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ウィンディ その3

「ドラー!」


「うぎゃああああああ!!!」


「うぎゃああああああ!!!」


「2人ともー!」


 ドラゴンと死闘を繰り広げること数分、俺たちは非常に劣勢だった。

伝説のモンスターの名は伊達ではない……非常に恐ろしい存在だ。

念密に練り上げた作戦もむなしく失敗していた。


「ハァ……ハァ……どうすれば……」


 フィールドの暑さもありいつもより体力の消耗が激しい。

なにか逆転の一手はないのか……。


「マスター!」


 ウィンディが覚悟を決めたような表情で俺を呼んだ。

すると俺はあいつが何をしたいのか直感的に理解する。


「指輪か……!」


 依然ウェルマックスの精霊シルフィ―ドと戦った時、謎の進化を遂げたウィンディ。

あの力なら突破口になるかもしれない。


 しかし……いいのだろうか。


 俺は言いようのない不安に襲われる。


 いくら指輪の力とはいえ、あんなパワーアップが簡単に出来てしまうものなのか。


「ケントさん!」


「ハッ」


 ライライラの声を聴き現実に戻る。

一瞬の思考の間にドラゴンが口から火球を撃っていた。

寸前のところで避けることに成功する。


 地面に当たった火球は大きく爆発を起こしていた。

あんなものをくらえば無事ではすまなかっただろう。


「マスター! 許可を!」


「くっ……ウィンディ!!!」


「はい!」


 やむをえず俺はウィンディに許可を出した。

このままでは全滅もありえる。

もはや考える時間はない。


 光を放ちながら髪をさらに伸ばし、神々しい服装へとチェンジするウィンディ。


 さきほどまでとは大きく魔力の波動が変化していた。


「出た! ウィンディちゃんの進化フォーム!」


「よし……行け!」


「はい! てやあああああああ!!!」


 すごい勢いの風の刃を撃ちだすウィンディ。


「ドラァ!?」


 今までのどんな攻撃よりもドラゴンの体勢を崩している、

ダメージは大きい様だ。


「やったか!?」


「やったか!?」


「ドラア!!!」


「うぎゃああああああ!!!」


「うぎゃああああああ!!!」


「お二人ともー!」


 だが……、ドラゴンの生命力は不死身のように高かった。

火球の連続を食らった俺たちはすっごい吹き飛ばされてしまう。


「もうだめだ……」


「マスター……」


 ウィンディもかなり消耗しているのか倒れたまま起き上がれていない。


 俺もダメージが蓄積して痛みに気絶しそうになる。 


 だめだ……勝てない。

奴を倒す手段は……ない。




「まだです!!!」


 閉じかけていた目をカッっと開く。


 そして次の瞬間大きな爆発が轟音と共にやってきた。


 一体何が起こったのか。


「ド、ラァ……」


 ドラゴンを見ると何かの攻撃を食らったように頭をのけぞらせている。


「試作機を持ってきて正解でしたね……」


 ライライラのすがたを見ると、何か筒状のものを担いでいた。

いや、あれは……!!!


「ロケットランチャー!?」


 ものすんごい現代兵器をライライラは使用していた。

一体あんなものをどこから……いや、無駄に重かったあの大荷物か!


「いい名前ですが、この武器の名前は魔砲です」


 魔法ではなく魔砲。

これは……勝てるかもしれない。


「ドラ……!」


 しかし、それがドラゴンの怒りを買ったのかめちゃくちゃライライラを睨んでいる。


「ケントさん! 今のうちに態勢を整えてください!」


「けど……ウィンディがもう!」


「あきらめないで! あの時のような奇跡を起こすんです!」


 奇跡―――、シルフィ―ドを倒したときのことを言っているのだろうか。

そんなもの都合よく何度も起こせるわけが……。


「マスター……」


「ウィンディ……大丈夫か?」


「はい……でも」


 何とか動けるだけの力は取り戻したのだろう。

けど、これ以上の戦闘は出来ないように見えた。


「ああ……無理はするな」


 もはや一か八かにかけるしかない。

奇跡なんてものは起こらないかもしれない。

だが、俺は俺の命を懸けて仲間を守る……!!!


「さあどこからでも……」


「うおおおおおおおお!!!」


「ケントさん!?」


 俺はライライラをかばうように突撃した。

ドラゴンに向かって灼熱のフィールドを駆ける。

もはや残された手は特攻しかない。


「ドラァ!」


 ドラゴンが繰り出す火球を次々と避ける。


 あと少しで……ドラゴンに近づく。


 



 だが―――。



 途端に足の力が抜けていく。

体が前に倒れかけるが踏ん張れない。

もう俺には攻撃する力など残っていなかったのだ。


「そんな……! ケントさん頑張って!」


 ライライラの声援も今の俺には作用しない。


「マスターーー!!!」


 ウィンディの悲痛な声が聞こえる。

瞬間、今までの思い出が脳裏を駆け巡る。


 これが走馬燈ってやつか……。

顔を上げればドラゴンの火球が目前に迫っていた。


 ウィンディ、強く生きろよ……。

俺は訪れる死を予感し、静かに目を閉じたーー。










「マスターーー!!!」


 ウィンディは手をばしながら主を呼ぶ。


 このままではケントは火球に消し飛ばされてしまうだろう。


(力が……もっと私に力があれば……)


 歯噛みするウィンディの脳裏には今までの日々が駆け巡った。

あの輝かしいきらきらとした毎日を失いたくない。

その思いが心に強く反響する。


 そして、その強い思いに答えるかのように指輪の輝きが黒く、さらに黒く濁っていく。


(もっと……もっとチカラヲ……)


 次の瞬間ウィンディの体から黒い霧のようなものがあふれ出た。

延々と噴き出す霧がウィンディを包み込んでいく。


 渦巻く霧の中で激しい稲妻が走っていた。


 やがて激しい衝撃がまとっていた霧を吹き飛ばし、ウィンディが姿を現す。




 その姿は、神々しい聖女のようなものではなく、まるで目の前にいる伝説の黒龍のような漆黒の衣装に身を纏っていた。


「ケントさーーー」


 その場でただ見ているだけであったライライラの横を黒い閃光が走った。


 その閃光はドラゴンが放った火球へとぶつかりそれを叩いて砕く。

そしてそのままドラゴンの体を貫いた。


 体に穴が開いたドラゴンは鮮血を流しながらパタリと倒れ、そのまま動かなくなっていった。


 閃光はやがて上昇していき……その動きを止めた。


 舞い降りるようにして姿を現したのはウィンディだった。

まるで桁外れの力が今の彼女には溢れている。

見るものを畏怖させるようなどす黒いオーラ。そのおぞましいほどの力で伝説の黒龍さえも打ち破ったのだ。


 目を疑うような一連の光景に、ライライラはただ、目を細めて笑っていたーーー。

 

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