ライライラ その2
ライナーナナしゃん梨花ちゃまスバルきゅん合わせて曇らせ四天王ってネットで言ってるの見つけてお茶吹いた。
それから時間は進み、俺が冒険者になってから一週間がたった。
冒険者という名前ではあるがディグアウトしたりリーバードとかと戦ったりはしなくて、半ば街の何でも屋さんという感じだった。
なんの信頼もない俺が仕事にありつけるというのも冒険者という肩書があるのだから文句は言えない。
だが俺はいつか成り上がって見せる。
いずれけもみみ美少女ハーレムを掴んでやるんだ。
「そうだなウィンディ?」
「何か言いました?」
「いえ、なにも」
という脳内妄想を繰り広げていた俺だった。
「見てくださいアレが今日のターゲットです」
「ああ……例の物を」
「ここに」
サッと後ろからとあるモノを取り出すウィンディ。
何やら物騒なことを言ってしまったが……なにも特別なことではない。
王都の住宅街を俺たちは歩いていた。
今日のクエストはお使いクエストだ。
なんとかイーツってやつだ。
俺とウィンディが手に持っているのもただの買い物袋だ。
中には野菜やパンが入っている。
こんなこともしなければならない冒険者とは名ばかりすぎる。
しかし仕事への理想と現実のギャップはよくあることだ。
俺は高校生ですけど。
目的の住所までたどり着いた俺たちはベルを鳴らす。
「ごめんくださーい クエストを受けてきたものです」
「は~い」
ガチャリと玄関のドアを開けて家の主人が出てきた。
「はいじゃあこれ代金ね」
「まいど」
俺は手数料諸々をいただき現場を後にする。
今日でこれを10回ほどやっていた。
「ふああああ……お疲れさまですマスター」
「お互いな」
ウィンディはあくびをしながら俺をねぎらってくれた
精霊にさせるには役不足かもしれない仕事だが彼女は文句の一つもこぼさない。
ありがたいかぎりだ。
後でジュースを奢ってやろう。
しかし、この状況にいつまでも甘んじていたくはない。
展開が欲しいところだ。
「ウィンディはどういう展開が来てほしい?」
「? てんかい……とはどういうことなんでしょうか?」
「……?」
話が通じない。
ヤバいこいつ普通の人だ(精霊)!!!
「なにかしたいこととかあるか?」
「んー……もっと本が読みたいです」
インドアな精霊だ。
誰に似たんだ誰に。
「しかし本か……けっこう高いらしいな」
この世界では本はすごく高価だ。
これが時代か……。
電子書籍の開発が待ち遠しい。
「あ、無理しないでください。生活がいちばんだいじですから……」
そうだよ。
と、言葉に仕掛けてグッと飲み込む。
「さあ、次の仕事にまいりましょうマスター」
なんでもなかったかのように仕事にもどろうとするウィンディ。
すまないやるだけのことはやったんだが……!
さて、次の配達先は……。
「学院だ」
俺はメモを確認する。
するとそこには学院と書いていた。
「学院なら本とか置いてあるんじゃないか?」
「え!? ほんとうですか!」
キラキラと目を輝かせて俺を見上げるウィンディ。
これはワンチャンあるでぇ。
「依頼人はライ……ライライラ?」
何と知人だった。
もとい、ヒロインだった。
メモにはびっしりと聞いたこともないような品物が記されている。
今度はどんな兵器を作り出す気だ。
「これとこれとこれは魔導具屋さんに売っているらしいですよ」
ぷかぷかと浮かびながら俺と一緒にメモを読むウィンディが指で指し示す。
詳しいな。
「しかしよくわかったな」
「本の中に書いてました」
ベルは一体何の本を与えたんだ。
「とりあえずいくか」
「はい」
俺たちは商業区を目指して歩きだした。
商業区では色んな店があった。
都会だからな。
数も桁違いだ。
お昼もお昼なので人も多い。
「あそこか」
おしゃれなお店が並ぶ中、ひと際怪しげなオーラを放つお店があった。
ここだけハロウィンみたいだ。
非常にわかりやすい。
魔法処レイレイ。
それがこのお店の名前だった。
「ごめんください」
俺はかちゃりと玄関を開けて入る。
店の中はお昼だというのに薄暗い。
フルカーテン状態だ。
「いらっしゃいアル」
「アル!?」
何て安直な語尾なんだ!!!
「お客人、何をそんなに驚いてるんですか?」
「ネはつけない!?」
「は?」
テンプレをご存じない?
おはなしになりませぬな……。
「アイヤ失礼」
「変な言葉使うアルね」
「は?」
おめーじゃい!!!
とはおくびにも出さない俺はえらい。
店員さんは大人のおねーさんだった。
黒い魔女のような格好をしていて雰囲気がすごい。
だがサングラスのようなモノをかけており非常に怪しかった。
「こういうのが欲しいんですけど」
とりあえず買い物リストを店員さんに渡す。
「ああ……またあの娘アルか」
メモを受け取った店員さんはそれを一読すると、慣れた手つきで店の奥へ消えていった。
常習犯かライライラ。
待っている間に店内を物色する。
まるで見当もつかないような商品ばかりでよくわからない。
魔女の館のようなところだった。
動物の骨だとか見たこともない植物の根が陳列されている。
「ほおおおおお……」
ウィンディはそれらを食い入るように見ていた。
悪い趣味に目覚めてしまったようだ。
願わくば全うに育ってほしい。
「お待たせしたアル」
店員さんが袋にまとめて持ってきてくれた。
「おいくらですか?」
「ざっと100万アル」
「えっ」
そん なに。
「冗談アル。あの娘は毎度毎度ツケにしてるアル」
良かった。
しかし、随分信頼されているんだなライライラは。
「お客人はあの娘の知り合いですか?」
「まあそうです」
「ふーん……また面白いモノを拾ったアルね」
じろじろ見られてまるで値踏みされてるようだった。
なんだ……コイツ…‥。
「私はレイレイ。どうかこれからも御贔屓に頼むアルよ」
「俺はケント。たぶんもう来ないよ!」
「エッ」
ケントって言います。また来ますね!
「ごめんなさい間違えました」
「なんだ間違えただけかあ」
つい本音が出てしまったがなんとか乗り越えた。
みんなも言動には気を付けよう!
「……ん? そちらのお客人、珍しい指輪をしていますね」
「……? これですか?」
レイレイさんの好奇心を刺激したのか、ウィンディが嵌めている指輪を注視していた。
「ライライラさんにもらったんです」
「……へえ」
興味深そうにそれを観察するレイレイさん。
そういえば専門家かこの人。
「これって一体何なんです?」
「カラフルストーンですよ。ご存じないアル?」
ああ……あの便利グッズ。
「カラフルストーンは魔力に作用する特殊な鉱石アル。宝石として鑑賞用にもできるアルが、本当は非常に危険なモノなので取り扱いには注意が必要アル」
知ってる。
同じ色くっつけると爆発するんでしょ?
「にしてもすごい純度アル。こんな小さなサイズなのに詰まってる魔力量が桁違いに多いアル」
「へえ、中には魔力が入ってるんだ」
よくわからないがバッテリーのようなものだろうか。
「しかし……なにアルかこの違和感は……」
さらに顔を近づけてくるレイレイさん。
ウィンディも困惑して押され気味になっていく。
「おっとすみません。失礼したアル」
我に返ったかのように姿勢を戻し、礼儀正しい店員さんに戻るレイレイさん。
俺たちはもう用もないので一礼してお店を後にする。
「ありがとうございました~」
後はこれを学院に持っていくだけだ。
しかしすごい匂いだこの袋の中身。
「うぇぇぇぇ……」
ウィンディは鼻が利くのか俺より数段上の苦しみを味わっているようだった。
これが一体何の材料になるんだろう。
俺たちはとりあえず学院を目指すのであった。