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閑話
カフェを出て、星華と別れた潤と春希は今日のことを振り返っていた。
「萌ちゃん、可愛いよな。よかったな、隣の席になれて」
「ああ、さんきゅー」
潤は恥ずかしそうにそう言った。
萌のことは入学前から知っていた。
入学前に行われた学費免除の説明会で初めて出会った。
同じ学費免除者ということで、頑張り屋なんだろうなという良い印象を持っていたがそれだけだった。
潤が萌のことを意識するようになったのは、入学式から一週間がたったある日の放課後のこと。
図書室に足を踏み入れた潤は、窓際で本を読む萌に目を惹かれた。
寂しそうに本を読む姿が印象的だった。
目が離せなかった。声をかけることができなかった。
それから教室内でも萌の姿を目で追うようになった。
昼休みは読書をするか勉強をしている萌。
放課後はすぐに教室を出てしまい、なかなか話しかけずらい。
潤のそんないつもと違う様子に春希は気が付かないはずはなく、それ以来潤の恋を応援してくれている。
「勉強合宿は一緒の班だし、これからゆっくり仲良くなろうな」
春樹の声に、そうだなと頷いた。
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