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伝説の黒龍

火山で思い出す言葉はマラソン

「あ、ケントさん! こっちですよ!」


「ああ」


 俺たちは必要なものを買いそろえ、ライライラと合流した。

ここからは気を引き締めてかからなければ。


「じゃあ馬車を予約してるんで乗りましょう」


「馬車……?」


 そんな便利なものがあったんですか?


「グレート火山はけっこう遠いんです」


「ふーん」


 それで色々動き回ってたのか。


 ライライラに導かれバス停……否、馬車停にたどり着く。


 十数人乗れるだろう立派な馬車があった。

中に入ってみるともうお客さんが何人か乗っていた。


「さあさあこっちに座ってください」


 慣れた動きで端っこの席を確保するライライラ。

俺たちも席へと座る。


「なんだか楽しいですねマスター」


「そうだな」


 多分最初だけだと思うが。

これから長い時間この馬車に揺らされるかと思うと気が滅入る。


「というか、そろそろなんでドラゴン退治なんてするのか教えてくれよライライラ」


「それは依頼に書いてある通り、村や街を襲う可能性があるからで……」


「ペロ……これは嘘をついている味だぜ!」


「なんで舐めたんですか!?」


 俺はライライラの顔を舌で舐めると本音を看破した。


 とりあえずの事情は把握したい。

俺の問いにライライラはしぶしぶと頷く。


「ドラゴンはモンスターの中でも伝説の存在です。その体に流れる血やうろこ、牙にいたるまでとても希少な素材なんですよ」


 伝説って? ああ!


「そんなもの集めてどうするんだ?」


「この世のすべてが手に入ります」


 規模がデカすぎる。

どうなってるんだ。


「ドラゴンの素材には濃い魔力が流れていて、それを使って作った魔導具は従来の性能をはるかに超えるものになるんです」


「なるほど」


 一応は理解はできた。

しかし、そんなもの作ってどうするんだ。


「来季の課題にこれを提出すれば学院での名声はすべて私のものになり、将来も安泰になるってわけです」


 富、名声、力この世のすべてを手に入れたいらしい。

でもそれに命を懸けるほどの価値があるのだろうか。


「ちなみに報酬額を見てください」


「?」


 クエストの詳細には報酬金2000万と書かれていた。

すごい。


「どうです? 私は素材を手に入れる。あなたはお金を手に入れる。winーwinでしょう?」


「そうかな……そうかも……」


 若干勢いに流されてそうな気もするが、お金は非常に魅力的だった。

クソウサに取られた分もリカバリーできるのはありがたい。


「でも……ドラゴンを倒すなんてできるんでしょうか」


 ウィンディが疑問を口にした。

無理もない。

俺もドラゴンがどれくらいの強さを秘めているのか想像できないし。


「大丈夫ですよ! 私たち3人が揃えば不可能なことはなにもありません!」


「ライライラ……!」


「ライライラさん……!」


「フォア・ザ・チームの精神ですよ!」


 それはちょっと違くないか?

チームなにコーンだよ俺たち。


 などといい感じに乗せられた俺たちは念密にドラゴン対策を練るのであった。








「お気をつけて~」


 凝り固まった体をほぐしながら馬車を降りる。


 長い時間揺られてたどり着いた目的地グレート火山。

そこでの景色は見渡す限り真っ赤っかだった。


「さあ張り切っていきましょう!」


「お~!」


「うおおおおおおお!!!」


 俺は初めて見る火山にテンションが上がり雄たけびを上げる。


「さすがケントさん。燃えてますね」


「ああ! これぞ冒険って感じだな」


 今まで名ばかり冒険者だったがやっとらしいことができる。

ワクワクを思い出していた。


「マスター、ライライラさん、火山の奥からモンスターの気配がします」


 ウィンディが敵の気配を教えてくれる。

やはりこういう時には頼りになるやつだ。


「ああ……わかったぜ」


「ばっちこいです!」


 俺たちは気を引き締めて火山を登っていく。


 黒い岩とマグマに囲まれていて熱気もすごい。

こんな場所で生息するモンスターはさぞ屈強なのだろう。


 なんてことを考えていると、ライライラが忙しなくフィールドを駆け回っていた。


「おいおい、あんまり俺たちから離れるなよ」


「すいません。貴重な鉱石やら昆虫がいっぱいあって……つい」


 てへぺろと舌を出しておちゃめに謝ってくるライライラ。

あざとい。


「見てくださいマスター、モンスターがいます」


「ほう」


 ウィンディが何かを見つけたのか指で指し示す。


 見るとゆっくりゆっくり移動している恐竜みたいなのがいた。


「あれは草食で温厚なモンスターですから大丈夫ですよ」


「詳しいな」


「学院で勉強してれば嫌でも覚えますから」


 ライライラの解説を聞きながら火山ツアーを満喫する。

道中、肉食のモンスターも出現し何戦か刃を交えたがさしたる問題ではなかった。

なぜなら俺は強いからだ。


「マスターってやっぱりすごいですね~」


 買ってきたお菓子をむさぼりながら、ウィンディが俺を褒め称える。

口にいっぱいかけらがついてるし。

すっかり遠足ムードになっていた。


「それにしても熱いですね……」


 この熱気の中歩いていた俺たちはすでに汗だくだ。

やけに大荷物のライライラは特に苦しそうだ。


「ちょっと持ってやろうか?」


「え……いいんですか?」


「ああ。この辺で好感度を上げとくに越したことはないからな」


「ケントさん……」


 俺はライライラから鞄を受け取る。


「重っ」


 やけにずっしりとした重量感だ。

一体何が入っているのやら。


「大丈夫ですか?」


 少し遠慮気味に俺の顔色をうかがってくる。

いかんな。

しっかりしないと。


「フッ、俺にはチートがあるんだぜ?」


「キャーかっこいいです!」


 決め顔で強がりを見せた俺は力を込めて歩く。

しんどいけどまあ頑張ろう。






 さらに奥へとやってきた俺たち。

だが、果てしなく上昇していく体感温度に気が滅入っていた。


「ライライラ、ドラゴンはまだ奥なのか?」


「待ってください、えーと……」


 ライライラが地図を取り出し何かを確認している。


「多分もう少しだけ先に行けば巣があるはずです」


「そうか……」


 どうやらあともうひと踏ん張りのようだ。


「ウィンディ、大丈夫か?」


「はい。風の精霊ですから」


 どうやら暑さへの耐性があるらしい。

羨ましい限りだ。


 水分を取りながらさらに奥へと入っていく。


 するとウィンディが急にビクンと体を強張らせていた。


「どうした?」


「います……この奥から強大な魔力が流れてきました」


 どうやら目的地に着いたようだ。


「では、作戦通りに」


 ライライラが俺たちに確認を取ると、後方に下がる。

戦闘能力のない彼女は支援を担当する。


「よし……行くぞ」


 俺たちは一斉に駆けだした。


 するとかなり開けた場所へと出る。


「いました……! ダークネスドラゴンです!」


 ライライラが叫んだ。


 そこには漆黒の体と巨大な翼を持ったドラゴンがいた。

でかい。


「ドラアアアアアアアア!!!」


 俺たちを視認したドラゴンが咆哮する。

やはりというかかなりの迫力だった。

おもわず体がすくみかける。


「ウィンディ!」


「はい!」


 ウィンディに俺へ魔法をかけさせる。

これによって俺のスピードは一定時間上昇する。


 俺は大地を大きく蹴り、大ジャンプした。

 

 その勢いのままドラゴンの頭に拳を振り下ろす。


「ドラァ!」


「ッ!」


 繰り出した攻撃はたしかにヒットした。

だが、さすがにワンパンでは倒れてくれない。


「ドララァ!」


「うお!?」


 宙を舞っていた俺はドラゴンが振り回す尻尾によるカウンター攻撃を受けてしまった。

かなりの距離を吹き飛ばされる。


「風よ!」


 ウィンディが吹き飛んできた俺を魔法で減速させた。


「サンキュ」


「ご無事でなによりです」


 俺と2人並びながらドラゴンを注視する。

どうやらこの戦いは一筋縄ではいかないようだ。


 ここから先は命を懸けた激戦になるだろう。


 かくして、一世一代のがんばりモンスターハント物語が幕を開けたのであった―――。






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