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02 この猫耳少女、異世界の女神でした?

話の流れは変わってませんが、内容を少し変えました。 2020/5/6

「見知らぬ天井。」


 ちょっと状況は違いすぎるが、そんなことをつぶやきたくなるほど、俺は全く違う建物の中にいた。

 天井は少し青みがかった優美なガラス屋根のアーケード。

 アーケード下の広い一本道の通路には、ヨーロッパ建築のような石造りの店舗が、道を挟んでずらりと並んでいる。

 通路の床は綺麗なモザイク画装飾で、まるでヨーロッパ旅行に行ったときに見た、ガレリアのような雰囲気の建物だ。

 

 通路には多くの人通りがあり、ここだけ見ればさっきまでいたショッピングモールと同じように見える。

 しかし、歩いている人たちは、全然違った格好をしている。

 魔女のようなローブをまとったスレンダーなお姉さんや、冒険者のような防具を装備している4人組パーティ、猫耳のかわいい女の子たちと、その後ろを歩いている顔がライオンの男?などなど。

 明らかに普通のショッピングモールにいるような人たちではない。

 

 俺は呆然として前を見直すと、占い師の婆さんがいたはずのフリースペースは本屋になっていた。

 2mはあるだろう、俺の背丈よりも高い本棚がズラッと並び、本が隙間なく並べられている。

 本を手に取ると、見たこともない言語で書かれていて、まったく読めない。

 裏表紙を見てみると、そこには値札のようなシールが貼ってあった。


「ん? このマークって...。」


 値札シールにも、手の甲の数字の前に書いてある『○』の中に逆向きの『C』が描かれたマークが書いてある。

 手の甲と違うのは、マークの後が数字ではなく、見たこともない言語なところだ。

 別の本も手に取ると、その本の裏にも同じようなシールが貼られている。

 

「もしかして、これって値段を表すマークなのかな?

 このシール値札っぽいし。」

 

 俺は、本屋を出ると、隣の雑貨屋の前に陳列されていたハンカチを手にとった。

 ハンカチにも本と同じような値札シールが貼られていた。


「これは、多分間違いないな。

 このマークは『¥』や『$』と同じ、通貨のマークだな。」


 しかし、文字が読めないから値段がわからない。

 雑貨屋の奥に、レジのようなカウンターがあり、そこに店主らしきおばちゃんが座っている。

 俺はハンカチを持ってレジに向かうと、こちらに気づいたのか、おばちゃんが笑顔で声をかけてきた。


「○△□△!」

 

 やばい。

 値段シールを見たときから薄々と感づいていたが、やっぱり言葉が違う。

 俺は、ちょっとテンパったが、ハンカチをカウンターに置いた。

 

「△□△○△□。」

 

 俺は身振り手振りで、言葉がわからないと伝えようと頑張った。

 伝わったようで、おばさんは一枚の紙幣を取り出して、値段を伝えてくれた。

 

 うん、払えば良い紙幣はわかったけど、ここの通貨を持っているわけがない。

 俺は持っていた財布の中身の千円札を見せながら、金を持ってないことを伝えた。


 おばちゃんは察してくれたのか、しょうがないねという感じの苦笑いでハンカチをたたみ直した。


「すいませんでした。」

 

 俺は伝わらない日本語であやまり、雑貨屋を出た。


 言葉が通じないのか、これはヤバイ。

 しかも全く聞いたことのない言語だ。

 

 とりあえず、ここが日本でないことが確定した。

 

「まずは言葉をどうにかしないとな。」


 悩みながら、アーケードの通路を歩きだした。

 アーケードには、いろんな店が並んでいた。

 服屋や雑貨屋、漫画やゲームで見るような武器屋や防具屋がある。

 武器屋の中では、冒険者らしき金髪の男が、新調した剣を嬉しそうに振っていた。 


 通路からいろんな店内を見ながら歩いていると、後ろから突然声をかけられた。

 

「Excuse me , where are you from? (ちょっとすいません、あなたはどこからきたの?)」


 びっくりして振り向くと、そこには猫耳を付けた青目で金髪ショートボブの可愛いい女の子がいた。

 かっ、かわいい!

 今までの人生可もなく、不可もなく過ごしてきたが、女運だけはあまりパッとしてなかった。

 そのため、あまり女の子に免疫のない俺には、不意打ちで現れた猫耳美少女は、刺激が強すぎる。

 服装は大きめの胸が強調された白いブラウスで、しっぽが後ろから飛び出た黒のショートパンツを履いていた。

 パンツがスカートだったら、いわゆる「童貞を殺す服」のような格好だ。

 猫耳美少女と童貞を殺す服のコンボで、俺はノックアウト寸前だった。

  

 えっ? ど、ど、ど、ど、童貞ちゃうわ!

 

 あれ? 今英語で話しかけてこなかったか?

 猫耳美少女は聞き取れなかったと思ったのか、今度は少しゆっくりめに話してくれた。

 

「where、are、you、from?」


 やっぱり英語だ。

 アメリカからここに来た人かな?

 とりあえず、答えなきゃ。


「アイアム、フローム、ジャパン。」


 片言の英語で返すと、猫耳少女は喜んだ顔をして、今度は日本語で話しかけてきた。

 

「日本から来たんだ! じゃあ日本語のほうが通じるよね?」

「日本語もいけるんかい!」


 今度は突然の日本語に、思わずツッコんでしまった。

 猫耳少女はツッコミを気にせず、話し始めた。


「キミ、ここに来たばっかりでしょ。」

「えっ、なんでわかったの?」

 

 俺は思わず即答してしまった。

 ゲーム好きな俺は、答えた後に『初心者狩り』というワードが頭をよぎり、少し後悔する。

 

 その反応を待ってましたかのように、猫耳少女は意地悪な笑みを浮かべた。

 俺はその表情を見て、やっぱりかと思い少し身構えたが、悪魔かわいい笑顔に少し興奮した。

 俺の身構えたポーズと鼻の下を伸ばした表情に差がありすぎて、猫耳はちょっと引きながら言った。 


「な、なんででだと思う?」


 なんでだろう。

 こっちに転移して来たところからずっと見られていたのか?

 それとも都会に初めて行った田舎者みたいに、首の動きを止めずに歩いている姿を見て見破られたか?

 とりあえず、無難な答えを返してみる。

 

「もしかして、ずっと俺のこと見てた?」

「ブッブー! 残念! 私は今さっきすれ違ったときに、あなたを初めて見たよ。」


 そうすると、やっぱり田舎者臭さが出てたのか? 

 まさか童貞がバレたのか?

 いや童貞ちゃうし!

 そんなことを考えているとしていると、猫耳少女が思考を遮ってきた。

 

「残念、時間切れ。 ちょっとあっちの喫茶店でゆっくりしない?」

「えっ、2人で、喫茶店?」

 

 突然のお誘いに、動揺した。

 こんな可愛い子からお茶に誘われるなんて...。

 オドオドしている俺を見て、少し笑みを浮かべた猫耳少女は、女神のように優しく言った。


「あなたのお願い、叶えてあげようか?」


 俺は、猫耳女神の姿に見とれながら、静かに頷いた。

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