究極のフュージョン
なにこれ
「シルフィ―ド迎え撃て!」
「は!」
パワーアップしたウィンディとシルフィ―ドが肉迫する。
先ほどまでとは違い、ウィンディの勢いがさらに増していた。
「てやああああああああ!」
「はああああああああ!」
二体の精霊の力がぶつかり合う。
吹きすさぶ暴風と衝撃波で嵐が巻き起こり、台風の目となっていた。
あっさりと防がれていた魔法攻撃もわずかずつヒットしている。
ものすごいパワーアップだった。
だが……。
「ウッ……」
俺は急な脱力感に足に力が入らなくなる。
今までこんな状態になったことがないのでわけがわからない。
ホワイ? 一体なぜ……?
「何をしたかわからないがシルフィ―ドと拮抗するほどの魔法だ。それを従える術師の魔力消費量は並みではないはず……」
マジか。
ウィンディ半端ないって!
震える足を気力で支えてなんとか踏みとどまる。
ここで気持ちの強さまで負けてしまったら相棒に申し訳が無い。
「マスター!」
「心配すんなよ……! 昔から空元気だけは立派なもんだぜ!」
心配そうにこちらを伺うウィンディに俺は力いっぱい笑顔を見せた。
「なるほど……さすがはウェルマックス様と同等の魔力を持つ精霊術師。伊達ではないか」
「そうです! うちのマスターは強いんです!」
さらに激化する魔法の打ち合い。
まるで弾幕シューティングのような光景に圧倒されてしまう。
そして学院に広がる被害は現在のレートに換算するとしめて1000万くらいか。
すまない。
「なるほど互角か……だが」
ウェルマックスが不敵な笑みを浮かべる。
それに呼応するかのようにシルフィ―ドが動いた。
「これで片をつけます」
「はっ」
さらに舞うシルフィ―ド。
するとその姿が一瞬のうちに消え去った!!!
「一体どこへ?」
きょろきょろと周りを見渡すウィンディ。
フィールドに吹き荒れる嵐のせいか、レーダーとしての機能が妨げられているようだった。
俺はいったん空を見上げて冷静になろうとする。
「ッ」
しかし、消えたシルフィ―ドは上空にいた!
何か巨大な力をため込んでいた。
果てしなくヤバい何かを感じる。
「上だ!」
「!」
俺は奴の居場所を伝える。
それを聞いたウィンディも力を蓄えていた。
「この一撃でフィールドもろとも吹き飛ぶがいい!」
「エッ」
まさかの殺人予告に場が凍った。
バトルランキングの頂……それは命は駆けたデスゲームだった。
冗談じゃなくヤバいって……体中が悲鳴を上げている。
「私だって……負けません!」
だが、ウィンディも両手のひらを前に突き出しその流れで腰へと両手を持っていく。
手に包むように魔力の方がまりが大きく膨らんでいた。
「消し飛べええええええ!!!」
シルフィ―ドからごんぶとなビームが発射された。
あんなのくらったら死ぬ。
「波―――――ッ!!!」
ウィンディも負けじとビームを放った!
がんばれ!
二つのビームが激突し、大きな地鳴りが響く。
2人の精霊の力が激しくぶつかっていた。
それを見つめるギャラリーも固唾をのんで見守っている。
しかし―――。
「ぐぐぐっぐ……」
ウィンディのビームが押されていた。
たった少しのわずかな力の差が積み重なり、徐々にシルフィ―ドの勢いが増していく。
「勝ったな」
ウェルマックスが勝利を口にした。
本当にそうなのか……?
「違うッ」
「……なに?」
俺には確信があった。
こんなところで終わる俺たちではない。
出会った時から今までの記憶がよみがえる。
―――――。
――――。
―――。
ーー。
ー。
あんまり思い出がなかった。
だが、このまま終わるわけにはいかない!!!
俺にはけもみみハーレムを作るというやれやれな野望と使命がある!!!
「ウィンディ! アレを使うぞ!!!」
「マスター! アレって……!」
「決まってんだろ!!!」
「!」
「合体だあああああああ!!!」
「!?」
俺は地を蹴りウィンディの元へと走り出した。
驚愕するウィンディを無視して彼女に手を伸ばす。
「マスター! 危険です! 離れて……!」
「俺の全部の魔力を使って……そして勝つんだ!」
手をそっとウィンディの背中へと押し付ける。
そして俺の全魔力をウィンディへと流し込む。
「ッ!!! これなら!!!」
意外にも効果があったのか、ウィンディの気迫がさらに増していく。
すると押され気味だったビームが再び拮抗するに至った。
「精霊拳……四倍だあああああああ!!!」
「な―――ッ!?」
そしてついにシルフィ―ドのごんぶとビームを押し返した!!!
やった!!!
魔力の奔流に飲み込まれていくシルフィ―ド!!!
勝った!!!
「バカな……シルフィ―ドが敗れるとは……」
ウェルマックスも大層驚いていた。
俺もびっくりだ。
最後の悪あがきはしとくに越したことはねーぜ!!!
ふらっと地面に落ちてくるシルフィ―ド。
大ダメージを受けてもはや立ち上がれない様子だ。
「か……勝ったんですか……?」
ウィンディもこの勝利への驚きに実感がわいていないようだった。
「ワアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」
フィールドには大歓声が沸き上がる。
盛大な拍手と声が俺たちを祝福していた。
「ああ! そうだぜ!」
「……よかっ……た……」
ウィンディのすがたが以前のものへと戻っていく。
全力を振り絞り精魂疲れ果てて気を失ったのか、倒れこんでしまっている。
俺は彼女を抱き起し、とりあえず背中に背負う。
「完敗だよ。君たちがここまで強いなんて思わなかった」
「ウェルマックス……」
ウェルマックスもシルフィ―ドの肩を支えながらこちらへ近づいてくる。
負けたというのにその顔に悔しさは無かった。
敵ながらあっぱれな男である。
「おめでとう。これがランク1位のバッジだ」
「フッ、ああ」
そして彼から差し出された手のひらにはバッジがあった。
俺は感慨深くそれを受け取る。
「ランクバッジ……ゲットだぜ!!!」
俺はそのバッジを観客へと見せびらかす。
ワーッとさらなる声が会場を満たした。
「ケント! ケント!」
「ケントさ~ん!」
「ご主人様!」
俺の名をコールする観客たち。
今ここにあらたなる1位が生まれたのであった。
かくしてこの学院での戦いは幕を閉じる。
しかし、この出来事がこれから起こる新たな戦いの狼煙であったことなど俺は知る由もなかったのだ……。