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暇人が生まれた日

王の力は人を孤独にするってマ?

 「うおおおおおおおおおおお!」


 俺は雄たけびを上げていた。

絶賛トラックに引かれそうな子犬を助けようと飛び出している最中だ。


「あ、危ない―ッ!」


 ズガァァァンというもういろんなものが砕けるような鈍い音と鋭い痛みとともに俺の意識は消えていった。


 そして数秒。

目の前にはダンディなおじさんがいた。

これがたぶん神様だろうな。


転生(エクソダス)、するかい?」


「応ッ!!!」


 死んでしまった命を懸けて子犬を助ける優しさを持ち合わせた俺を神様が俺を転生させてくれるらしい。

 俺はとりあえずありったけの転生特典(すげー力)をもらって異世界に転生したぜ!!!


「まずは……ヒロインだ!」


 俺はあてもなく異世界の道を歩いていく。


 都会のコンクリートジャングルで慣らした鼻には草原から吹き抜けてくる風がつんと味わい深かった。


 これが……異世界!


「た、たすけてくださーい!」


 しばらくスキップしながら進んでいると地平線からなにやら声が聞こえてきた。


「よし!」


 さっそくヒロインらしき女の子が俺の方へと魔物に襲われながらやって来てくれたぜ!!!


 やった!!!


「俺に任せろー!!!」


「たすかる」


「でやー!」


 俺は女の子を追いかけていた魔物を瞬間的に手刀で三枚おろしにした。


「グワアアアアアむ、無念……」


 一時も気を抜けない激しい戦いだったぜ!


 グゥウレイトォ! やったぜ!


 俺はやったはぁはぁと激しく息を切らす少女に向き合った。


 よく見ると彼女はなんか髪がピンクでツインテだった。ネコっぽいケモミミと尻尾もあるぜ!

服装はどことなく現代ファンタジーでありがちなブレザーの学園制服ぽかった。

年は多分14歳くらいだろ胸もちょっとあるし。


「危ないところだったな」


「は、はい。ありがとうございます!」


 少女は恐縮した様子で俺に頭を下げて感謝してきた。


 よし、チャンスだな。


「どうだ? 最強の俺のヒロインになったらこの先の脅威から守ってやるぜ!」


「ッ!?」


 決め顔で俺がそういうと少女はかなり面食らった顔をしていた。


 数秒の思考の後、彼女は静かにうなずいた。


「私はライライラと言います。ではどうかよろしくお願いします」


「オイオイヨ!?」


「は?」


「ごめん聞き間違えた。俺は剣崎健斗ってんだ! よろしくな!」


 俺たちは互いに握手を交わした。

さっそくヒロインを手に入れた俺は満足してその辺でキャンプ支度をするのであった。







「じゃあお礼と言っては何ですがライライラが料理をいたします」


「たすかる」


 いつの間にか夜になったのでご飯を食べることにした。

周囲からは鈴虫の鳴き声っぽいのがちらほら聞こえる。

都会暮らしの俺にはそのメロディとやさしく吹く涼しげな風が心地よかった。

  

 しかし……食材と言う食材がないんですが。


「何か策があるのか?」


「はい。さっき倒した魔物の肉をこっそり回収しておきましたから」


「えっ」


 あんな変な生き物の肉なんて食えるんだろうか。


「うまいのか?」


「それを決めるのはあなたですよ」


「それはそうでしょうが」


 月明りと焚き火の炎だけが俺たちを照らしていた。

一抹の不安が漂う中、俺は静かに彼女の調理を見守る。


 なんか手慣れてる気がするんだが以前にも経験があるんだろうか。


「ケントさんが三枚おろしにしてくれて手間が省けました」


「へへ、燃えたろ?」


「ええ!カッコいいです!」


「知ってた」


 ライライラが俺を褒めたたえてくれた。

誰かにちゃんと褒められたのは一体何年振りだろう。

俺は照れ臭くなって腕たせ伏せを始めた。


「ふ! ふ! ふ! ……どうだ、できたか?」


「ちょっと待ってください……お砂糖、スパイス、ありったけの夢をいれてかき混ぜます……」


 調味料を入れて味付けしているのであろう。

いつになく真剣な表情だ。

料理には並々ならぬこだわりがあると見た。


 簡易的なつくりのテーブルの上にはすごい数の液体や粉があった。


 その中でもひときわ目立つ毒々しい赤色の液体が気になり、俺は手に取る。


「ライライラ? これなんなん?」


「あ! いけませんケントさん!それは」


 ライライラが焦った様子で液体が入った瓶に手を伸ばす。


「あっ」


 しかし、女の子に触られるなんて初めての俺は焦って瞬間的にビンを割ってしまった。


「ええ……」


 ライライラはドン引きした様子で液体が宙を舞うのを見ている。

そしてそのままクッキング中の鍋に液体が注がれていった。


「まずいです! それは〇ミカルXといって……」


「なっつ」


 鍋の具材が色んな化学反応を起こした。


 そしてなんかすごい数のエフェクトが入り乱れ爆発した。


「げほ、げほ……ライライラ! グレッグ! 生きてるか!」


「なんとかな!」


「誰!?」


 俺は見知らぬグレッグを蹴り飛ばすと煙をかき分け鍋を探した。


 だが……鍋の中には!!!


「ふえ? だ、だれですか?」


「!?」


 鍋の中には小さなロリ娘がいた。

少しはねた前髪と緑色のくせっけがなんともさわやかで愛らしい。だが人間ではないのでエルフ耳だった。

ケモミミがはいってないやんけ!。


たぶん7歳くらいじゃない? 胸ないし。


「やはり……私たちは精霊を生み出してしまったようですね」


 気づけばライライラが俺の横に立っていた。


「精霊?」


「ああ!」


 ライライラが精霊について教えてくれた。


 いわく伝説上の生き物らしい。

人智を越えた魔法と言う力を行使して人間に力を与えてくれる存在だとか。


「料理でまさか幼女を錬成してしまうとは……中々できることじゃないよ」


「フフン」


 得意げに鼻とツインテと耳と尻尾をならすライライラ。

良い女をヒロインにしてしまったようだ。


「ソーリー、お嬢さん。まずは服を着てくれたまえ」


 俺は一糸まとわぬ精霊さんに適当にチートで作り出した露出高めの袖なしミニスカセーラー衣装を差し出した。 


「ありがとうございます」


 幼女だけに警戒心なさすぎ。

すっかり変態な恰好になった幼女。


「ケントさん。チートがなかったらただの犯罪者ですよ」


 ライライラが笑顔で俺をディスった。


「だがチートを持ってる限り俺は主人公なのさ」


「それは……そうなんですが」


「嫌ならこのモンスターだらけのワールドマップを一人で歩くんだな」


「一生どこへでもついてきます!」


 さすがのヒロインもチートの前では何も言えなくなった。

ライなんとかさんは俺の靴を舐め身も心も差し出すという姿勢を誇示していた。

力こそ正義……良い時代になったものだな。


「あの……」


 おっと、幼女をお待たせしちゃったらしい。


 成長過程の体と純粋な眼で俺を見つめてくる。


「私に名前をつけてもらえませんか?」


「名前?」


 そして出てきた言葉は名づけろだった。


 〇ケモンか? 


「ほとんどの精霊は名をもちません。だからこそ名づけというのは神聖なけいやくのいちぶなんです」


「そうなのか?」


 だったらと俺は少し考えてから。


「ウッドマン」


 倒されなさそうだし。


「……は?」


 お気に召さなかったようだ。


 なら……。


「火消しの風ウィンディとでも名付けようか」


「ウィンディ……わたしが風の精霊とわかっていたんですか?」

 

「え」


 知らなかったそんなの……。


「フッ……俺は健斗だ」


 笑ってごまかした。


「でははじめましてマイマスター。このウィンディをどうかおそばにおいてください」


「いいだろう……結ぶぞ! その契約!」


 俺はウィンディの前にしゃがんで握手をする。


「これほどの魔力のもちぬしとけいやくできて感激です」


「さすケン」


「フッ」


 それほどでもあるぜ!!!


「よし! 出会いを祝して宴だ!」


「おー!」


 和気藹々と俺たちは残った魔物肉を片手に乾杯する。


「おめでとう! ライライラ! ウィンディ!」


「おめでとうケントさん!」


「おめでとうございますマスター!」


「ワーオ!エクセレント!」


「最後誰だよ!」


「トムデース!」


 俺は見知らぬトムをチートで作ったロケットに縛り付け月へと飛ばした。

月はいつもそこにあるんだ。


「仲間もゲットしたし展開を求めましょう!」


「ああ」


 肉にがっつきながらライラが元気満々に拳を次上げた。

俺もこの探求の旅に好奇心を躍らせる。


 こうして、俺のハーレム道は順風満帆に始まった。


 一体これから俺たちはどこへ行き、何を想うのだろうか。


 と思ったが、多分なんも考えず旅するだけだろう。

想うことも無いわ。


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