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魔女

FF10やり直してるんですけどキマリのスフィア盤だけ育ててません

なぜでしょうか?

 それは世の中が力であふれていた乱世の時代。


 魔女と呼ばれる存在が世界を大きく揺るがしていた。


 魔女たちは凶悪な魔物を倒し、災禍をしずめてきた。


 その人ならざる力を振るい、人々からは英雄と呼ばれる一方で、しかしこうも呼ばれていた。


 怪物、と―――。







「ねえお母さん」


「なぁに? ライライラ」


「今日はお仕事ないんでしょ?」


「うん。ないわよ」


 あれはそう、あの娘が……ライライラがまだ小さい頃のことでアルか。


「じゃあ、また魔法教えてよ! バーって火を出すやつ」


「うーん、アレはちょっと危険だから……別のにしない?」


「えー」


 その時はまだ、あの子はごく普通の女の子で、魔法に目を輝かせるような純粋な子でした。


「ごめんくださーい」


「あ、お客さんだわ」


 私は遠路はるばる親友であったライライラの母、マキコを訪ねてやってきていました。


「どうも。久しいアルなマキコ」


 素朴な家の扉を開けて顔を出した親友の顔を見た時、すごく安心したのを覚えています。


「あらレイレイ? ホント久しぶりね……あの人が亡くなった時以来だったかしら……って、やけに荷物が多いわね?」


「これはまあ……というか、いや~そんなに経つアルか。魔法の研究ばかりしているとどうも時間の感覚が……」


 長い時間を共にした親友でしたが、彼女が結婚してからというものお互いも仕事があったりで、会うのも10年に一回とかそんな感じだったアル。


「ねーお母さん」


「おや、その娘は……」


 母の服を引っ張る女の子、ライライラは物怖じせず私の前でも母に甘えていたアルな。


「大きくなったでしょう? 娘よ ほら、挨拶して」


「ライライラです。8歳です」


 行儀よくちょこんと頭を下げて挨拶するライライラ。


「ほう、まだ小さいのに礼儀正しいアルな。私はレイレイと申すアル。一度会ったことはあって……って、まあ、覚えていませんよね」


「えっと……ごめんなさい?」


 なんて、子どもに何を話したらいいのか……あまりそういう経験がないのでちょっと戸惑いました。


「まあ中に入って。お茶を出すわ」


「お邪魔するアル」


 誘われるがまま家の中に上がる私。

家の中はとても魔女が住んでいるとは思えないくらいに普通だったアルな。


 ダイニングテーブルに向かい合って座る。

差し出されたお茶を遠慮なく一口飲む。


「いや~田舎でスローライフがしたいと言い出したときはなんと奇特な、と思ったアルが、ここは落ち着いてていい場所でアルな」


「あなたが住む穴倉みたいなところの淀んだ空気と比べたらそりゃいい場所でしょうよ」


「あのパンクな感じが良いのでアルよ」


「そういうもんかしら」


 当時、私は王都の闇市であんだーぐらうんどな生活をしており、気持ちいい緑に囲まれたあの家が少しうらやましくもありました。


「んで? そんな都会からわざわざ来た理由はなんなの?」


「いやあ……実は……」


 そこで私がマキコを訪ねた理由―――、世の中の魔女への風当たりが悪くなっていること、それを煽るように技術の発展や魔学の進歩がどんどん成長していった……という説明をしました。


 奇跡とうたわれた魔女も、時代を経て力ある恐怖へと変わっていった……そんな時代です。


「―――、そう。まいったわね」


「王都では最近、魔学の研究がうんと進んで魔物や災害に対する対抗手段が強くなってきたアル。それもあってか、どうも魔女に対する態度も変わってきました」


「まぁ、その気持ちはわからんでもないけど……。さんざん私たちを頼りにしておきながらいい手のひら返しよ。ムカつくわね」


 腕を組んでそう怒るマキコ。

でも、彼女の昔を知る私にはとてもおかしなものに映って、つい笑みがこぼれてしまう。


「マキコも丸くなったアルな。昔は一にイケメン二に無双と好き放題やっていたアルのに」


「あれは……若いときだけよ。旦那ができてからは……ほら」


 マキコは恥ずかしそうに昔を懐かしんでいた。


「これが子持ちの母になるってことアルか……寂しいアルな……」


 よよよと涙を一粒流す私。


「ちょ、そんな泣かなくても……」


「バァ。ただの目薬アル。引っかかったアルな」


「あん?」


「ゴメンナサイ」


 私は妙にいたずら心を抱かせるマキコと、ずっとそんな風にやりとりしてきたのですよ。


「とまあ冗談はさておき、世間の動向には注意するアル。時代も変わろうとしています。私たちの居場所はもう限られているのかもしれません」


 きりっと表情を改め、真剣にそう言う。


「……そうね。気を付けるわ」


 マキコも私の雰囲気を感じ取ったのか、しっかりと頷いてくれた。


「なんか虚しいアルね。この世界に来たばかりの頃は毎日が楽しくてしょうがなかったのに」


 カップの中の紅茶に映った自分を見つめながら、私はそう言葉をこぼした。


「どこの世界も現実は理不尽だらけってことよ」


「ですね」


 私が以前いた「世界」でも、そういう壁は常にあった。

だからその言葉はすごく理解できたアル。


 数分、静寂が場を漂った。


 次に口を開いたのは、私でした。


「とまあそういうわけで……ここに居候させてもらうアル」


「そうね……って、ハア?」


 がたっと椅子から立ち上がったマキコ。

内心クックックっと笑ったものでアル。

 

「いや、ちょうど実験で家に穴が空いちゃったアル」


「待てや」


「頼むアル~、王都ではそれはもう私を見る人たちの目がこわくてこわくて……!」


「それはアンタ自身にも問題があるんでしょうが」


「そうでもアルが!」


「自覚があった!?」


 私の話しは別に嘘ではありませんでした。

実験の事故で家が住める状態ではなかったことも、自分を見る周囲の目が変わっていったことも。


 だからでしょうか。

親友を心配しての忠告のため……というよりかは、ただ単に私が寂しかったから、その暖かい懐かしさを感じたくてマキコを訪ねたのかもしれません。


 それから私は彼女の家に厄介になることになりました。





「ねーレイレイ」


「なにアルか」


「魔法教えてー」


 ライライラは好奇心旺盛で、人見知りせず、やりたいと思ったことはどんどんやっていく……そんな元気な女の子でした。


「ふむ、それなら今研究中の爆破魔法を……」


「なんちゅーもん教えようとしとるんじゃコラ」


「ぎゃあ!?」


 丸めたポスターのようなものでマキコにツッコまれる。

あの時のああいうバカなやりとりも、貴重な時間だった思います。


「え~私もかっこいい魔法使いたいよ~」


「ダメ。ほら、お勉強のつづきをしましょう」


「も~」


 どうやらマキコにはライライラに魔法を教える気は無かったようです。


 せがまれても教えるのは魔法と言えなくもない魔力の扱いだったり、魔学であったりと、どれも誰でもできるようなことばかりでした。


 たぶん、魔法などと無縁な普通の人間に育てたかったのでしょう。


 自分と同じ思いをしてほしくない、そんな思いが強かったはずです。


 それからしばらく平和な日々が続いて……でも、淡々と悲劇の幕は上がっていったのです。





「……今日、近くの街に行ってきたアル」


「……そう」


 ある日、食料の調達がてらに情報を集めようと一番近い街へと赴きました。

でも、そこで入ってきた情報はとても残酷なモノでした。


「王都に住んでいる魔女が反逆罪で処刑されたと、そういう話しを聞きました」


「……フィーネ、でしょ」


「知っていた、アルか」


 私の話しを聞いたマキコは頷き、悲しそうに目を伏せました。


 そのことを話す私も、穏やかではなかった。

処刑された魔女はかつての仲間だったアル。


「誰よりも平和を願っていたあの子がそんなことするはずないし……そうでっちあげられたんでしょうね」


「私もそう見ています。……仲間が殺されたというのにいけませんね、こうも冷静さが先にくるのは」


「仕方ないわ。私も、あなたも、年を取りすぎたのよ」


 お互いに色々あった。

一時の別れも、永遠の別れも数えきれないほど経験してきた。


 それでも……仲間の死を心の底から悼めない自分に嫌気がした。


「ねえ、レイレイ」


「なにアルか」


「もし、私になにかあったら……その時はあの子をお願い」


「……彼氏いない歴イコール年齢の私に言うことアルか?」


「茶化さないで。お願い」


「……大丈夫。きっと、そうはならないアル。きっと……」


 両手を握りながら、かつてないほど真剣に私に願いを口にする彼女に、私は希望を口にすることしかできませんでした―――。


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