう。


「あのライライラさん……」


「ウィンディちゃんどうしたんですか?」


「指輪、こわれちゃいました」


 ウィンディが申し訳なさそうにもらった指輪を差し出した。

見れば宝石が砕け散っていて元の形が見る影もなかった。


「ああ、いいんですよ!」


 ライライラが屈託の無い笑顔でそう返した。

やさしい。


「まだいっぱいありますから!」


「えっ」


 しかし懐にはいっぱい同じ宝石がはめられた指輪があった!

その中から1つをぽいっと俺に渡してくる。


「また壊れたら言ってくださいね」


「あ、うん……」


 なんにせよこれにずいぶん助けられた。

しかし……一体これは何なのだろうか。

正直聞くのも怖かった。

ライライラは相変わらずニコニコと笑っている。


「お~いご主人様! 早くこねえと食べ物なくなっちまうぞ~!」


「すぐ行く」


 ベルに呼ばれた俺は沈みかけた気持ちを抑え込み、宴の輪へ戻るのであった。




 

「じゃあ俺たちは宿に行くよ」


「はい。ではまた来てくださいね」


 色々あってもう夜だ。

学院の寮があるのらしいが、さすがに泊めてもらうには狭いので俺とべルとウィンディは街の宿に泊まることにした。


 ライライラと別れて学院を出ていく。


 都会の街中を歩いていると、久々に感じる人の多さに何だか安心する。

何だかんだ俺にはこういうところの方が肌に合っているのかもしれない。


 ふと、路地裏が目に映った。

ああいうところは探検しがいがありそうだが、治安とかどうなんだろう。

まあ、時間も時間だし明日あたりにでも探検しよう。


 とか思っていると、路地の影で何かが動いたのが見えた。


「クゥゥン……」


 それは犬だった。

けもみみだらけの異世界にもいたんだな。


「マスター、あの生物はなんですか?」


 ウィンディが野良犬を指さす。


「犬だよ。今は主にペットとして扱われてるけど、昔は人と協力して生活してたって話だ」


 俺は姿勢を低くして野良犬に近づく。

逃げないところを見ると、元は飼い犬だったのだろうか。


「よしよし」


「クゥ~ン」


 人懐っこい犬なのか撫でたら気持ちよさそうにしていた。


「動物にはずいぶん優しいんだなご主人様」


「まあな」


 ベルがじとーっと俺を見ていた。

半分は当たっている耳が痛い痛いなのです。


 一通り撫で終わると犬は路地裏の奥へと行ってしまった。


 ふと、この世界に来る前のことを思い出す。

あの時助けた子犬はどうなったのだろうか。

きっとどこかで良い飼い主に巡り合ったと思いたい。


「なー、いこうぜ。疲れちゃったよ」


「わかったわかった」


 ベルに急かされて宿を目指す。

明日になれば今感じたぐらいのちょっとした未練など忘れているのだろう。


 そんなことよりハーレムだぜ!!!

やっひょーい!!!

俺は移動方法をスキップに移行した。


「わっ」


 とかなんとかしてたら人にぶつかっちゃったぜ。

背格好が俺より小さかったのでちょっとぐらついていた。


「ごめんなさい」


「……」

 

 

 

 フードを深くかぶっており、街灯の明かりだけでは顔が見えなかったけど怒ってないと信じたい。

俺は一言謝ってそそくさと退散する。


「あの……」


 さっきの人がなんか言いかけていたような気がしたが気づかないふりをするしかなかった。

気が弱くて済まない。






「じゃあもう寝るぞー?」


「ぐがー」


「もう寝てる!?」


 無事宿についた俺たちは一部屋だけゲットできた。

3人でぎゅうぎゅうになってベッドに横になる。


「うーん金……」


「ぐほっ」


 ベルが急に足をこっちへぶつけてきた。

いたい。

寝相悪くないですか?


 しかし、この異世界に来てこんなに安心して眠る夜は初めてかもしれない。

余裕が出てきた俺はこれからのことに思いをはせる。


 きっと輝かしい未来が待っているだろうたぶん。


「明日はもっと楽しくなるよね! ウィンディ!」


「そうですね!」

 

 へけって言え。


 些事は置いといて俺は心地いい眠りに入っていくのであった。



 




「ふああ……」


「おはようございますマスター」


「ああ、おはよ」


 目が覚めると疲労感がすっかり抜けていた。

ちゃんとした寝床はやはりいいものだな。


 すっかり温かい日差しが差し込んでおり、結構な時間寝ていたことがわかった。


 起きて周りを見回すとウィンディがぷかぷかと浮かびながら本を読んでいた。

ベルはどこかへいったのか姿が見えない。


「本おもしろいか?」


「おもしろいです」


 夢中になって読んでいるのか、どこか空返事だった。

しかしそんなものどこにあったんだろう。


「いつ手に入れたんだ?」


「朝、ベルさんからもらいました」


 金の申し子が他人に施しを与えるなんて……妙だな。


「ところでそのベルはどうした」


「さあ……さっきからすがたが見えませんが」


 さらにページをめくっていくウィンディ。

相変わらずの空返事だ。


 俺はもしやと思い、部屋にあるはずのアレを目で探すがどこにもない。


「ところで一千万が入った袋はどうした」


「さあ……そこにないですか」


「ウィンディ」


「だからそこに……」


 ようやく本から顔を離して置いてあったテーブルを指さすウィンディ。


「そこに……あれ?」


 一瞬の思考のあと、俺の方へギギギと音を立てるかのように顔を向ける。


 お互い無言で顔を見合わせた。

ピキリと石にひびが入ったような幻聴が聞こえる。


「……」


「……」


 合点がいった俺たちは天を仰いだ。


 あのクソウサの金の亡者がよ。

俺たちは顔を見合わせるとため息を深くついたのであった。













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