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ライライラ その4

ひぐらしの郷壊し編がダークシグナー編とかクラッシュタウン編とか一部で呼ばれてるのおもしろすぎる

 王都ネイバーランドで、一際異彩を放つ魔法処レイレイ。

全時代の遺物のように時間から取り残された雰囲気の怪しさはまさしく魔女の館といったところか。


 猫耳娘の少女―――ライライラは手慣れた様子でその玄関を開き、中に入る。


「レイレイ」


「おや、最近だと珍しいアルな。使いではなく本人とは」


 カウンターの奥の部屋から姿を現したのはこの店の主レイレイ。

その見なりは黒いマントと大きな帽子もあわさりまさに魔女と言う名がふさわしい。


 そこに不釣り合いなサングラスをかけていることを除けばだが。


「まずはこれを」


 ライライラが頑丈そうなケースから数本の試験管を取り出し、机に置いていく。

その中身は真っ赤な液体だった。

 

 それを見たレイレイは静かに唸った。


「……黒龍の血アルか。よく手に入りましたね」


「ええ、まあ」


 表情一つ変えずになんでもないことのようにライライラはそう言う。


 この容器一本分でも1人の人間が死ぬまで生活できるだけの値がつくことを知っているレイレイだったが、彼女の性格をよく知っているようであまり詮索はしなかった。


「とりあえず一本さし上げます。これで今までのツケは十分払えるはず」


 ライライラはその中の1つをレイレイへと差し出した。


「なんと、小娘にしては殊勝な心掛けですね」


 珍しいものを見るように目をぱちくりさせるレイレイ。

しかし、すぐに上機嫌にそれを受け取る。


「で、今度は何が欲しいアル」


 そしてライライラの注文を聞くレイレイ。


「昔何度か購入した素材一式を」


お客の注文を聞いたその顔は怪訝に思っている様子だった。


「〇ミカルXの分アルか? またあんなもの作っても副作用マシマシの魔力増強薬ぐらいしか大した使い道はならないアル。もったいない……」


「……いいから早くお願いします」


 少しだけイライラした様子のライライラに、レイレイは少し戸惑いを見せながらカウンターの奥の部屋に商品を取りに入った。


 色々とごそごそ音を立て探しているレイレイ。

ライライラはカウンター机を背に腕を組んでもたれかかっている。


「そういえば、この前来た使いはお友達アルか」


「……誰のことですか?」


 返事に一瞬つまったようにライライラはそう答えた。


「変な精霊を連れた少年アル。名前は……ケントだったでアルか」


 ビンの中に素材を詰めていきながら思い出しながら話すレイレイ。


「……いえ、ただのお知り合いですよ」


 ライライラは静かに目を閉じた後、そう否定する。


「そうアルか」


「ええ」


 レイレイも特に追及はしない。

その一歩引いた姿勢ではあるが、心配するようなレイレイの声色は、お客と店員というようりも旧知の間柄を想起させるものだった。


「友達なんかじゃ……ないんだから」


 ぽつりとそうつぶやいたライライラの顔は下を向いていた。





「これで全部アル。お代は……しばらくは良いアル」


「そうでしょうね」


 買ったばかりの謎の素材を鞄へと詰め込む。

量がたくさんあるためギュウギュウになった。


「それで、結局何を考えているアル?」


 なにかに勘付いていたのか、レイレイがサングラスを取ってそうライライラに問いかけた。

明かされた彼女の瞳は右と左で色が違って見える。

燃えるような赤い瞳と大海のような青い瞳だ。


 その神秘的な両目に見つめられたライライラは答えにくそうに、それでも言い出そうか迷っているように見えた。


「……あなたに迷惑はかけません」


 唇をギュッと噛むようにそう絞り出した。

それを見たレイレイはとても悲しそうだった。


「まあ、私に何かを止める資格はないアル。でもあんまり悲劇を生むようなことはしてほしくないですね」


 再びサングラスをかけ直し、乾いた笑いでそうお願いを言うレイレイ。


 ライライラも心苦しいのかずっと顔が曇っていた。


 その空気に耐えられなくなったように玄関のドアノブに手をかける。


「では、またいつか」


「ええ。またいつか」


 短くその一言で別れをすませる2人。


 カランカランと音を立てながらライライラは店を出ていった。




「……ベル、聞こえるアルか?」


 誰もいなくなった空間でレイレイが誰かに問いかけた。


 手には板状の魔導具を持っており、そこからわずかに音が聞こえた。


『―――、こちらベル。聞こえてるぜレイレイの姉貴』


 音声はしだいに大きくなり、少女の声であることがわかる。


「状況はあまりよくないアル。例の本、本当にはちゃんと渡しておいてくれたんですよね?」


『何度も確認しなくてもちゃんと渡したよ、読んでるかは知らないけど』


 かなり念を押して相手から確認を取っている、

とても重要な事柄であることがわかった。


「なら良いアル。引き続きあの娘を頼んだアルよ」


『了解。―――ったく魔女ってのはどいつもこいつも人使いが荒いな……』


「聞こえてるアルよ」


『わっとっと! じょ、冗談だよ』


 ザーザーとノイズを出しながら会話相手が慌てて弁明する。


「とっとと仕事に戻るアール!!!」


『はいーーー!!!』


 プツッっという音共に会話が切れられた。

はあっとため息をついて窓の外を見つめるレイレイ。


「この責任は取ってもらうアルよ。異世界からの転生者さん」


 ここにはいない誰かにそう言葉をかけたのだった。




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