01 この主人公、異世界に飛ばされました。
のんびり書いていきます。
よろしくお願いいたします。
片田舎にショッピングモールが新規オープンした。
他に遊びに行くところがない田舎の若者が集まり、常に人がいる人気店になった。
そんな田舎者の高校生である俺、「斎藤 和歩」は、暇さえあればこのショッピングモールに足を運んでいる。
今日もいつものように店内をぶらついていると、フリースペースに、いかにも怪しい紺色のフードをかぶった婆さんが椅子に座っている。
婆さんの横の机には、「占います」と書かれた立て札が置いてある。
「占いか...。」
見慣れた店内に少し飽きていた俺は、軽い気持ちで占いの婆さんに声をかけた。
「占いってもらってもいいですか?」
「お...。 そうかい、そうかい。」
婆さんはフードを少し上げて、俺の目を見た。
ニヤリと笑った顔に、少し背筋がゾッとした。
「あんたさんなら、サービスで一回占ってやろう。 どうせ暇つぶしじゃろう。」
「ありがとうございます。 どうせ暇つぶしです。」
俺は、ちょっと笑いながら婆さんの前の椅子に座った。
フリースペースで占いをやっている人は日によって違って、いろんな占い師を見てきたが、この婆さんは初めて見た。
「お婆さんは、ここでやるのは初めてですか?」
「そうだね、このショッピングモールでは今日が初めてだね。 で、何を占ってほしいんだい?」
婆さんはそう言うと、机の下から古そうな木札を1枚取り出した。
「うーん、ノリで声をかけたからちゃんと決めてなかったですね。」
「そうかい。 どれ、とりあえずあんたさんの運命力でも占ってやるかね。」
聞き慣れない言葉に俺は首をかしげる。
「運命力? なんですそれ?」
「まあ、人がそれぞれ持っている運の強さだね。 運命力が高ければ物事がうまくいきやすいし、低ければその反対さ。」
「へぇ、なるほど。」
「ところで、あんたさんは右利きかい?」
「そうです。」
「じゃあ、左手を出しておくれ。」
「はい。」
おれは左手を机の上に出した。
婆さんは手相を見るように、手のひらをじっと見つめる。
「ほう、あんたさんはなかなかの運命力をお持ちのようだね。」
その言葉を聞いて、俺は少しテンションが上った。
「マジっすか!? それって運がいいってことですよね。」
「まあ、普通よりは多いね。 ちょっとそのまま手を出しておいて。」
婆さんはさっきの木札を、俺の左手の甲に軽く押し当てた。
すると木札がぼんやりと光り、手の甲が少し熱くなった。
「ちょっ! なにこれ!?」
俺はとっさに手を引こうとするが、婆さんに手首を握られた力が強く、動かせなかった。
「大丈夫だから、そのままにしてておくれ。」
婆さんはそう言うと、甲の上の木札を手で覆い、更に押し付けてきた。
「あっっっっつ!!」
火がついたような熱さを感じた瞬間、婆さんの力が緩まり、左手を振りほどいた。
「なにするんだよ!」
「大丈夫さ、手の甲を見てご覧。」
左手の甲を見ると、「○」の中にローマ字の「C」を逆にしたマークと、その右側に「30295」の数字が、赤色の光で描かれていた。
「何だこれ!? おい、婆さん! 何をしたんだよ!」
手で数字をこするが、消える様子がない。
俺は婆さんの方に目を向けると、婆さんが急に光り始め、目が開けられないほど強くなった。
「その数字は運命力だよ。 運命力は大事にしなね。」
婆さんの言葉の終わりとともに光が収まると、目の前にいた婆さんと机は消えていた。
「何だったんだ...?」
左手の甲を見ると、運命力と言われた数字はまだ残っていた。
「運命力ってなんだ?」
俺はまだ少しチカチカしている目で、周囲を見渡した。
「えっ...?」
俺の周りには、さっきまでいたショッピングモールの店内とは、まるで違った様子が広がっていた。
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